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第4章 雪だるまの王様は誰だ?!

《雪だるまコンテスト in 百合園杯》
 そう書かれた横断幕と、大きな発砲スチロール製の雪だるまを背に【雪だるま王国女王】こと赤羽 美央(あかばね・みお)が、マイクを手に挨拶をしていた。
「それでは、これより雪だるまコンテストを行います。審査委員長は私、赤羽美央が務めさせていただきます。また、雪だるま王国の国民であるタニア、そして特別審査委員として、静香様・ラズィーヤ様・瀬蓮さんも審査してくださいます。雪だるま王国の国民のみんさんはもちろん、今回は百合園女学院で開催させていただくにあたって、初参加される方も多くいらっしゃると思いますが、ぜひ雪だるまの良さを知って、楽しんで作っていただければと思います」
 その後、簡単に時間の説明などをタニア・レッドウィング(たにあ・れっどうぃんぐ)が行い、雪だるま作成のスタートの笛の音が鳴り響いた。

 みんな、思い思いの場所で、雪だるまを作成に取り掛かっていく。
雪だるまは、シンプルに作ることも出来れば、自分なりのオリジナリティも出すことの出来る、とても奥の深いものであると言える。どんな雪だるまが一番なのか、そこにはハッキリとした答えは存在しないだろう。だからこそ、その分、作る側はいろいろな思いを込めることが出来るし、審査する側が重視する審査基準、というものも異なってくるはずだ。
 だからこそ、きちんと想いを込めて雪だるまを作る、ということがとても大切になってくる。

「ちゃんと温かい格好をしないと風邪を引いちゃいますよ」
エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は、雪にはしゃいで夢中になっている秋月 葵(あきづき・あおい)秋月 カレン(あきづき・かれん)にコートを着せかけ、マフラーを巻いてあげる。
「はぁい。えれんママ、雪だるまってどういう風に作ればいいのかな?
 雪が珍しいカレンは、今ひとつ雪だるまコンテスト、というものの趣旨が分かっていないらしい。エレンディラはいつも通りの優しい笑顔で
「三人で協力して作りましょう。可愛いのにしましょうね」
「カレンちゃん。張りきって大きい雪だるま作ろうね〜。あたしと一緒にからだのほうを作ろう。エレンは頭をお願いね」
 葵はそう言うとエレンにまず小さな雪だまを作らせ、それからころころとその雪だまを転がして雪だるまのからだとなるベース作りを始めた。
「あおいママ、からだは大きければ大きいほうがいいの?」
 雪だまを転がすのが楽しいのか、カレンはさっそく張り切っている。
「妖精さんの雪だるまにしようと思うんだ〜。だから、羽をつける分、大きくしないと、ね」
「カレン、がんばるよ〜」
 にこにこと嬉しそうなカレンの姿を見て、エレンディアも頭の部分を作り始めた。どのくらいの大きさのからだになるのかしら?それによって頭の大きさのバランスというものがある。庭を駆け回っている二人を見ていると、相当に大きな雪だるまになるのではないか、とエレンディアは微笑ましさ半分、心配半分で見つめていた。
「おおおっ、あそこはなんだか、巨大な雪だるまが出来そうだね!」
 庭を駆け回る、葵とカレンの姿を見てプレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)は楽しそうな声を上げた。マグ・アップルトン(まぐ・あっぷるとん)も、その声に釣られて葵とカレンが雪だまをごろごろと押している姿を見つめる。
「大きな雪だるまも、可愛いもんねぇ〜」
「うん。そうだね!でもプレナとマグは、始めに決めておいた通りの雪だるまちゃんを作ろう、ね♪」
「うん。喜んでくれるといいけどな〜」
 プレナとマグの前には、真っ赤と真っ白なブリキのバケツが二つ。どんな雪だるまを作ろうとしているのか。

