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ほわいと・でい☆

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ほわいと・でい☆

リアクション

 あれは一体何かしら?と崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)はサロン側で設営されていく白い球体と大弾幕を見ながら、なにやら楽しげな気配を嗅ぎつけていた。
(ふふ、間に合えばあとでちびたちも参加させてあげようかしら)
 雪だるまに雪うさぎ、雪でいろいろな形を作るのはただそれだけで楽しい。
 赤いミトンを白い雪で粉だらけにして、雪合戦用の雪だまを作っているだけで、テンションの上がっている崩城 理紗(くずしろ・りさ)崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)の姿を見て、亜璃珠は目を細めた。

双方に雪の山を作り、そこに紅白の旗を立てて【姉チーム】と【妹チーム】は向き合った。いざ、決戦の始まりだ。

「いっくぞーっ!」
「ぞーっ!」
 理沙とちび亜璃珠は、雪だまを両手に抱えるようにして飛び出してきた。雪に触れるのがうれしくてたまらない二人は、当然のように雪だまに当たることにだって躊躇なんてない。むしろ、たのしい!どんどんこーいっ!!
 ちびっこたちが飛び出してきたからと言って、さすがに【姉チーム】集中砲火を浴びせる、というわけにはいかない。雪だまって当たるとけっこう痛いのです。
「負けませんわーっ!」
 【姉チーム】と言えども、もちろん中には張り合っちゃうタイプもいる。もちろんロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)、その人だ。エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)と上手に連携して「えいっえいっ」と雪だまを 投げ返す。
 ロザリィヌはちびっこたちに応戦をしているが、わざとなのか温情なのか、コントロールがなくてあまり当たらない。それでもちびっこたちはきゃいきゃいと喜んでいる。わーい!
 エミリアは、ちびっこたちが足元に投げてくる雪だまをうまく回避しつつ【妹チーム】の陣地へと駆け込んで行く。エミリアは明らかに繭を狙っている。冷やしてしまえー。濡らしてしまえー。うふふん、あとであっためてあーげる♪
 そんなエミリアの背後では、祈るように
(繭に当たりませんように……)
ルイン・スパーダ(るいん・すぱーだ)が【妹チーム】に雪だまを投げるのを躊躇していた……が!
「あああっ、エミリア、何してるっ!!!」
 ルインがエミリアの行動に気づいて、ドゴッ!!エミリアの背中に雪だまを投げつける。
「なぁにすんのよー!敵は向こうのチームでしょ!」
「うっさい!繭に何をしようとしてるんだ!」
「もー。ゲームなんだから、いいじゃない」
「あらあら〜。ほほえましいわねぇ、もう。遊びに目くじら立てないで。ほら、繭も応戦してきたわよ」
オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)がルインをなだめるように言うと、なるほど、繭と七瀬 巡(ななせ・めぐる)が、一生懸命作った雪だまを投げ返している。
「ねーちゃんたちには負けないぞー!さ、繭、もっともっと雪だま作って。はやくー!」
 えいえいえいっと巡が陣地に入ってきたエミリアに雪だまを投げつける。わぷっ。見事エミリアの顔面に当たっちゃったりして。
「お。やったわね〜。お・し・お・き、してあげるわ♪」
 エミリアは楽しそうに言うと、陣地内を逃げ惑う二人を追いかける。
「きゃー。旗!旗を守らなくっちゃ!!」
 実際、エミリアの目には赤い旗など欠片も映っていないのだが、確かにゲームのルールでは旗取ったほうが勝ちだったね、そういえば。
「任せてくださいっ」
冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が、赤い旗の立ててある小山を守ろうとすると、桐生 円(きりゅう・まどか)は、小夜子のところにどん、と走りこんで
「ここはボクに任せて。小夜子はちびの援護と旗を奪うことに集中するのだー」
「わかりましたわ」
 小夜子は、雪だまを両手に決死の表情でちびたちのもとへ、たったった。大きな胸が揺れるのを、むーっとした表情で見守る円。協力しているようで、ただのヤキモチかっ!
「ちくしょう。スタイルのイイヤツなんてー!」
 趣旨、変わってますよね?
亜璃珠は、時折飛んでくる雪だまをひょいひょいと避けながら、白い旗を見守りつつ、ちびっこたちに雪だらけにされているオリヴィアの様子を眺めている。
「ち、ちいさいこだからって、やっていいことに限度がありますわーっ!もう許しませんわよーっ!!」
 さっきからすでにけっこう全力で応戦していたようにも見えたが、さらに強化に応戦すべく、雪だまではなく雪そのものをつかんでは投げ、つかんでは投げ、する。
「きゃーっ!!」
 細かい雪は痛くはないけど、目にはいるのでいやーっとばかりにちびっこと小夜子はちょっと逃げ腰。「ほーほほほほほ」オリヴィアは高笑い。
 その隙をついて、円が素早い動きで【姉チーム】の陣地に滑り込んでくる。小夜子は囮、というわけか。
「よぉしっ!」
 白旗目がけて突進しようとした円の顔面に、ひょい・ぽかん・ぽとり。
 痛くはないが、雪だまでもない、白くないものが飛んできた。
「やーっ!」
 それを見て円はその場に固まった。オリヴィアが投げたピーマンボンバー。円には超有効の一手。
 ひょいひょいひょい、オリヴィアは軽々とピーマンを円に投げつける。フリーズしていた円もやっと我に返って「いーやーっ!」旗どころではなく、じたばたと逃げ回っている。
 ルインは相変わらず、同じチームであるエミリアを狙い続けてドゴッ!と的確に背中に命中させている。
「ルイン!いいかげんにしろー」
 エミリアの攻撃の矛先が変わると、これに便乗して巡と繭もルインに雪だまを投げる。にこにこと楽しそうに雪だまを投げる繭にルインが雪だまを向けられるわけがない。無念だ。
 大混戦となりつつある中、実は裏でせっせと雪だま作りをしていた歩は、そっとあたりを伺った。現在、赤旗を守ってる娘はいないな。チャーンス☆
 目の前の敵で目一杯になってる混戦の間をする抜けて、歩はそーーーーーーーーっと、ゆっくりゆっくり、移動した。見つかっちゃいけない。
「歩ねーちゃんっ!はっけーん☆」
 それでも目ざとく歩を見つけたのは、やっぱり巡だった。嬉々として雪だまを投げてくる。なんでエミリアも【妹チーム】としてルインと戦ってるんだ?
(こうしちゃ、ゆっくりしてられない!そろそろみんな冷えてきたしねっ!)
 歩は赤旗に向かって猛ダッシュ!!!!!!
 小山に滑り込むようにして……赤旗をげっとー。

