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リアクション
第2章 これがなきゃ年は越せない! 御節の準備と年越し蕎麦作り
-PM13:00-
早めに正月用品を買い、黒豆を作ろうとミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、大鍋で黒豆を煮込んでいる。
豆を煮始めた3日前は白湯で煮て、皮が伸びない様にびっくり水を加えて丁寧に作っていた。
薄い糖蜜から徐々に濃い糖蜜に変えていく。
「黒豆をちゃんと作るには、5日以上かけないとね♪」
生徒たちに美味しい黒豆を食べてもらために、じっくり時間をかけている。
お節をつまみ食いしようと毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がキッチンの様子を窺う。
ミルディアが鍋から離れた隙に、黒豆をつまみ食いする。
「なんだこれっ、味が薄いじゃないか!」
まだ煮ている著中の黒豆を食べてしまった大佐は、ゴワゴワで味が薄々の豆を食べてしまった。
「あははっ、まだ煮ている途中なのに」
残念そうにへこむ大佐を見て思わず苦笑する。
御節の作り方を調べようと図書館へ行き、エレノア・レイロード(えれのあ・れいろーど)は料理本を読んで学んでいた。
「伊達巻はこうやって作るのですね」
「メモをとっておきます、お姉さま」
ラシェル・グリーズ(らしぇる・ぐりーず)がノートにレシピを書き写す。
「お雑煮は・・・12時間ほど鶏がらを煮込んでベースを作ってから、醤油と味醂を加えるんですか」
「手間がかかるようですが、とても美味しそうでございますね」
「皆さんに美味しく食べてもらうために、頑張りましょう」
手順や材料のメモを取った彼女たちは暖かい料理を食べてもらうために、イルミンスールの家庭科室の場所を借りて下ごしらえを始めた。
-PM14:00-
「買ってきてくれた栗で栗金団を作るか。どうせなら本格的なやつにするかな」
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は武尊に買ってきてもらった大粒の栗を袋から取り出して鍋へ入れた。
適量の水を入れて1時間ほど煮詰める。
「そろそろ1時間経つか・・・」
室内の時計で時間を確認し、煮詰めて柔らかくなった鬼皮を指先で押し、栗を取り出す。
手順通り進めて和三盆糖で甘さを調節する。
「こんなもんかな。あまり甘すぎても食べづらいだろうし」
すり鉢で潰した栗をスプーンですくいとり、味見をしてみた。
栗の風味をしっかり残すために粒栗を多く残す。
薄手の布巾で薄丸めておいた栗生地をのせて絞り込む。
形を整えようと三本指で綺麗に整える。
「まだこんなにあるのか・・・頑張って作らないとな」
残っている500個以上の栗を目の前に、気の遠くなるような作業を続けた。
「ちょっと休憩しておみくじをひいてみよう」
小さな簡易のホルダーをからからと振る。
「末吉か・・・さて休憩はここまでにしてお節を作ろう」
手を傷めないように少し休憩し、お節作りを再開した。
「おにいちゃんが頑張っているんだから、私も美味しい紅白なますをいっぱい作るよ!」
買ってきてもらった大根と人参をダンボールから取り出し、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は包丁で皮をむいていく。
「柚子・・・どこかな・・・・・・あった。でもちょっと潰れてるのもあるね。争奪戦かなり大変だったみたい・・・」
塩を混ぜて10分くらい待ち、水気をきるためにぎゅっと絞った。
甘酢の代わりに柚子の果汁と出汁、砂糖を透明なボールに入れてよく混ぜて1時間ほど漬ける。
「人数分を漬けたら、さっき柚子をくりぬいた器に入れなきゃ」
クレアは人数分を用意するために、また柚子の果汁と出汁、砂糖を加えて混ぜた。
-12月31日 PM13:00-
