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ほわいと・でい☆

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「んー、っしょ」
エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は、秋月 葵(あきづき・あおい)秋月 カレン(あきづき・かれん)が作った胴体の上に、大きな頭を乗せようと努力していた。二人が作ったからだが案外大きかったものだから、重い。
「手伝うよ」
鬼崎 朔(きざき・さく)がエランディラの横からさっと手を出して、雪だるまの頭をちょうどいい位置へとセッティングしてくれる。
「ありがとうございます」
 エランディラが礼を述べると「いいよ。俺もう作り終わったし」と、ミカンをお目目に、ニンジンをお鼻にしてバケツをかぶった雪だるまを指差した。
 そこには尼崎 里也(あまがさき・りや)がファインダーを覗いて世界を見ていたが、里也の目の前にも素朴で愛らしい雪だるまがすでに完成しているようだ。
「可愛い雪だるまですね」
「さんきゅ。でも、もうあんまり時間ないからな。早いとこ作っちゃったほうがいいよ」
「そうですね。ありがとうございます」
「タイムオーバーで失格が、一番悲しいぞ」
 忠告して朔はさっさと自分の雪だるまの元へと戻っていった。確かに言われた通り、時間がない。そろそろ仕上げに取りかからなくては。
 周りを見ると、みんな仕上げに入り始めているようだ。
プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)マグ・アップルトン(まぐ・あっぷるとん)は小さな小さな雪だるまに砂つぶのようなもので装飾を施している。ブリキのバケツの中に、雪だるまを置くための世界が作ってあって、芸術作品のように可愛らしい。
 四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)はつるつるに磨き上げられたような鏡面状に輝く雪だるまに、シィリアン・イングロール(しぃりあん・いんぐろーる)の手によってぺちょぺちょと小さな雪だるまたちがくっつけられはじめているが、あれはあれで良いのだろうか……。

 さて、最後の仕上げに妖精の羽の代わりのテニスラケットを装着させなくては……とエレンディラが思ったその時、
「そっちはダメーっ」
という声が聞こえて、どしん。
崩城 理紗(くずしろ・りさ)崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)、そしてロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)が突っ込んできた。
「いったたたたたたた」
「えれんママ!だいじょうぶ?!」
 カレンが駆け寄って、エレンディラを引き起こそうとする。
「も、申し訳ありませんわーっ!!」
 ロザリィヌがエレンディラに向かって平謝りをした。自分たちがはしゃぎすぎてしまったことを反省しているのはもちろん、原因は他にもあった。
 せっかく作った雪だるまの身体の一部が、欠けてしまった。
「あの、だいじょぶですから」
 たった今、もうあんまり時間がないと思ったばかりだと言うのに、エレンディラは答えた。
「おケガはないですか?」
「ですか?」
 理紗とちび亜璃珠もさすがに神妙な顔だ。崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が駆けてきて、エレンディラに謝罪する。ちび二人とロザリィヌに小さくゴチン、ゴチン。
「これ、一緒に直しましょう」
 亜璃珠が申し出てくれたが、そんなにたくさんの人に手伝ってもらっては、コンテストに出すものとして申し訳ない。エレンディラは欠けた部分を見つめて考えていたが、
「そうだ。どちらにしても今からこのテニスラケットを身体に埋め込んで妖精の羽に見立てる予定だったのですから、どちらにしても雪だるまを少し削らなくてはならなかったのね。葵とカレンの手伝いがあれば、ちゃんと完成しますから、大丈夫ですよ」
と、言った。それを聞いて少しほっとしたのかちびたちに安堵の空気が流れる。
「本当に、ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりも雪にぶつかって冷えたでしょう。よかったら、ココアでも飲みませんか」
 エランディラが用意していたココアを出そうとすると、
「もう、雪合戦は終わったので、わたくしたちは部屋に戻るので大丈夫ですわー!ありがとうございます」
 さすがに申し訳なさそうにロザリィヌが答えた。
「えれんママ。じゃあ、雪だるま仕上げちゃおう」
 雪合戦組が引き挙げてしまうと、テニスラケットを取り出して、三人で固定した。大きく作ったせいで、目や口のバランスがどこかズレた感じになってしまったが、これも愛嬌のひとつ。
 後はただ、審査を待つだけになった。

 審査は案外、簡単に済んだ。雪だるま自体を動かすことが難しいので、審査委員のほうがチェックシートを持って審査にまわるからだ。
 コンセプトや気に入っている点など、簡単な質問をされて終了。里也が審査委員と一緒にまわって、記念写真も撮ってくれた。
 自分の審査が済むと、あとは他の人の雪だるまを見に行くことも自由だ。
 素朴な雪だるまあり、芸術的な雪だるまあり、雪だるまなのか?と思うほど個性的な雪だるまもあり、だ。
 審査の時間が過ぎると、雪だるまコンテスト参加者は、《雪だるまコンテスト in 百合園杯》と書かれた、大弾幕前に集められた。
「みなさん。本日は大変おつかれさまでした!どの雪だるまもとても可愛らしく出来ていたので、審査のほうもちょっと迷いましたが、持ち点制で一番投票の多かった雪だるまが優勝となります」
赤羽 美央(あかばね・みお)が簡単に審査の方法を説明すると、いよいよあとは発表だ。
「今回の《雪だるまコンテスト in 百合園杯》の優勝者は……、みんなで一生懸命協力して作ってくれた、秋月葵さん、エレンディラ・ノイマンさん、秋月 カレンさんのチームの優勝とします」
 コンテスト会場で拍手が起こる。
「どの雪だるまもとてもステキでしたが、本当に楽しそうに作っていたのがよかったと思います」
 美央が感想を述べた後、三人は雪だるまコンテスト優勝者へのご褒美、美央からの「国民栄誉賞と言う名のなでなで」をもらった。カレンはきゃっきゃっと嬉しそうにはしゃいだ。
「そろそろ、寒くなってきたので、参加者の方は部屋のほうに戻ってください」
タニア・レッドウィング(たにあ・れっどうぃんぐ)は、設営した時と同じように、テキパキと片付けの準備を始める。

「あの……赤羽美央さん。この雪だるま、差し上げたくて作ったんです。優勝は出来なかったけど、受け取ってもらえますか?」
プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)は、可愛らしいブリキのバケツを美央に差し出した。
「もちろん。ありがとう」
 美央はにっこりと受け取った。
 プレナの妹、マグ・アップルトン(まぐ・あっぷるとん)も、緊張した面持ちで四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)に雪だるまのプレゼントを渡していた。縁あって以前知り合った唯乃にあげたくて作ったのだ。
 唯乃は思いがけないプレゼントに驚きながらも、快く受け取ってくれた。
 マグはとても、幸せな気持ちでプレナに抱きついた。