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サンタさん? いいえ、ジュンロクです

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サンタさん? いいえ、ジュンロクです

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最終章


 ジュンロクが二人。いや、二匹。
 そこには向かい合うトナカイ型ゆる族。
 彼等は言った。自分たちは元々サンタの下で働くトナカイだと。
 しかし、最近のサンタはメタボで禿げてきて、ついでに仕事もジュンロクたちに任せがちだという。
 ケンカして家出をしたジュンロク(A)は出て行く際に、トナカイだけで何ができるか、と言われたのだ。
 そして今回のジュンロクサンタの登場となったのだ。
「みんなぁ、心配してっぺよ?」
 なぜか訛りのあるジュンロク(B)は心配して様子を見に来た仲間だった。
「サンタ様があの様では、私が代行し続けます」
「プレゼントはぁ、お小遣いでたりちょるんか?」
「…………」
 ジュンロクの持っていた袋。その中には『お菓子セット』が詰まっていた。
 正解者に配る良いモノだった。
 サンタのように、アイテムを用意する事は出来なかったのだ。
 何人かはそれでも喜んだが、納得しない者もいた。
「おいィ! ジュンロク(A)」
 その声の方へ振り向くと、ジュンロクの群れがいた。
 左からジュンロク(C)(D)(E)(F)(G)があらわれた!
 その背中には。
「あれ真言? どうしたの」
「森で会ったんです。そのまま乗せて貰いましたよ」
 それぞれのジュンロクの背中には真言、ケイティ、ラティア、朗、ルーナの五人が乗っていた。
「いやあ、ジュンロクって速いな。バイクまで運んで貰ったし」
「中々、良い毛並みでした」
 朗とルーナはジュンロクから降りる。
「ケイティさん、このまま眠れそうです……」
「眠っちゃダメです。起きて下さい!」
 丸まってうとうとするラティアと、それを起こそうと頑張るケイティ。
 彼ら、彼女らは森で白ひげ赤服の老人と出会い、家出したジュンロクを連れ戻して欲しいと言われたのだ。
 その老人は改心して、ルームランナーと乗馬マシンでシェイプアップする事を誓っていた。
「そうですか……でしたら、これ以上は無意味ですかね」
 そう言ってジュンロクはその場にいる全員に今回の騒ぎの謝罪をし、仲間と共に帰って行った。
 逃がすまいとする者もいたが、透明になったゆる族を捕捉するのは至難だった。

「結局なんだったんでしょうね」
「でも、おかげでこうして会えましたね」
 少し目立たない場所で弥十郎と樹は二人っきりで会っていた。
 もちろん、トナカイの格好はしていない。
「あの、これ……どうぞ」
 樹が出したのはラッピングされた丸いモノだ。包装紙の模様からも、それがクリスマスプレゼントだと分かった。
「あ、ありがとう!」
 一言断って、弥十郎が中身を取り出す。
「これは、マフラー」
 手製の青いマフラー。少々……いやかなり不格好なマフラーだったが、愛情がこもっていた。
 この世に一つしかないマフラーだ。
「それでは、ワタシもこれを……」
 今度は弥十郎が聖書型の箱を手渡す。
「開けてみて」
 樹は頷いて箱の中身を見る。
 それはペンダント。箱の中にはペンダントが収められていた。
 樹はそれを身に付ける。弥十郎もマフラーを巻いた。
 そして二人は。

「メリークリスマス」

 同時にそう言った。

「やれやれ、いつの時代も変わらんね」
 と、それを眺めながら直実は、寒いのか暑いのか分からない仕草をした。


 その後、多くの者が校長室へと押し掛けた。というより招かれた。
 クリスマスパーティーは盛り上がりも最高潮だ。
「リリさん、楽しんでますか?」
 ミンストレルの歌と踊りを披露してみせるユリ。
「まあそれなりに……」
 無愛想な彼女の表情は変わらない。
「リリは楽しんでいるさ。ユリの歌と踊りをね」
「……ララ、突然何を」
「それじゃあ、もっと踊っちゃいます!」
 クルクルと回ったユリはやがてヨロヨロと一人、二人、三人に体当たりを仕掛ける。
「珍しい踊りだ」
 リリはフッと微笑んだ。


 夜遅くまで続くと思われたパーティーは、エリザベート校長の就寝という事でアーデルハイトとエルが幕を下ろした。

 翌朝。
 目覚めた月夜の枕元にプレゼントが置かれていた。
「……本」
「良かったな月夜」
 といっても刀真が用意しておいた物なのだが。
 本当は以前にあった一件について月夜が、

『刀真ここで私の下着使ってインヴィジブルポーズ捕まえようとした……』
 などと拳を震わせていたので、
『お詫びにクリスマスプレゼントは新しい下ギゅむゥッ!』(アッパーによって放物線を描く刀真)

 というやり取りを経て、本がいいとなっていたのだ。
 もし、あのままならばガーターベルトをプレゼントしていただろう。
 本にしたおかげで月夜も喜んでくれていた。
「次は、ジュンロクさんからこの娘に似合う下着をくださアふァッ!」(的確な水月へのブローで沈む刀真)
 二人は変わらず、相変わらずだった。

 今回の騒動に関わった者達の下に、不思議な贈り物があった。
 それと、メッセージカード。
 そこには一言、こう書かれていた。

「メリークルシミマシタカ?」