パートナーが料理を作っている様子を見ながら、手伝わない巫丞 伊月(ふじょう・いつき)が味見と言いつまみ食いをして味つけに口を出す。
「もうちょっと濃いほうがいいんじゃないの?」
「―・・・・・・。(うるさいですね、次に文句言ったらどうしてやりましょうか)」
口出しをしてくる伊月にイラつきながらも、エレノアは調味料を加えて味を調節する。
「どれどれ・・・まだ薄いわよ。これじゃあ純和のお節にはほど遠いわ!おしゃれな洋風スープを作っているわけじゃないのよ」
酷い言い様に堪忍袋の緒が切れたエレノアが手にしているお玉で伊月の頭を殴りつけた。
「いったぁああい、何するのよ!」
「この下等生物!黙ってれば好き放題い言って・・・。もうお節なんて食べさせませんから」
逆ギレして睨みつけてくる彼女を睨み返す。
「ぇえ〜っ!そ・・・そんあぁ〜」
「いちいち注文しか出さない下等生物は、この場にいてもいなくても同じです」
「許して〜お代官様、エレノア様〜!!」
食べさせてくれないと怒る彼女にネコのように媚を売って許しを請う。
「次はどうするんでしたっけラシェル」
「えっとですね・・・鶏がらを取り出して、切った鶏肉を入れるようですお姉さま」
「うぅ・・・しくしく・・・・・・反省するからお節料理・・・私にも食べさせてよ・・・」
無視された伊月は椅子の上に膝を抱えてちょこんと座り、指でテーブルにのの字を書き、しょんぼりと項垂れる。
「これが地球のお節というものなんですね。まず目でじっくり見てから食べるような感じでしょうか?」
ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)は他の生徒たちが作っている料理を眺めて感動したように声を上げる。
「―・・・やっぱり私もやらなきゃ駄目?」
家庭科が苦手なリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、中原 鞆絵(なかはら・ともえ)に料理の1つも覚えなさいと言われて無理やり連れてこられた。
「リカさん、少しはこいうことも覚えないといけませんよ」
薙刀の刃をギラつかせて、逃がさないという態度をとる。
「自分は力のいる仕事を担当させてもらいやす」
ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)は伊達巻用の茹でた海老をむいてすり潰す。
「あっ。ヴィー、私もそっちに行・・・」
「どこへ行くんですか?」
逃げる口実を見つけて行こうとするリカインの行く手を薙刀で阻む。
「って分かった、分かりました、ちゃんとお節作りしますからトモちゃんその薙刀は勘弁して・・・」
しぶしぶもとのポジションに連れ戻されてしまう。
「ソルファインさんもお手伝いしてくれるんですから大丈夫です。まずは、なますように大根を切ってみましょうか」
「はぁ、料理って何だか苦手なのよね。包丁にしたってどうしたらあんな見事に切れるんだろう・・・」
不慣れな危なっかしい手つきで大根のかつらむきをする。
「うわおぅ、ソルいきなり何するの?!」
ピーラーをヒュッと首元へ向けられ、リカインは顔面を蒼白させた。
「あ、すみません。慣れていないので」
料理修行に呼ばれて、慣れてないからと理由で重症を負わされそうになった彼女は再び脱走したくなる。
「(恥ずかしい・・・ていうか怖いよー。誰か助けてぇえっ)」
「次は人参の皮むきをしてみましょうね」
「うぅ・・・きゃぁあっ!?」
誤ってピーラーで手を滑らせて、指をスライスしそうになってしまう。
「冷たっ!ちょっと何、どっから酢が!?」
「ごめんなさい・・・あまり得意なことじゃないので・・・・・・」
なます用の甘酢をかけられ、怒るよりもリカインは家に帰りたくった。
また何か起こるんじゃないかという不安と恐怖心に心が沈みそうになる。
「それじゃあなます用に切ってみましょう」
「まだやらなきゃいけないのねトモちゃん。―・・・ひきゃぁあっ!」
隣で包丁を使っているソルファインに、使っているまな板にドンッと包丁を突き刺され悲鳴を上げる。
