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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 11

「ヨーコのやつ遅いな。何やってんだよ」
 渡部真奈美(わたなべ まなみ)のいらついた声。
「さっきステージに出てたわよ」
 小倉珠代(おぐら たまよ)は特に意に介さぬ様子。
「そうかー、てっきりお腹の具合でも悪くなったのかもって心配してたんだよ……って、なにやってんだよヨーコ!? 練習もしないで!!」
「まぁまぁ」
 珠代が真奈美をなだめていると、会場警備班の菅野 葉月(すがの・はづき)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が慌てた様子でやってきた。
「ああすみません、実は先ほど問題がありまして……」


 葉月の説明によるとこうだ。
 音楽性の違いで悩んでいたヨーコのところには、『RIVe』『@LAST』『神世魁』と3組のバンドから勧誘が来ていた。かといって今のバンドを急に辞めるわけにもいかない。
 そこでメイクや衣装を変えて、人数の足りていない永夷 零のバンド『@LAST』に参加していたのだ。
 『@LAST』の演奏が終わったあと、葉月と『@LAST』のあいだで軽い衝突が起こった。

「自分たちの演奏が信用できないからそういうことをするのか?」
「そういうことじゃねえよ。ヨーコには『P−KO』じゃやれないことをやらせてやりたかっただけだ」
「……まあいいでしょう。しかしイベントの進行に支障をきたすような行為は慎んでください」
 そういって立ち去ろうとすると、真っ青になったヨーコがすっとんできた。
「ない! ギターない!!」


「……そういうわけで、現在ヨーコさんのギターと、ギターを探してどこかにいってしまったヨーコさんの捜索中です。申し訳ない」
 話を聞いて真奈美は顔面蒼白、がくがく震えながら珠代にすがりつく。

「どうすんだよぉーーー!!
 帰ろう! もう無理!! 絶対ムリ!!!」

 急に弱気になる真奈美だが、珠代はむしろ楽しげにこう言うのだった。

「マナちゃん、これはお祭りなのよ。お祭り。
 シャンバラじゅうからみんなやってくるお祭りなの。
 いまさら自分だけ投げだそうなんて、ちょっと都合がよすぎるとは思わない?
 マナちゃんは教導団も投げ出してここに来たんでしょ。ダメよ、そんな中途半端。
 いままでのつまらない人生、ここからは楽しまないと!」