「今回は【姉チーム】の勝利のようね」
 亜璃珠が宣言すると、歩はえへへー、と高らかに赤旗を上げた。
 自分の目の前の相手に夢中で、旗の存在をすーっかり忘れていたみんなは、へ?と言う表情でお互いを見回した。
「あああああああああーーーーーーーー!!!!」
「あー!!!」
理沙とちび亜璃珠が、歩の手の中の赤い旗を見て叫び声を上げる。
 雪だまを投げるのに夢中で勝負のことはすっかりわすれてた!
 巡は「あーあ」という表情を浮かべ、繭と小夜子はなぜかちょっと安心したような笑顔。楽しかったからもう満足☆という感じ。エミリアとルインは別の戦いに入っているようだ。
 円はマスターのピーマン攻撃に、雪合戦と関係なしにまだ騒いでいる。
「まぁすたぁあああ〜。もう、やーっ!終わったですよぉ〜!」
「あら、そおー?」
 オリヴィアは気にも留めない様子。
「ちゃんとピーマンは拾っておきなさいよ」
 そんな二人を見て、亜璃珠はおもしろそうに言った。この場合、ピーマンだいっきらいな円が拾うのか?オリヴィアが拾い集めるなんて到底思えない。
 みんな、雪合戦の決着に満足したという雰囲気が流れ始めた……わけがなく、
「むううぅぅぅうぅうううう」
 ものすごいふくれっつらのちびっこ二人。子どもがゲームで負けると本気で怒るのはお約束☆だよね?
「えええぇーいっ!!!!」
「ぇーーーーいっ!!!!」
 腹いせにとりあえず、目の前にいたロザリィヌに、最後のラッシュとばかりに雪だまを投げつける。こういう行為は別名、八つ当たりや腹いせとも言います。
 猛攻撃を受けたロザリィヌだって、当然黙ってはいない。
「ちびっこだから思って許していたけど、限度ってものがありますわ〜〜!!」
 ロザリィヌは【姉チーム】の陣地に戻り、歩が大量に作った雪だまを持てるだけ持ってちびたちの元へ。えいえいえいえいっと、大人げなく振り回すように投げる。
「きゃあ、きゃあっ!」
 半分喜びながらも、大きな雪だまから必死で逃げ惑うちびたち。さすがに【姉チーム】のロザリィヌがムキになったら、ちびたちも逃げるしかない……と思いきや、そのへんの雪をひっつかんで「やーっ!」投げ返すことも忘れない。強い。
「あ、そっちは……っ!」
 小夜子が止めかけた時にはもう遅い。ちびたちとロザリィヌは、雪だるまコンテストの会場へと、突っ込んでいた。