「あれ・・・人参を切ろうとしたんですけど・・・どうしてでしょう・・・・・・」
「(そんなの私が知りたいわよ!)」
わざとやっているわけじゃない彼に対して、リカインは悪意的なものを感じた。
「これでなますは作れました。次は・・・」
「えぇまだやるのー!?」
「もちろんです」
講義の声を上げる彼女に鞆絵がニッコリ微笑みかける。
「(誰か助けてーっ。料理している間に、私がソルに料理されちゃうわよ!!)」
リカインは心の中で助けを求めて叫んだ。
-PM16:00-
最近和食にこっていたコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)は、趣味の料理を振舞えるとはりきっていた。
「お節には伊達巻が必要なんですね・・・」
初挑戦の料理に彼女はパートナーの2人に手伝ってもらいながら、ウキウキ気分で楽しく作っている。
「(大晦日だし、今日はコーディリアにお酌なんかしてもらおうかな・・・)」
家庭的な料理を作ろうとしているコーディリアの姿がいつも以上に愛らしく見え、そんな彼女に大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)はお酌して欲しいと密かに思う。
「お魚気持ち悪いですわ〜。このヌメッとした感じがもう・・・」
丸ごと1匹の鯛をさばこうとするソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)だったが、気持ち悪くて触れないと悪戦苦闘していた。
「しょうがないな、俺が鱗をとってやる。その間に別の作業してくれ」
剛太郎はソフィアの代わりに魚の鱗を包丁でとっていやる。
「上手く切れないですわね。きっと包丁がいけないんですわ!」
お雑煮用の肉と野菜を切ろうとすると、ぶつ切り状態になってしまう。
「貸してみろ。こうやって切るんだ」
「そ・・・その包丁がゆうことをきかないからいけないんですわ!」
上手く切れないのを道具のせいにして、ソフィアは包丁に文句を言った。
「ふふふっ。剛太郎様たち、楽しくお料理を作っているようですね」
パートナーたちのやりとりが微笑ましい光景に見えたコーディリアはニコッと微笑んだ。
「わぁー人結構居るねー。皆頑張ろうー」
生徒たちが会話している部屋を覗いて、鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)が人数を見て驚く。
「・・・作り方以外の材料は入れないこと・・・」
レイン・ルナティック(れいん・るなてぃっく)は氷雨に妙な材料を入れないように釘を刺した。
「お芋潰すー頑張るー」
栗金団の作り方を家庭科室にいる生徒たちに聞き、ふかした紫芋の皮をむいてすり鉢の中に入れて潰す。
「あれ?そういえば栗金団って黄色だよね・・・着色?」
怪しげな黄色い着色料を入れて芋を黄色に染めている氷雨に、見ていた周りの生徒たちがどよめいた。
「わーい、黄色になったー。ん?なぁに?」
「・・・待って!―・・・・・・・・・あぁ、もう手遅れ・・・」
着色料を入れようとした氷雨の行動に気づいたレインが止めようとするが、すでに悲惨なことになってしまっている。
「・・・間に合わなかった・・・すまない・・・味は・・・美味しいはずだから」
「うん、美味しいよ!きっと。たーくさん作ったから、皆食べてねー」
謎の栗金団にざわめいているのに気づかず、氷雨は生徒たちへ無邪気に笑いかけた。
生徒たちのために御節を作ろうと万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)は、生徒たちに買ってきてもらった材料を取ろうと、スーパーの袋に手を入れて探す。
「ふむ・・・とりあえず、伊達巻や昆布巻きを作っていくか・・・。栗金団は他の生徒が大量に作っていたからな」
卵を10パック分割ってボールに入れ、箸で卵をほぐす。
「味つけにはみりんと砂糖を使うんだったか?海老があったからすり身も入れよう」
