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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

リアクション

「巨大な敵発見!」
 ゴザルザ・ゲッコーはラミアに向かいバイクで距離を詰める……。
「近づくな、ゴザルザ!」
「へ?」
 葉月ショウの言葉もむなしく、ゴザルザ・ゲッコーは桃色の粉を吸い込んだ。緑の瞳がとろんとなり、頬が紅潮する……。
「……ないと・リーダーはげっこーでイキマス」
 抑揚のない声を出しバイクを操るゴザルザ・ゲッコー。Uターンしてラミアに背を向け、バイクを乱暴に走らせる。
「うわっ!」
「危ねぇ!」
 迫りくるバイクをギリギリで避ける葉月ショウとレイディス・アルフェイン。
「少々荒っぽいが、仕方ないな」
 葉月ショウは【氷術】を唱え、バイクのタイヤを凍らせようと試みる……が。
「くそっ、避けられたか……」
 猛進するバイクへと狙いを定めるのは難しい、と顔をしかめているとレイディス・アルフェインが進み出た。
「挑発しておびき寄せるぜ。詠唱して待ってろ!」
 そう言って顔を向ける相手はゴザルザ・ゲッコーではなくラミアだった。
「ラミアを倒すぜっ!」
 わざと大声で言う。ラミアは見向きもしない……が。
「ラミアを守るでゴザルッ!」
 魅了されたゴザルザ・ゲッコーがレイディス・アルフェインへ一直線に向かってくる。バイクを転がって避ける。
 その背後には、葉月ショウが待ち構えていた。
「急ブレーキをかけてやるぜ」
 狙い通り【氷術】をバイクの前輪にかける。ゴザルザ・ゲッコーが宙に舞う。
「!!」
「うぁ!」
 魔法が炸裂すると同時に避けたが、落ちてきたゴザルザ・ゲッコーが葉月ショウの足の上へ。激痛が走る。
「目を覚ませっ!」
 レイディス・アルフェインが落ちてきたゴザルザ・ゲッコーの頭をバスタードソードの柄で殴った。
「ッ……ぐぁ」
 続いて、倒れ込んだ桃色頭を退け、葉月ショウに【ヒール】をかけた。
「立てるか? ここは俺に任せて一旦校舎に退いとけよ」
「ああ……悪い」
 葉月ショウは頷いて、校舎へゆっくり足を運んだ。
 一方、魅了されたもう一人、如月玲奈は【氷術】の乱射を続けていた……。見かねて、朱宮満夜が呪文を唱えた。
「本当は傷つけたくないのですが……ごめんなさい……」
 頭を深々と下げてから【雷術】を如月玲奈に向けて撃つ。
「アアアッ……うっ」
 ぱたりと倒れた彼女を受け止め、朱宮満夜はミハエル・ローゼンブルグに黒い瞳を向けた。
「得た情報から魔物の目的地を探さなければなりません。ミハエル、彼女をお願いします」
「ああ」
 パートナーの了承を得て、朱宮満夜は駆け出した。

 大地を滑るようにラミアが進んでいた。
 二人が魅了されたおかげで注意がそちらに向き、ラミアの障害は何もなかった……が。
「これ以上進むことは許しません」
 立ちはだかったのは緋桜遙遠。口にハンカチを当て、槌を振り上げた。
 その先端に【氷術】を使用し氷の塊を作り出す。
「殴ッ、殺!」
 掛け声とともに、力の限り振り下ろす。
 鈍い音がして砕けた氷の塊が辺りに散った。
 甲高い声を上げるラミア。尾をバタバタと動かし緋桜遙遠を遠ざける。
「来い!」
 周囲の魔物を引き連れ弐識太郎がラミアに近付いた。ラミアの背をセスタスで二度殴り、緊急回避。
「アンナ、やるよ!」
「はい!」
「せーのっ!」
 クラーク波音、アンナ・アシュボードが同時に【アシッドミスト】を放った。二重の酸の霧がラミアと魔物達を包み込む……。
「こっちだ」
 魔法の範囲から出た魔物は弐識太郎がセスタスで押し込んでいる。ラミア以外の魔物は反撃の様子すらない。
「ではでは……もう何回になるのかわからないスーパーミラクルびりびりアタックだぞ〜!」
 クラーク波音が不敵な笑いと共に【サンダーブラスト】を展開する。魔物の集団は死骸と化すが、ラミアは未だにそこに立っていた。

