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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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第5章 行く手を阻むベルトコンベア

「捕まらずに、2人だけで進めるんでしょうか・・・。あ、レイディスさん!」
 地下6階へ降ようと階段を探している御堂 緋音(みどう・あかね)は、レイディスの姿を見つけて声をかける。
「緋音・・・なのか?」
 姿を確認しようと、レイディスは目を凝らして近づく。
「運搬場にベルトコンベアがあるんですけど。それに乗らないと、先に進めないみたいんです」
「どこかにブレイカーがあれば停止出来そうだが・・・」
 殺気看破で襲撃されないか、周囲を警戒しながらゆっくりと進む。
「皆、止まって。近くに何かいるわ・・・この危険な感じはゴーストね」
 シルヴァーナ・イレイン(しるう゛ぁーな・いれいん)が小声で言う。
「―・・・離れていったわ」
 ブレスドメイスを握り、仲間たちの前を走る。
「ブレーカー室・・・ここかな?」
 ルーセスカは壁のプレートを指差して言う。
「レイディスさん緋音のことお願いね」
「10分経ったら、ブレーカー落としちゃうぞー」
 シルヴァーナとルーセスカの2人はブレーカー室に残った。
「向こうの方から何か来ます!」
 自分たちを狙う存在を、緋音がディテクトエビルで探知する。
「くっ、ゴーストか!」
 天井を這うゴーストを床へ引きずり降ろそうと、奈落の鉄鎖で捕まえようとする。
「そこかっ。この暗闇の中じゃ、捕らえづらいな」
「私が術で照らします!」
 相手の姿が見えるようにしようと、緋音が光術を使う。
「捕まえたぞっ」
 レイディスは鉄鎖をゴーストの足に巻きつかせて天井から床へ落とす。
 アルティマ・トゥーレの冷気を纏った刃の切っ先でゴーストを凍結させる。
「他のヤツが来ないうちに走るぞ」
 階段を駆け降りて動力水路のフロアを通り、地下7階を目指して走る。



「十天君か・・・一度会って話を聞いてみたかったなぁ。目的は何なんだろ?」
 ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)は心ここにあらずという雰囲気でぶつぶつと呟く。
「他の生徒が残してくれた目印がなったら、ここまで進めませんでしたよねニコさん」
 クマラがチョークで柱や壁につけた目印を探して、ユーノ・アルクィン(ゆーの・あるくぃん)は地下5階からさらに下の階のフロアへ向かう。
「そういえば当初はそいつらの技術を盗もうと思ってたんだっけ。きっと僕の知らない世界を生きてるんだ。」
 呟きながら歩いている彼は、話しかけてくるユーノの言葉をまったく聞いていない。
 むしろ聞く気ゼロだ。
「真っ暗ですね・・・地下のフロアは全て明かりが点いていないんでしょうか。ゴーストが潜んでいるか分かりませんから、気をつけないと・・・」
「こんなにいっぱい人が遊びに来てくれるんだもん、研究にも力が入るよね。研究成果を見てもらって、反応が来るのって嬉しいし」
「ニコさんのディテクトエビルで探知出来るかもしれませんけど。突然襲い掛かってくる可能性もありますよね」
「あいつらが何を研究してるのか、もっと知りたいなー」
「―・・・あのーニコさん、私の話し・・・聞いてます?」
「うん?」
「よかった・・・聞いてくれてたんですね」
 疑問系の返事をするニコが、聞いてくれていたのだと思い、ユーノはほっとする。
「何が・・・?」
「へ・・・もしかしてまったく聞いてませんでした?」
「―・・・何を?」
「何でもありません・・・」
 全然話しを聞いていなかったニコの態度に、ユーノはがっくりと肩を落とした。



