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序章 流布 【昼休みのあと】
「のぞき部」の立ち上げ宣言放送が流れる、そのちょっと前――
プールの女子更衣室からは、昼休み利用者が完全に退室して誰もいなくなった。
そこに、一人の勇者が入ってきた。
シャンバラ教導団からやってきた狭間 癒月(はざま・ゆづき)は、ロッカーを見て回る。
「どれにしようかな。エロの神様の言うとおり……」
ロッカーの扉には、目線の位置に10センチ×1センチ程の横長の穴が3本入っている。潜入して、その穴からのぞくつもりだ。
狭間は中央のロッカーに入り、体を押し込んだ。
夢想家の狭間にとって、ロッカーは舞台。タオルが散在しているだけのベンチには、観客が見える。
「何故のぞくかって? ……男にそのわけを訊くのはナンセンス。ただそこに、女性があるからさ」
出入口の扉が開き、女子が入ってきたようだ。
狭間は静かにロッカーの扉を閉めた。
入ってきたのは、久世 沙幸(くぜ・さゆき)。美人だし、胸が大きい。
沙幸は気がついたのか、気がついていないのか、狭間のロッカーに迫る。
ドキンドキン……狭間の緊張が高まる。
沙幸は、狭間の一つ隣のロッカーを選んだ。
ホッと胸をなで下ろす狭間だが……
沙幸はロッカーの扉を開けたまま着替え始める。
のぞき穴は細く、扉が2枚も重なれば……狭間の視界は完全に塞がれてしまった。ち、ちくしょう……!
エロの神様は哀れな子羊をお見捨てになった。
『ピンポンパンポーン♪』
ここで、「のぞき部」立ち上げ宣言放送が流れた。
沙幸は動揺した。
「男子更衣室ということは、ここをのぞくってこと? あれ? もしかして、もうのぞいてる? のぞき穴が開いてるのかしら?」
下着姿のまま、男子更衣室との間の壁をチェックする。
ロッカーはほとんど男子更衣室とは反対側の壁に設置されていて、男子更衣室側の壁は無防備だ。壁はパラミタ大陸限定流通のパラクリートという資材でできていて、表面には細かい凹凸がある。一つ一つの凹んだ部分は影となっていて、パッと見では壁一面が穴だらけ。そんな壁である。
「あの……そんな格好で何やってるの?」
いつの間にか小谷 愛美(こたに・まなみ)が入ってきていた。
「え?」
沙幸はゆっくり自分の姿を見る。
無我夢中の沙幸は、大股開いてのぞき穴を探していた。しかも下着姿。
「キャー!」
真っ赤になって服を着る。
愛美は、ゆっくり後退りして去っていった。
その頃――
アラミル・ゲーテ・フラッグ(あらみる・げーてふらっぐ)は、シャンバラ教導団の校舎でパートナーの狭間を探していた。
「どこにもユズがいない。まさか、のぞき部に……?」
のぞき部の噂は、あっという間に大陸中を駆け巡っていたのだ。
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