四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は、中庭で雪だるま作りを楽しむ人たちを眺めながら、それぞれが用意している個性的な小物を見ていた。雪だるまコンテストに参加するに当たって、どんな雪だるまにしようかな、と考えた時、小物を使って個性的に仕上げることも考えたが、結局はシンプル・イズ・ベストでキレイな雪だるまを作ろう、と考えた。
 唯乃は箱に雪を詰めてブロック状の雪を作り、完璧な球体を作るべく削り出す作業をしている。つるつるとした雪の表面が光に反射して美しい。
シィリアン・イングロール(しぃりあん・いんぐろーる)は、唯乃が作っているキレイな雪だまを見つめながら考えていた。
(うーん。キレイだけど、あれだけじゃおもしろい雪だるまにならないなぁ……そうだ!)
 シィリアンは“小人の鞄”を使って小人を呼び出すと、小さな雪だるまをいっぱい作らせ始めた。うん、可愛い!
「うわっ、何それ小人!!!????!」
どんな雪だるまを作ろうかな、となんとなく雪だるまコンテストの参加者の雪だるま作りを見て回っていた鬼崎 朔(きざき・さく)は、シィリアンの前で思わず足を止めた。
何やら小人がせっせとちっちゃな雪だるまを作っている姿は、可愛いというよりもシュールだ。
尼崎 里也(あまがさき・りや)は、その姿に思わずカメラのシャッターを切る。空京写真館の管理人として、これは見逃せない画だった。
「ちっちゃな雪だるま、可愛いでしょー」
 シィリアンは朔の突っ込みとは微妙にズレた返答をした。イルミンスール魔法学院と蒼空学院の違いから来る、価値観の相違?
「可愛い、な。うん」
 朔もとくにそれ以上は追及せず、シィリアンの頭をなでなで、とした。なんとなく便乗して里也もなでなですると、シィリアンは満足そうに、にっこりとした。
「いろんな雪だるまがあるな」
「今のは、雪だるまが問題ではなかったと思うのですな」
 朔と里也はのん気な口調で話しながら、雪だるまコンテストの会場を見回す。中庭の反対側では、雪合戦をしているチームが、これまた雪だま作りにいそしんでいる。
 うん、雪はやっぱりいいな。みんな楽しめるし。
 里也は中庭のそんな風景に向かって、何枚かシャッターを切っている。雪だるまコンテストの雪だるまを撮ることはもちろん、中庭の楽しそうな風景も納めておきたいらしい。
「そろそろ、自分たちの雪だるまも作ろうか」
 制限時間もあることだし、と朔は適当な場所に陣取って座った。

椎堂 紗月(しどう・さつき)は、雪だるま王国の国民として今回のイベントに参加していた。雪だるまを作るのはもちろん好きなのだが、なぜか仏頂面をしている。
 40センチくらいの土台の雪だるまを作ったまではよかった。そして確かに「俺らしくしてくれ」と言ったのは紗月本人でもある。しかし……楽しげに雪だるまに装飾を施していく相棒ラスティ・フィリクス(らすてぃ・ふぃりくす)に、正直、突っ込みを入れたくなる。
 狐耳に狐の尻尾は紗月のトレードマーク。目には黒いボタンとシンプルに手は木の枝で、ま、俺らしいかな。と思っていたんだけど。
 ラスティは狐の雪だるまをなぜか楽しそうにゴスロリチックへと変貌させていく。SPルージュを引いて、ゴスロリ眼帯だって付けちゃう。
「ちょ・・・何してんだお前ー!」
「何と言われてもな。紗月をモチーフにした雪だるまにするのだろう?紗月と言えば女装だろう?」
「俺のイメージを損なうような発言を勝手にするんじゃねー!ていうか、そこが俺のイメージか?!」
「何か不満か?ほら、ちゃんと可愛くしてやるから心配するな」
 どこから取り出したのか、黒いレースのリボンを取り出し、胸のあたりと腰のあたりと思われるところにぐるぐると巻きだした。身体が球体だから胸も腰もあったものではないが。
「何してんだ、これ」
「ゴスロリ服のイメージで。可愛いだろ」
「ちょっ!!おまっ!!!!これ、ゴスロリって言わねーぞ!」
 ……突っ込みどころ間違ってます。
「うむ。思ったよりイマイチ可愛くならないな。何が足りないのだろう。うーん……そうか!」
 ラスティはこれまたどこから取り出したのか、金色のモールをだして、今度は雪だるまの頭にふわふわと置いて眼帯で固定した。
「……何これ?」
「やっぱり、紗月だし、ゴスロリだし、金髪は必須かなと思ってな」
「俺の髪、こんなゴワゴワじゃねーよ!」
 ……やっぱり、突っ込みどころ間違ってます。
「あとやっぱりこの腕が枝っていうのがよくないよな」
 ラスティは枝を引っこ抜くと、代わりに白いモールを何本も束ねてねじり、腕の代わりに突き刺した。うんうん、と満足そうに頷いてる。
「やっぱり腕のセクシーさは重要」
……どうしてこうなった!!
 雪だるまというにはちょっと謎の物体になりつつあるそれを、紗月は諦めの境地で見つめた。雪だるま王国女王様ごめんなさい。
 ひとまず、心の中で謝っておいた。