「運搬場・・・。この先をもっと進んだところに、レヴィアさんがいるんでしょうか」
 緋音は扉のノブに手をかけ、ゆっくりと開ける。
「レヴィアさんの友人の妖精さんはどこに・・・」
 アウラネルクを見つけようと、フロア内を見渡す。
「わらわに何用じゃ?」
「初めましてアウラネルクさん。オメガさんの友人の、御堂緋音です。オメガさんとはハロウィンパーティーとかで、何度か会っています」
 緋音は妖精に軽く自己紹介をする。
「ひなから・・・私の幼馴染から聞いたんですが、敵がオメガさんの能力を利用しようとしています。彼女に悪夢を見みさせて、それを何かに利用しようとしているみたいです。それで・・・オメガさんの能力について教えていただきたく思います」
「ふむ・・・」
「彼女はハロウィンパーティーにいましたよ。私も行きましたから、本当のことですぅ」
 訝しげな顔をする妖精に、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が言う。
「ミニたいふうがケースから逃げ出したって聞いて、捕獲の手伝いに来てたッスよ」
 七枷 陣(ななかせ・じん)がミニミニたちの事件で、緋音が手伝いに来たことを伝える。
「そうなのか・・・」
 2人の話しを聞きいた妖精は、緋音がオメガ・ヤーウェ(おめが・やーうぇ)の友人だと確認する。
「レヴィアに聞いたのだが、オメガには見た悪夢を実体化する能力があるようじゃ」
「悪夢を・・・?」
 まさかと思っていた緋音の予想が当たってしまった。
「計画のために魔力を奪うだけじゃなくって、それでレヴィアさんがターゲットにされてしまったんでしょうか」
「そうかもしれぬな・・・」
「許せませんね・・・一刻も早く助け出さないと!」
「もうそろそろ10分経つ頃だ。ルーがブレイカーを落とすぞ」
 レイディスがそういい終わった瞬間、場内のブレイカーが落ち、ベルトコンベアが止まる。
「急げ!」
 緋音と共に止まったベルトコンベアに飛び乗り走る。
「あともう少し・・・。―・・・なっ、・・・電力が戻っただと!?」
 流されてしまい地下7階のドア付近へ戻されてしまった。



「リヴァイアサンを救出できたのなら、オメガって言う魔女の所へ一緒に連れて行きたいな。人が喜ぶ姿が一番好きなんだ」
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)はそう言うと、パートナーの方へ顔を向ける。
「俺がレバーの操作をやるから、朔はライゼを背負って進んでくれ」
 パートナーの2人に、先にベルトコンベアへ乗るように言う。
「私の背中に乗ってください、ライゼさん」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)を背負うために、夜霧 朔(よぎり・さく)が屈む。
「よし、進むぞ!先に乗れ」
 ベルトコンベアに飛び乗り、レバーに手をかける。
「垂さん、私の手を掴んでください」
 朔の手を掴もうと、必死に走る。
「―・・・くっ、あともう少しだっていうのにっ」
 掴み損ねてしまい、入り口付近へ戻されてしまう。
「失敗か・・・なら、次の手段だ!」
 もう1度ベルトコンベアに乗った垂はライゼと共に進む。
「ここ狙って!」
 ライゼは氷術で的を作り、朔にシャープシューターでレバーを狙わせようという考えだ。
「成功しましたっ」
「次は向こうのやつを頼む」
「どこですか?柱が邪魔で狙いづらいですね・・・。ぁあっ!」
 柱に銃弾を弾かれてしまい、垂たちは入り口付近へ戻されてしまった。
「うーん・・・氷術で階段を作ろうとしても、作れそうな場所がないね」
 ライゼはしょんぼりと項垂れる。
「ふぅ・・・やっと地下7階についたよ」
 ニコはドアを開けて運搬場に入る。
「皆さん少しお疲れみたいですね」
 場内にいる生徒たちのSPを回復しようと、ユーノが驚きの歌を歌う。
「ありがとうございます」
 朔がニコッと笑いかける。