「トドメは派手に決めましょう」
 青色の瞳を輝かせ、用意してあった自転車に乗りこむカロル・ネイ。ランスを利き手に持ったままペダルを踏む。
 勢いを徐々に増し猛スピードで走る自転車の目的地はラミア。揺るがぬ決意で自転車は進む。
「くらえ、バイシクルチャージ!」
 叫んで槍を突き出し、自転車を進める。
 特攻に似たその攻撃がラミアに迫る……。と、その傍で【ファイアプロテクト】を展開する姿があった。
「バイクは……まだ使えるな」
 ハンドルをポンと叩いたゴザルザ・ゲッコーはバイクにまたがって急発進させた。目指すは、ラミア。
「惑わされなければチャンスはある!」
 悪戯っぽく微笑んでいるとバイクはほどなくしてラミアの目前へ。
 そこで【轟雷閃】を使用。体とバイクを電流が覆う……。
 電流はバイクのエンジンにも走る。不気味な音が、エンジンから発せられた……。
「え?」
「うわっ!」
「もしかして……」
「やばい!」
 その場にいたメンバーが何かに気付いた、その時。
「行けえぇええええ!」
「おぉおおおおおお!」
 カロル・ネイの自転車とゴザルザ・ゲッコーのバイクがラミアに衝突。瞬間、雷電が燃料タンクに引火。
 ドドォオオオオオオオオオン
 凄まじい爆音と爆風に、特攻を仕掛けた二人のみならず周囲で魔物と応対していたメンバーも巻き込まれる……。
 七枷陣、仲瀬磁楠、東條カガチ、レイディス・アルフェイン、緋桜遙遠、葉月ショウ、ミハエル・ローゼンブルグ、如月玲奈、クラーク波音、アンナ・アシュボード、弐識太郎……魔物に対峙していたメンバー全てが地に伏せった。
「っく……校門のメガネに気をつけろ……」
 誰に言うでもなく呟き、満足げな表情を浮かべゴザルザ・ゲッコーがその場に倒れ込んだ。

「わっ、大丈夫ですか!?」
「無理をするのう……生きているじゃろうな?」
 葉月アクアとセシリア・ファフレータが呼びかけた。そのまま【ヒール】を使用し、全員の治療を試みる。
「セシー。助かったぜ」
「おぬしも巻き込まれていたんじゃな。無事でなによりじゃ」
 よろよろと起き上がったレイディス・アルフェインに、セシリア・ファフレータはにっこりと微笑みかけた。
「おぬし達のおかげで、ラミアも倒れたようじゃ」
 言われてレイディス・アルフェインが振り返る。死屍累々の中心で、ラミアが目を回して倒れていた。
「それでも無茶だと思いますけど」
 苦笑しつつ【ヒール】をかける葉月アクア。
「ショウも怪我をしましたけど……魔物による被害者が増えてしまいましたね」
「どっちかっていうと人災の方だけどね」
 治療を受けながらクラーク波音が苦笑する。
「にしても……魔物はもういないのでしょうか?」
「いや、あっちにまだいるみたいだねぇ」
 東條カガチが、校舎に程近い位置にいる魔物三匹を指差した。

 示された先に、忍び足で進む四つの影。
「校舎をめざしてるね……」
「妙じゃのう……このまま進んでも校舎内には入れない筈じゃが」
「でも、単純に樹液を目指してきてるなら、あり得るかもしれないよ」
「もうちょっとついていってみようぜ」
 魔物のどんな小さな行動も見逃すわけにはいかないと目を凝らしつつ、ロートラウト・エッカート、レキ・フォートアウフ、
ミア・マハ、エヴァルト・マルトリッツが尾行を続ける。
「あっ、止まった!」
「あれ、ここは……」
「職員室ですね!」
 はっと気づいて全員の視線が朱宮満夜に注がれた。
「皆さんも尾行をしていたのですね」
 四人が頷き、魔物が職員室の窓を叩く姿を見つめた。
「こうして三体の魔物が一か所に集まっているところを見ると、目的地は一つだけなんだと思っていいわけだな」
「うむ。全ての魔物がここを目指しておるのじゃろう」
「ここに、事件の真相が隠れているんですね……」
 エヴァルト・マルトリッツとミア・マハ、朱宮満夜が口々に意見を述べた。五人が見つめるのは、職員室の窓の先……新人教師三人が座る席のあたり。
 魔物が目指すその先に、全ての終着点がある……。
 朱宮満夜は携帯電話を取り出した。
「魔物の追跡終わりました。どうやら、原因は職員室に潜んでいるようですよ……」