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リアクション
第九章 一輪の百合
静香とラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が店を開いたと聞いて、百合園からメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)もやってきた。
「“きゃばくら”というものらしいですぅ。きっとクラブ活動の一環ですね〜」
リリーハウスはキャバクラではありません!
「ふぇ〜、何かキンキラキンだね〜。こんなお店、初めてですぅ」
店内の様子に驚くメイベル。とりあえず校長を指名して待つ。セシリアはあたりをきょろきょろと見回して、
「凄いお店だね。僕にはこんなの、初めてだよ……」
一方で、貴族の英霊であるアヴェーヌは慣れたもの。
「あらあら、サロンみたいなものと思っていたら、こういうお店なんですの」
3人の相手は静香ではなく、そのパートナーであるラズィーヤだった。
「ご免なさいね、静香さんは今忙しくて、代わりにわたくしがお相手ということではどうかしら?」
ここで断るような失礼はできない。メイベルはヒラニプラ茶とケーキ、セシリアはタシガンコーヒーとケーキ、アヴェーヌとラズィーヤはヴァイシャリーの果実ジュースを注文して、歓談を始めた。
「メイベルさんはヴァイシャリーのジェイダス杯では、たしか5位でしたわね」
「ふぇ、ご覧になっていたのですかぁ?」
「せっかくヴァイシャリーで開催されたのですもの、うちのコたちの活躍を見逃すようなコトできませんわ♪」
ラズィーヤ、ジュースを追加。アヴェーヌに比べて早いペースで飲んでいる。ラズィーヤの機嫌がよさそうなので、歌の好きなメイベルはカラオケに誘ってみることにした。
「私は歌が好きなんですぅ。それで、よかったら一緒にカラオケを歌いませんかぁ」
「いいわね☆ 準備をしておいてよかったわ♪」
それを聞いてセシリアも歌いたくなったらしい。
「じゃあ僕も歌うよ!」
「行ってらっしゃい。わたくしはここで皆さんの歌を拝聴いたしますわ」
アヴェーヌは鷹揚に見送り。
メイベルが曲に迷っていると、ラズィーヤが勝手に選曲してしまった。それは以前メイベルとセシリアが観客の前で披露したこともある、あの曲であった。
そう、『小さな翼』である……
『小さな翼』をご存じない方は、『蒼空のフロンティア』のプロモーションムービーをご覧いただきたい。そこで流れている曲である。
(※ディレクターから「『着うたフル』もあるから宣伝しておいて」と言われました)
そのほか百合園で流行っていた歌や、ヴァイシャリーの民謡などを歌ったところでお開きとなった。
帰り道、メイベルは疑問を口にした。
「どうしてあのお店をヴァイシャリーに作らなかったのでしょうねぇ」
「花畑に花を一本増やすより、荒れ野に花一輪のほうが映えるからではありませんか」
アヴェーヌはそう答えた。
ラズィーヤの売り上げ:1900G
第十章 男と女
ドージェとの出会いが人生の転換点となった駿河 北斗(するが・ほくと)にとって、『リリーハウスにマレーナが来るらしい』という噂は見逃せなかった。パートナーのクリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)は北斗に貸衣装を着せたり、ぼさぼさの髪型を整えたりして、上品な店に顔を出しても恥ずかしくないところまで持って行った。自身も赤いドレスを着て同伴することに。
「なあなあマレーナ。って呼んでも別に良いよな。
もっと俺にドージェの話聞かせてくれよ。焦んなくて良いからさ」
注文もせずマレーナに頼み込む北斗。マレーナは北斗の勢いに困惑している。なんとなく癪に障るクリムリッテは適当に日本酒(と北斗用にヒラニプラ茶)を注文。
酔いが回るに従ってマレーナの口数は減り、小さなため息を漏らすようになった。
「……ドージェ様は、日本の漫画を読んだりもするのですわ……」
「そうなのか! やっぱりヤンキー漫画とか?」
「……たしか、野球漫画を読んでいらっしゃったわ……」
「そうか! だからパラ実にも野球部があったんだな!」
初めて聞く話に興奮する北斗。ふぅ、とマレーナの吐息。
つまらなくなったクリムリッテは、マレーナの胸元を凝視する。
「て言うか何をどうしたらこんなになるのかしら……不公平だわ」
そういうと手を伸ばしてマレーナの胸をつかむ。
「そ、そんなに胸を触らないでください―――――っ」
マレーナの悲鳴を聞いてボーイのガーデァ・チョコチップ(がーでぁ・ちょこちっぷ)が駆けつけてきた。
「お客様、当店ではドリームメイデンへの迷惑行為は禁止させていただいておりますっ! 場合によってはご退店願いますっ!」」
「なぜ俺を見る! 俺はなにもしてない!」
「ど、どうしましょう……私が大きな声を上げたばかりに、大変なことになってしまいましたわ……」
とマレーナがうろたえていると、店の入り口付近で騒ぎが起こった。
ドージェ・カイラスが入店したのである。
黒服としてもヘタに刺激はできず、ただ遠巻きにして歯切れ悪く「いらっしゃいませ」と言うのが精一杯。
ドージェはまっすぐにマレーナのところに来ると、自らの“花嫁”を片手で抱きかかえて肩の上に乗せた。マレーナの口から短い悲鳴が漏れる。
そのまま立ち去ろうとするドージェに向かって、興奮した北斗が叫んだ。
「ドージェは俺の目標なんだ。憧れてるし、羨んでる。でもいつか追いついて、追い抜いてやる!」
「……くだらん」
ドージェはそれだけ言って、店外に出て行った。
北斗はドージェの背中しか見ていなかったが、クリムリッテはマレーナの表情を見逃さなかった。それは不安でも安堵でもなく、まるで母が我が子をいたわるかのようだった。男女の関係は他人には計りかねる、そう思うクリムリッテであった。
マレーナの売り上げ:+1500G(4700G)
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