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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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第3章 それぞれの闘い方・・・

「で・・・ここで何の実験が行われているんだ?」
 施設内で何が行われているのか、リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)椎名 真(しいな・まこと)に聞く。
「どこかに捕縛されている水竜の魔力だけじゃなく、牢屋に設置したレンズで、捕らえたやつらの奪った魔力を上の階に貯蓄しているようだ」
「何のためにそんなことを・・・」
「奪ったそれを使って、生物兵器やウィルスを作っているみたいだな」
「ほぉー・・・死者を侮辱するだけじゃなく、傷を負った者にそんな仕打ちをしてろくでもない物を作っているのか」
 鞘に収めている高周波ブレードの柄を握りるリュースの姿は、いつ怒りが爆発してもおかしくない状態だ。
「ゴーストたちがやってこないうちに行きましょう!」
 遠野 歌菜(とおの・かな)は禁猟区を発動させて周囲を警戒する。
「階段はこっちにあるみたいだね」
 生徒が残した目印を頼りに、佐々良 縁(ささら・よすが)は階段を探す。
「動力水路ですか・・・。水で相手の匂いが消える厄介なところですね」
 幸は超感覚でゴーストが潜んでいないか辺りを見回し、地下2階の動力水路の通路を走る。
 ペタッ・・・ペタペタペタ。
 何かが這い回る音がフロア内に響く。
「この危険な気配・・・ゴーストがやってきます!皆、もっと早く走ってください!」
 禁猟区でゴーストの気配を探知した歌菜が叫ぶ。
「―・・・はぁ、もう・・・走れないよ・・・。あうっ」
 佐々良 皐月(ささら・さつき)が水しぶきで濡れた床に足を滑らせてしまう。
「大丈夫!?」
 急いで皐月の元へ戻った縁は、転んでしまった彼女を助け起こす。
「走れる?」
「うーん・・・。・・・っ、イッたぁい」
 転んだ拍子に足を捻ってしまい、皐月は走れなくなってしまった。
「しょうがないな、背中に乗りなよ」
「ごめんね、よすが」
「いいって。今は治療している暇なさそうだからねぇ」
 そう言うと縁は皐月を背負って走る。
「どうやらスルーさせてくれないようだね」
 凄まじいスピードで床を這い、追いついてきたキラーパペットを見て東條 カガチ(とうじょう・かがち)はため息をつく。
「考えている暇はない、強行突破しよう!」
 真は取り戻してもらった鉄甲を両手にはめてゴーストに殴り飛ばす。
 階段を上り地下1階へたどり着くと、ゴースト兵が通路を巡回している。
「向こうの道は危険だな、こっちの道を行くぞ」 
 犬の超感覚で見知った者の足音かどうか聞きながら進む。
「この階段を上れば、やっと地上階にたどり着きますな」
 ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)は階段を見つけ、仲間たちを呼ぶ。
「見張りがいるようだ・・・」
 先に階段を上った天 黒龍(てぃえん・へいろん)が、会議室の前をうろつく兵を見つける。
「倒していかないと進めなようだ。どうする?」
 真がリュースの方を見るよりも先に、彼は兵を斬り殺していた。
「相手が1人なら、考えるより殺した方がいいだろ」
「それはそうだけど万が一、騒がれたりしたら厄介だからどうしようかと思っただけだ」
「だったらその前に始末してしまえばいいことだ」
 そう冷酷な口調で言い放つと、リュースは真よりも先に再び廊下を走る。



