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リアクション
◆
「『閃風の超龍殺し』として召喚されたからには、きっちり役目を果たさせてもらいますよ。
切り裂け……アスカロン!」」
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が2本のドラゴンスレイヤーを、片翼の付け根へ振り降ろす。
まずは機動力を削ぐのが定石。飛びなれたドラゴンとの空中戦は不利であるからだ。
「浅いですね……本当に固い」
翼の付け根から血噴き出すも、切り落とすことはできなかった。すぐに追撃を。と思ったウィングだったが、横を通り抜けた風に動きを止めた。一瞬驚いた後、ふっと笑い、追撃は彼女へと任せて後ろへ下がる。
敵と戦う際に必要なのは個々の強さもそうだが、何よりも連携だ。
「救いを求める声に応えて、超勇者ミューレリア参上だぜ! なんてな」
風、ことミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が、剣でドラゴンの尾による攻撃を受けとめながら、ウィングが傷つけた翼の付け根へと銃の狙いを定める。
(1回、こういうのやってみたかったんだ。超強いドラゴンを倒して、超勇者の力を証明してやるぜ!)
ミューレリアはそんな意気ごみで参加していた。
そんな彼女の攻撃を避けようとしたドラゴンの動きを、火村 加夜(ひむら・かや)の放つ歴戦の魔術が阻害する。
「ごめんなさい。でも、少しの間、大人しくしてくださいね」
あくまでも地図を手に入れるために戦っている彼女は、なるべく急所を避けて攻撃していた。
「お前に相応しい魔弾は決まった! すべてを凍てつかせるコキュートス! 闇を貫く閃光タルタロス!」
広範囲の魔法攻撃で身動きが取れないドラゴンへ、ミューレリアが銃を撃った。銃弾は見事翼の付け根へと辺り、翼が折れ曲がって地面に向かって垂れ下がる。これでもう空は飛べないだろう。翼での攻撃もできない。
痛みに震えるドラゴンへ、ウィングが迫りもう片方の翼を切る。翼から血が勢いよく噴き出るが、ドラゴンは無理やりその翼を動かしてウィングをなぎ払った。
「危ない!」
雪住 六花(ゆきすみ・ろっか)が、飛ばされていくウィングの身体を風術で受け止める。
「ぐうっ」
「大丈夫ですか? 今回復を」
「すみません……まさかまだ動かせたとは」
加夜が駆け寄り歴戦の回復術でウィングを癒す。ドラゴンを見上げたウィングの視界の中で、片翼が地面へと落下していった。無理に動かしたからだろう。
ずしんと遺跡が揺れる。
「これが、“超強いドラゴン”なのね」
ごくりと六花が唾を飲み込んだ。それから加夜とウィングをドラゴンから隠すように立ちはだかった。
「あなたは回復に専念を。私が守るわ」
「お願いします」
ドラゴンの目が、六花たちへと向けられる。一番弱いところを狙うのは当然だろう。だが、
「そこのドラゴンさん。銀パトにさからうと痛い目みるわよーそれ!」
場違いなほどに明るく、同時に真剣な声とともに月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)が渾身の一撃をドラゴンへと叩きこんだことで。ドラゴンの意識が六花たちからそれた。
悲鳴を上げつつ、攻撃直後の無防備なあゆみへとドラゴンは首をのばす。迫る牙と彼女の間に割って入ったのは、マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)だ。
「むぅ。させん!」
「があああっ」
鋼鉄の身体が牙を受け止めている間に、あゆみは体勢を整える。それを見たマグナはドラゴンの牙をはじき、後ろへと飛び退る。
「怪我はないだろうか?」
「ありがと。助かったわ!」
無事を聞いてくるマグナに、あゆみはウィンクで返す。と、マグナは首をかしげ。
「片目……何かされたのだろうか。む。炎のブレスによる熱か?」
「……愛の超戦士であるあゆみのウィンクが効かないなんて……あゆみの瞳は一万ボルトなのに」
がっくりとするあゆみに、マグナは不思議そうだ。
「お2人とも、ご無事ですか?」
そこへやってきたのはウィングだ。加夜の治療で戦線復帰したようで、しっかりした足取りをしている。
「ほんと、かってぇな。あいつ」
ミューレリアが悪態をつきながら地面に降り立つ。加夜は、ぼろぼろなドラゴンを見て、心の中で「ごめんなさい」と謝った。
地図を手に入れられたらそれでいいのだが、ドラゴンはぼろぼろになりながらも扉の前から退こうとしない。よほど大事なのか。
「ふむ。大分弱っているようだな」
「もうひと押し、ですね」
マグナがドラゴンの様子を見て呟くと、ウィングも同意する。
「でも油断は禁物だぜ。鱗の固さは相変わらずだからな」
「じゃあ、みんなで集中砲火ね」
先ほど剣を振った時にしびれた手を見ながらミューレリアがそう言い、あゆみがやはり明るい口調で提案した。
みんなの力を合わせれば――。
「はい。そうですね」
「ええ、私も援護するわ」
加夜と六花が決意を込めてうなづくと、他のメンバーも力強く首を縦に振った。
そんな会話を、盗み聞いている影があった。
「くくく。次でとどめか」
闇勢力の1人、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)だ。“超覇王の城”内部の様子が描かれた“超地図”を手に入れたい、と考えていた彼だが「苦労するのは嫌だ」という単純明快な理由により、横取りを考えていた。
(ドラゴンと戦った後なら、どうせ弱ってるだろ? と思うのは初心者。
こういう時は、ドラゴンにトドメをさした人間が手に入れるのが王道。
つまり、他のヤツに戦わせておいてトドメだけ掻っ攫うのが正解……のハズだ! 超天才の俺様が言うんだから間違いない!)
と、いうわけで、光の一行がドラゴンへと一斉に飛びかかっていく瞬間に、ゲドーは姿を現した。
「とどめは俺がもらう!」
「くっ闇のものか! させん」
シャドーに気付いたマグナが声を上げるが、あらかじめ魔力を高めていたシャドーを止めることは、誰にもできなかった。
「もらったーーー!」
目を開けていられないほどの閃光。続いてどしんと何か重たいものが地面に倒れ込む音。そして……ゴゴゴと今までとは違う音がした。
光が弱まった時、その場にいた全員の目が、ドラゴンの背後にあった扉があいているのをとらえた。
「地図を手にするのは俺だ」
シャドーが扉の向こうへと姿を消す。
「待ちなさい! 地図は渡さないわよ!」
フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)が大声を上げながらシャドーを追いかけていく。これからデート、というときに召喚されてしまったフレデリカは、大変機嫌が悪かった。
(これからデートなのに冗談じゃないわよ! さっさと終わらせて帰らなくっちゃ! このままじゃ遅れちゃうわ)
恋する乙女の怒りは凄まじい。
そんなフレデリカの陰に隠れ、ひっそりと扉をくぐったものがいた。桐生 円(きりゅう・まどか)だ。
(“超地図”を横取り、いいや。複製すればいいかな)
光勢力のためにどうすればよいかを考えた円はそう結論し、目立たぬように行動していた。
複製するためのペンと紙、それに描画のフラワシを準備している。これですぐに複製し、本物を焼けば闇勢力の手には渡らない。
他の面々も、追いかけるように扉の向こうへと消えていった。
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