鍋で茹でた海老をむいた後にすり鉢ですり、といた卵の中に入れる。
綺麗に焼けた伊達巻を冷めないうちに巻き簾で巻き形を整えた。
包丁で均等に切り分け、お重の中に詰める。
「どうせならもっと豪華にしたいな。そうだ・・・鯛と伊勢海老も焼こう!」
グリルで海鮮類を焼いた。
「和のものだけじゃなく、洋風のもあるといいかもしれないな・・・。フフフ・・・なんだか料理が面白くなってきたぞ」
パイを作ってみようと生地を作り、しゃきしゃき感を出すためにじゃがいもの皮をむいて小さく切る。
サラダ油をひいたフライパンで焼いている間に、もう1つのコンロでじゃがいもを茹でる。
温めたオーブンにポテトパイを乗せたトレイを入れて焼く。
「まだまだ作るぞ、フフフ・・・」
料理が楽しくなったミュラホークは、いろんな料理を大量に作った。
-PM21:00-
「こう見えても一応、蕎麦打ちには慣れてるんですよ」
手作り蕎麦を作ろうとザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は蕎麦粉と小麦粉を混ぜ、こね鉢に少しずつ水を加えていく。
鉢の底に指先をつけるよう、粉が粒に変わるまで手前から前へ回す。
「ふう・・・スキルに頼る生活をしていたせいか、結構腕にきますね」
手の平で押しつけるように力を加減しながらまわしていく。
「しっかりこねないと、こしのない麺になってしまいますからね」
粒をまとめて力いっぱいこねる。
台に打ち粉をして太さが均一になるように麺を伸ばす。
「さて、いよいよ麺を切る段階です。失敗しないように気をつけないと・・・」
細さが同じになるように、蕎麦切り包丁で切り分けた。
切り終わった麺についた余分な打ち粉をはたき、お湯が沸騰した鍋に入れて2分ほど茹でる。
「やっと完成しました。沢山作ったから皆さんにも食べてもらいましょうか」
せいろに盛りつけるとザカコは年越し蕎麦を待つ生徒たちがいるテーブルの方へ運んだ。
「大量に作るから、簡単な蕎麦にしよう」
二八蕎麦を作ろうと御節を作り終わった涼介は、蕎麦粉8に対してつなぎの小麦粉を2の割合でボールに入れる。
粉の量の40%ほど用意してその水を半分ほど加え、全ての粉に水が行き渡るように、両手で粉をとってこするようによく混ぜていく。
さらに半分の水を加えて丁寧に混ぜ、またその半分の水をボールに入れ、4回目でようやく全ての水を加え終わる。
「さてこの後に、粉と水が綺麗にまとまるようにするんだったな」
玉にまとめて手で潰す作業を5分ほど繰り返し、打ち粉を少し振りかけ上から押して丸く伸ばして、麺棒に巻きつけて転がす。
小間板を使い、麺の細さが均一になるように切る。
「これで麺と蕎麦の汁の準備は完了・・・後は蕎麦を茹でるだけだ。茹でる前に、クレアに天ぷらの作り方を教えないとな」
鰹出汁を利かせた掛け蕎麦用の汁を作り、天ぷらの作りかたをクレアに教える。
「まずどうすればいいの?」
「てんぷら粉と卵黄、水を加えて溶くんだが。粘りがでないようにするために、練らないようにさくっとな」
「さくっと・・・こんな感じかな?」
「そうそう・・・・・・なかなかいい感じだ」
「えへへっ、そう?(おにいちゃんに褒められちゃった♪)」
涼介に褒められてクレアは嬉しそうに笑う。
「油が170度になったら、天ぷらの衣をつけて3分くらいで揚げるんだ」
「あまり高温じゃないほうがいいんだね」
「一度に沢山入れすぎると、油の温度が下がってしまうから気をつけてな」
「うん分かったよ、おにいちゃん!」
クレアに天ぷらを上手に揚げるコツを教え、海老と大葉を人数分揚げさせている間、涼介は蕎麦を茹でる。
大佐も年越し蕎麦を作ろうと、蕎麦打ちをやろうとするが栗金団を少しつまみ食いする。
「んー、甘すぎないこの味最高だな!・・・おっと、蕎麦を作らないと・・・・・・」
一般の家庭で簡単に作れる蕎麦を打ち、カモ肉とネギを食べやすいサイズに包丁で切る。
「このくらいの大きさでいいか」
フライパンに油をひき、さっと火を通す。
「あまっている器は・・・これを使わせてもらおう」