「この前、余ったご飯を干しておいたからそれを使おうか」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は四角に整えて干しておいたご飯を、油で揚げて中華おこげを作る。
「えらくサイズがちっちゃいから、さばきづらいね」
 地竜のような虫を洗い、2つに割り泥抜きをする。
「フライパンに入れてっと・・・。あとはこの調味料で味付けをしておこう」
 泥抜きをしたやつをボールに入れて洗い、適当な調味料で炒める。
「えーっとお醤油はどこかな」
 棚から取り出すと醤油ベースのスープを作り、おこげにかける。
「これがここでの最後の料理だね。皆に美味しいって言ってもらえるといいな」
 料理人として悔いの残らないように、作る料理が美味しくなるようにと、心を込めて作っているようだ。
「量はこれくらいかな?」
 スープを取り出そうと、もう1つの鍋に大量の赤い虫を入れて煮込む。
 火加減を調節し、煮詰めてエキスを濃くする。
 このスープで中華おこげを同じように作った。
「うん、上手く出来たようだね」
 出来栄えを見てにっこりと笑う。
「今日でこの食堂から離れることになったけど。今までお世話になったね」
 皿に盛りつけ食堂にいるゴースト兵に渡す。
「そうか、どこか配属が変わるのか?」
「うーん・・・ちょっとね」
 食堂から離れる理由を聞かれた弥十郎は無理やり笑顔を作る。
「あっ、そうだ。よかったら姚天君様に渡してくれないかな。自信作なんだ」
「ふむ・・・あとで渡して来てやるよ」
「ありがとう」
 軽く礼を言い、弥十郎は食堂へ戻った。
 数十分後、ゴースト兵が姚天君の元へ行き、弥十郎が作った料理を手渡す。
「食堂にいる者が作った料理でございます」
「へぇー・・・いい香りね。でもいらない」
「は?なぜ・・・」
「だって、こんな大量に食べたら身体が冷えちゃうもの」
「では・・・分かっていて牢にいる者に食べさせようと?」
「そうよ。そうすれば牢の天井につけたレンズで魔力も奪いやすくなるし♪」
 姚天君は可愛らしい笑顔とは魔逆の、一切慈悲を与えない冷酷な態度をとる。
 結局、彼女は差し出された料理を、一口も食べなかった。



「地下8階の箱も見てから最下層いこ」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はベルトコンベアの上を流れる箱を見てから進もうと、地下8階の出口へ戻る。
「すまねぇな。おっさんだと罠にかかっちまうかもしれねぇしな」
 ベルトコンベアには乗らず、ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は待っていることにした。
「さっそく流れて来たわね、えい!」
「調べてみるか」
 トラップかもしれないと言い、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がダンボールの箱に耳を当てる。
「やべぇ時限爆弾だ!」
 カチカチと箱の中から聞こえ、9階の方へ放り投げてドアを閉める。
 ズドォオンッと爆発し、ドアごしから彼らがいるフロア内にまで響く。
「もう1つ箱が流れてくるぞ」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)に言われ、ルカルカは木箱を拾う。
「今度こそトラップじゃなきゃいいんだけど」
「貸してみろ」
 カルキノスは中を調べようと箱を受け取る。
「―・・・火薬の匂いはしないようだが・・・。うぉあ!?」
 慎重に開けてみると、中から痺れガスが噴出す。
「しっ、痺れた・・・しびびっ・・・」
「痺れガスにやられたのか」
 身体をぴくつかせている、麻痺状態のカルキノスにダリルがキュアポイゾンで治してやる。
「こればかりは開けないと分からないからな」
 起き上がったカルキノスは、ぐーっと背伸びをする。
「3つ確保したが・・・このなにかあるかもしれん」
 夏侯 淵(かこう・えん)は小さな箱を抱えて、ルカルカに手渡す。
「開けてみるね・・・・・・。きゃぁあっ!?」
 3つ全部いっきに見てみようとそっと慎重に蓋を開けてみると、子供騙し程度の超小規模の爆発が起こる。
 べにょーん。
 ぼひょーん。
 びよぉお〜ん。
 ビックリ箱の人形の頭に、スカ・スカ・偽者だよぉ〜んと紙が貼られている。
 結局、パスワードの答えは見つからず、ルカルカはしょんぼりとする。
「うーん・・・見つからないわね、箱の中にないみたいだから奥へ進もう」
 地下9階へ戻ろうと、ベルトコンベアに乗る。



