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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

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「よし、必要な情報は集まった!」
 携帯電話を満足そうな表情で閉じるウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)。その背後にミーツェ・ヴァイトリング(みーつぇ・う゛ぁいとりんぐ)が弁当の重箱を持ってついてきている。
「お、ターゲット発見〜」
 にやり、と笑ったウィルネスト・アーカイヴスは、ミーツェ・ヴァイトリングを振り返った。
「証拠探しよろしくな」
「はいですー」
 眠そうな瞳をこすりながら、ミーツェ・ヴァイトリングがふらりと職員室へ向かって行った。ウィルネスト・アーカイヴスはその姿を見送り、髪の長いタイトスカートの後ろ姿に呼びかけた。
「セーンセ、ランチタイム一緒にどーですか?」
「はいー?」
 振り返ったのは羽田美保。美しいその姿ににっこり微笑みかけた。
「お昼まだなら一緒に食べましょーよ」
「いいえ、私は調理実習で食べたからいらないよー」
 間延びした声で答える羽田美保に、さらに近付く。
「それならドリンクだけでも」
「……うーんそうねーどうしようかなー」
「ほらー、生徒との交流も大事だしね♪」
 ウィルネスト・アーカイヴスがさらに言葉を重ねると、羽田美保はゆるゆると頷いた。
「……じゃあ、少しだけー」
「よし、決まり!」
 そう言って、買っておいた缶ジュースのプルタブを引いた。羽田 美保も持っていた水筒の茶を飲んでいる。
「最近危ないよねー、この辺」
「……そう、ですねー」
 追及開始。ウィルネスト・アーカイヴスの緑色の瞳がきらりと光った。

「ここ、ですー」
 ミーツェ・ヴァイトリングがガラガラと職員室のドアを開けると、ガムテープで全身を巻かれた日付由耶と腰を抜かした緒喫円がいた。
「あ〜、先生ネクタイが曲がってますよ〜」
「そ、そうか〜?」
 床に座り込んだ緒喫円に、リリィ・エルモアが語りかけた。
「これは酷い……保健室で治療しましょう」
「……先にガムテープを取ってもらえますか」
 半泣きの日付由耶に起木保が近付いた。
 新人教師二人が二人に気をとられている間に、黒脛巾にゃん丸は【トレジャーセンス】を使用。
 職員室奥、ロッカールームに何かがあると感じ取り、【隠れ身】を使用してロッカールームへ。手招きで緋桜ケイとソア・ウェンボリスと鬼一法眼が続く。
 黒脛巾にゃん丸は【ピッキング】を使用して新人教師三人のロッカーを開けた。
「これを調べればよいのだな」
「あぁ。手がかりが見つかるといいんだけどな」
「探しますよー!」
 教材や靴などを掻きわけ、鬼一法眼と緋桜ケイ、ソア・ウェンボリスがロッカーの中の手がかりを探す。
「……あれ?」
 黒脛巾にゃん丸が羽田美保のロッカーで何かを見つけた……と。
「なにかありましたかー?」
 ゆったりとミーツェ・ヴァイトリングが近付いてきた。
「羽田美保のロッカーから、これが出てきた」
 黒脛巾にゃん丸が差し出した小さな小瓶を、全員で覗いた。
「これが証拠になるのだろうか」
「たぶんな」
「これを持って羽田先生を追求しないといけませんね」
【続・イルミンスール諜報部】の面々が騒ぐ。と、ゆるゆるとミーツェ・ヴァイトリングの手が挙がった。
「羽田先生ならウィルが問い詰めてますー。一緒にくるですー?」
「行こうか」
 黒脛巾にゃん丸の問いかけに、全員で頷く。
 ゆるゆると、しかしやや早足で進むミーツェ・ヴァイトリングに、六人が続く。話声が聞こえてきた。
「俺も昨日ちょっと危ない目に遭っちまったしー」
 ウィルネスト・アーカイヴスは引き続き羽田美保と話している。
「そ、そうなのー?」
 彼女がやや言葉に詰まっていることに気付かないふりをして続けた。
「そうそう、そんとき木が生えてる辺り? で面白いもんめっけちゃったんだ〜」
「面白いって……どんなー?」
「なんだっけかなー」
 首を傾げて羽田美保の様子を見る。彼女の表情が硬くなってきていた。にやりと微笑んで、彼女の耳元に口を寄せた。
「んで、センセ、アレ隠してあったつもりなの?」
「!? な、なんのことかなー?」
「にっひっひ……お見通し……って言ったらどーするぅ?」
「そ、そんなのウソでしょー?」
 明らかに慌てている教師に、にこやかに問いかける。
「センセ、肌キレーだよね」
「え……?」
「樹液と魔物、美容の関係ってなーんだ?」
 冷たい笑みを向ける。羽田美保の顔から血の気が失せた。
「! そ、そんな……わからないよー。それに伐採ロボットのことなんて私は知らないよー」
「! それだ! 俺はまだ一度も伐採ロボのこと話してないぜ?」
「うっ……」
「やっと糸口を見つけたぜ」
 ふう、と息をつくウィルネスト・アーカイヴス。羽田美保はぐっと拳に力を込めた。
「で、でもそれは私が事件に関係してるっていう証拠にはならないよー!」
「証拠はここにありますっ!」
 ソア・ウェンボリスが黒脛巾にゃん丸の手にある小瓶……樹液の入った瓶を示した。緋桜ケイも歩いてくる。
「これは、羽田先生のロッカーの中に入っていました!」
「羽田美保先生は今流行の樹液による美肌効果を利用するために学校周辺の木を切ったんだ!」
「起木保先生のロボを使ってね〜」
「その樹液が魔物を引き寄せるとも知らずに、です」
 緋桜ケイ、リリィ・エルモア、ソア・ウェンボリスが集めた情報を次々に口にする。
「美保……」
 起木保が複雑な表情で彼女を見遣った。と、足音が近付いてきた。
「羽田美保、覚悟っ!」
「言い逃れは許しませんよ」
「白状するんだ!」
 前原拓海、風森巽、樹月刀真が走ってきた。ティア・ユースティも遅れてやってくる。羽田美保は身を震わせた。
「ご、ごめんなさいー……」
 涙交じりの声が廊下に響き渡る。彼女は崩れおちるように床に伏した。
「全部私のせいですー……」