「アウラネルクさん、ボクとペアを組まないかい?」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)が一緒にベルトコンベアを進もうと言う。
「ふむ・・・そうじゃな」
「絶対に離すなよ」
 陣は途中で離れないように、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)と手を握る。
「ボクは陣くんがうっかりお笑いなことしないか心配だけどね」
 彼に聞こえないようにリーズはボソリと小声で言い、陣にパワーブレスをかけてやる。
「天井にトラップがありますわね。真下を通過した時に、反応するかもしれませんから気をつけないと・・・」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は天井を見て顔を顰める。
「ゴーストたちが来ないうちに進もうよ」
 エルとアウラネルクの後に、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)がベルトコンベアに飛び乗る。
「ここに何か来る・・・。この嫌な感じ、ゴーストかも!」
 ディテクトエビルで探知したライゼが叫ぶ。
 ドンッドスンッと、ドアを乱暴に蹴る音が響く。
 生徒が“開けてくれ”という風には、まったく感じられない。
「見つけたぞ、侵入者め。全員捕まえてやる!」
 運搬場に入り込んだゴースト兵が、ハンドガンの銃口をメイベルに向ける。
 ブレイカーを落とされた異変に気づき、来てしまったのだ。
「凍っちゃえ!」
 ライゼは氷術を兵の腕に放ち凍結させる。
「そこかっ」
 殺気看破で背後から忍び寄る兵の存在に気づき、垂は試作型星槍の槍を両手で握り頭部を貫く。
「厄介なやつも来たな」
 ペタペタと壁を這うキラーパペットを睨む。
「ちっ、あちこちにいやがる」
 ゴーストに囲まれてしまい舌打ちをする。
「伏せてください!」
 柱の陰に隠れているユーノは灼熱の炎を刃に纏わせ、垂を狙うゴーストに爆炎を放つ。
「まだ来るようですね・・・」
 次々と入り込んでくる兵を見て、ため息をつく。
「何人来たって倒せばいいじゃないか」
 積み上げた空き箱の傍に隠れていたニコが、発砲する兵に向かってサンダーブラストを放ち、まともにくらった亡者どもの身体が壁際へぶっ飛ぶ。
「それにしても施設にいる兵たちって、どれくらいいるんでしょうね」
 進む生徒たちの邪魔をさせまいと、緋音がサンダーブラストで阻む。
「どのみち水竜を助け出した瞬間、ばれてしまうことだ。気づかれるのが遅いか、早いかのどちらかだぜ」
 レイディスが襲い掛かる亡者を斬り伏せながら言う。
「あらかたここでゴーストを倒して、数が減らしておけば脱出しやすいかもしれないしな」
「プラス思考で考えれば、悪い事態ではないということですね」
「そういうことだ!」
 アルティマ・トゥーレの冷気を纏った刃で、深手を負いながらも床から立ち上がろうとする兵を仕留める。
「ゴーストたちが来てしまったな、急いで地下8階へ行かないと・・・。アウラネルクさん、レバーを切り替えてくれ!」
 光術で明かりを作ったエルが、レバーを切り替えるタイミングを計り光度を強くする。
 信号のように照らす光術の明かりが強く光った瞬間、アウラネルクはレバーを操作して目の前のベルトコンベアへ飛び移る。
 メイベルと陣たちも同じタイミングで飛び移った。
「そろそろ別のベルトコンベアに飛び移る頃だな」
 陣はレバーを見て確認する。
 アウラネルクがレバーを操作し、飛び移るのを確認した陣も続けて行こうとするが、箱に躓きリーズと手が離れてしまう。
「陣くん!」
 バーストダッシュで飛び移ってしまったリーズは彼の方へ戻れない。
「おわぁあっ」
 躓いた箱が運悪く、爆弾の入った箱だった。
「こんなところで、自爆しないでください!私たちまで入り口付近へ戻されたらどうするんですかぁっ」
 メイベルが妖精たちが乗ったベルトコンベアの方へ陣を突き飛ばす。
「イッてて・・・別に自爆したくて自爆したわけじゃないって!そもそも自爆してないからっ。箱に躓いて、それが爆発しただけだから!」
 眉を吊り上げて怒るメイベルに、陣は慌てた口調で言う。
「私たちが前へ行きますぅ」
 巻き込まれるのはごめんだといわんばかりに、メイベルは陣を退かして前へ行く。
「箱が流れてくるよ。邪魔だね・・・後ろへ投げておこう」
「―・・・えっ、どわぁあ!?」
 セシリアが投げたダンボール箱が、陣の脳天に直撃し箱が爆弾する。
「なんとかつけたようじゃな」
 レバーを操作しながら、妖精たちはようやくドアの前にたどりつく。
「やっとついたね。あれ・・・陣くん、どうしたの?」
 リーズが陣の方へ振り返ると、爆弾のせいで爆発ヘアーなっている。
「どうもこうも・・・。何でオレばっかこんな目に遭うんだつーの!」
「次は地下8階ですわね」
 ドアノブに手をかけ、ゴーストがいないかフィリッパが見てこようと、先に階段を降りる。
「大丈夫みたいですわ、進みましょう」
 ゴーストがいないことをメイベルに携帯で知らせ、真っ暗な地下8階へ進む。