リアクション
作詞作曲:高萩陽子 ケータイの液晶ごし あなたのメッセージ すぐ近くなのに 手がとどかないね メール打つのも もどかしいな お気に入りの着メロも 今は鳴らないで 頭の中に あなたの声が 再生中よ 静かにしてて 透き通る 画面の向こう キラキラ 言葉が泳いでる 私だけの アクアリウム 零お得意のシャウトもなく、ベースの熱演に反して会場はさほど盛り上がらなかった。 ギターの少女は申し訳なさそうにしながら舞台袖に帰って行った。零とルナは肩をすくめ、同じく退場する。 TRACK 09 さて午前の部も終わりが近づいてきた。 ステージ上に立ったのはとてつもない巨漢であった。人間と言うよりもトロールである。ある意味、パラ実生の鑑のようなやつだ。 「こういうのは一番上手いやつが最後を飾るもんだ。オレが吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)、そしてこいつが下僕のアイン・ペンブローク(あいん・ぺんぶろーく)よ。 てめえらおとなしく俺の歌を聞きな! おい、アイン!」 合図を受けて、犬の姿をしたゆる族が年代物のカセットテープの再生スイッチをガチャっと押し込む。 ザーッというノイズのあと、マイクを指先でトントンと叩いたり、 「あ゛ーーーッ! あ゛ーーーーーっッ!!」 という大声が聞こえたりしたあと、すさまじく下手糞なたてぶえの音がピー、ピヒョーと流れ出した。このあたりで会場全体が動揺している。 まずい。 こいつは間違いなくヘタだ。 しかし会場の空気など一切読まず、無情にも竜司リサイタルが開催されたのである…… 『オレは強いぜ吉永竜司』 作詞作曲:吉永竜司 オレは 強いぜ 吉永 竜司 どんなに 強いやつも この竜司には かなわない オレの名前を聞いただけで 気の弱いやつは気絶しまくり もう二度と立ち上がれない 後に渡部真奈美はこう述懐した。 「あー……あのフェスさ、『Music can kill the Dragon!』が合い言葉だったろ……あのときは、音楽はホントにドラゴンを殺せるなーって思ったよ……」 |
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