棚から器を取り、茹でた蕎麦とスープ、トッピングのカモとネギを乗せてカモ蕎麦を作り上げた。
「蕎麦ならアイス天ぷらを洋風にアレンジするわね」
あまった材料でデザートを作ろうと、プリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)が冷蔵庫を覗く。
「柚子があるわ・・・この果汁をアイスに使おうかしら。生クリームもあるわね、ミカンのソースを作って綺麗に飾りつけようかな」
天ぷら柚子アイスを作り皿の上に乗せ、その周りに生クリームとミカンのソース、切ったオレンジをつけ加えた。
-PM23:00-
前持って購入しておいた蕎麦の材料を使い、白砂 司(しらすな・つかさ)は年越し蕎麦を作り始める。
衛生面というよりも、日曜大工のノリでエプロンをつけていた。
「ずいぶんと気合入ってますね」
作りやすい二八蕎麦を作っている司がいるキッチンに、サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が様子を見ようとやってきた。
「年に一度だ。普段は料理などしないが、これくらい、多少張り切ったところで・・・・・・構わんだろう?」
「ほうれん草、カマボコくらいは別にいいですけど・・・・・・。海老天を一から作れって、さらっと面倒臭いことをいいやがりますねあの司君はっ」
手間のかかる担当を頼まれた彼女は不服そうに顔を顰める。
「しかも料理が痛まないように、あまり暖房きいてないからわりと寒いんですよここ」
「できるんだから・・・・・・やれ。寒いとか言うな。うだうだ言ってると嫁の貰い手がないぞ」
「やりますよ、私にかかればこんなの簡単ですから!」
頬をぷうっと膨らませ、むきになってサクラコは海老の皮をむしる。
「粉の割合はこんなもんだろうか・・・」
蕎麦粉と小麦粉の量をちょうどいい割合に量る。
打った蕎麦を細く長く生きるということを祈願した縁起物として、1.2mmほどの細さに切っていく。
つけ汁は関東風の濃い風味にした。
「油の温度が175度になったわね」
サクラコは温まったごま油に海老天を入れ揚げる。
「ふふーん。この海老天とか最強だと思いません?」
海老の身の周りに衣を落とすと、美味しそうな花揚げになった。
自慢げに海老天を油きりのトレイに乗せる。
湯で上がった蕎麦を器に入れ、見栄えよくトッピングをつけた。
「使ったやつ片付けないのかしら?」
湯島 茜(ゆしま・あかね)は生徒たちが料理につかった鍋が、そのまま台所に放置されているのを見て眉間に皺を寄せる。
「仕方がないからあたしが食器を洗ったりしまったりするよ」
ふぅとため息をつき片付けるようなことを言う。
「茜君・・・口だけ何もやらないのでありますか」
文句を言っている彼女の見てエミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)が代わりに片付けを始める。
結局ハウスキーパーの能力でパートナーの変わりに、1人で片付けていく。
「だいたいねぇ、こいうのは早く洗わないと汚れが落ちにくいのよ!」
洗っていないフライパンを見つけて、指差して茜が怒鳴り散らす。
「片付けるこっちの身にもなってほしいよ、まったく・・・」
眉を吊り上げて文句を言う彼女は、口だけでまったく何もしようとしない。
「こうやって綺麗に落とさなきゃいけないんだよね」
茜はエミリーが洗った鍋を手に取り、自分がやったように言う。
「コンロのところも油が飛んでるじゃない」
そもそも彼女に全て任せてやる気が皆無だった。
エミリーが台所用洗剤を使い、コンロの油を雑巾で綺麗に拭く、
「ほらっ、こうすればピカピカになるんだよねぇ」
「(やったのはそれがしでありますが)」
片付けを終えたエミリーは、心の中で茜に突っ込みを入れた。
最初に片付けてあげると宣言した茜は結局、文句を言うだけで何もやらなかった。
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