「やっと2階ですか・・・」
 地下から走り続けている幸たちは、ようやく2階の動力水路にたどり着く。
「階段はどこだ・・・?こう広くては探しづらい・・・・・・」
 仲間たちと協力して上の階へ向かっている黒龍は、息をきらせながらも階段を必死に探す。
「―・・・黒龍、・・・向こうに・・・ある」
 紫煙 葛葉(しえん・くずは)は階段の場所を黒龍に教えようとメモに書いて手渡した。
「面倒だな、見張りがいる・・・」
 階段の前に立ちふさがるように見張りをしているゴースト兵を見て黒龍は舌打ちをする。
「立ちふさがる敵は皆・・・轢き殺しますよ?」
 歌菜はアルティマ・トゥーレの冷気を纏った槍で、兵が持つハンドガンを突き刺して凍らせ、頭部を拳で思い切り殴る。
「仲間を呼ばれては面倒ですから、きっちり仕留めておきましょう」
 兵の頭に刃の切っ先を向け、ズシャァアッと刺し貫く。
「4階への階段は・・・」
 3階にやってきた歌菜たちは、目印がないか探す。
「あった、あっちですね!」
 8階を目指し全力で走る。
「―・・・あっ、きゃぁ!?」
「歌菜!」
 足を滑らせ転びそうになってしまう歌菜を、とっさに幸が彼女の身体を抱えて助ける。
「ありがとう幸姐さん」
「どうやらここで戦闘があったようですね」
 幸は乾ききっていない血糊のついた床を見下ろして言う。
「おい、そこに誰かいるのか!?」
 曲がり角から聞きなれた少女の声が聞こえてきた。
「あなたは・・・」
「おっ!まさかこんなところで合うなんて思わなかったぜ」
 声の主の正体はミューレリアだ。
「ちょっと情報探しでもしようかと進んでたんだけど、なかなかお目当ての相手が見つからないんだ」
「そうなんですか?」
「上に行こうにも、4階の床に落とされるから1人じゃ無理だしな」
「私たちは8階へ行くんですけど、途中まででよければ一緒に行きますか?」
「いいのか?助かったぜ!」
 ミューレリアは島村組に混ざり、上の階を目指して進む。
「ここを上がると、その厄介な床があるんだよな」
「先に足を治しちゃいな」
 縁は皐月に足を治療しておくように言う。
「今なら敵もいないからそうするよ」
「私が治してあげましょう」
 ガートナが皐月の足の痛みを、ヒールで治してやる。
「そんなもの私たちの絆の力で、走り抜けてみせます!」
 4階に幸たちは暴走列車のように、勢いよく床の上を走り抜ける。
「簡単に通れましたね」
 通りきった幸はにっこりと笑う。
「来ませんね・・・。あっ!」
 地下から上ってくる者たちを待っていたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が、幸を見つけて駆け寄る。
「そろそろ地下に向かったグループから、パスワードやその他の連絡をもらうためにいるんですけど。ここへ来る途中、誰かとすれ違いませんでしたか?」
「いいえ、見てませんよ」
「そうですか・・・9階で使うパスワードに該当しそうな言葉とか分かりませんか?」
「ちょっと分かりませんね」
「うーん、じゃあ他に地下で知ったこととかない?」
 アリシア・クリケット(ありしあ・くりけっと)が幸に聞く。
「上の階で魔力を集めているという情報は得ましたけど」
「なるほど・・・分かりました、情報提供ありがとうございます」
 得た情報を強盗 ヘル(ごうとう・へる)に伝えるとザカコは、連絡が来るかもしれないとそこで待つことにした。
「やっと5階まで来ましたね」
 疲れた様子を一切見せず、幸は笑顔のまま走っている。
「はぁ・・・これだけ走ると、さすがにちょっと疲れるぜ・・・」
 一方、ミューレリアの方は、ぜぇぜぇと息をきらせる。
「何か近づいてくるぜ。それも複数・・・」
 階段を駆け上る足音を超感覚で聞き取り、耳をぴくつかせる。
「どうやらゴーストみたいですね。上の階へ追って来られたら厄介です」
 柱の陰に隠れた幸が、相手の姿を確認する。
「小人では無理みたいですね」
 無理やり突破しようと、幸が先制攻撃で小人の小鞄から小人を呼び出すが、小人たちは床に叩きけられてゴーストの餌食になってしまう。
「ここは私が引き受けます!皆さんは急いで上へ・・・!」
「分かりました、お願いしますね」
 歌菜を5階に残して、幸たちは上の階へ走る。
「【島村組鉄砲玉】・・・遠野歌菜!推して参ります!!」
 試作型星槍の柄を両手で握り、キラーパペットの喉元を狙う。
 槍の刃から逃れたゴーストは、ペタンッと床に落ちる。
「さすがに素早いですね」
 避けられてしまった歌菜がムッとした表情をした。
「じゃあ・・・これならどうですかっ」
 冷気を纏った刃を振り回し、ターゲットを串刺しにする。
「さぁ、私と一緒に踊ってくださいなッ♪」
 歌菜は楽しげに笑い、亡者を壁際に叩きつける。
「早く幸姐さんたちの後を追いかけないと」
 幸たちの後を追って通路を走っていく。



 6階にたどりついた幸たちは、どうやって階段の前にいる兵に気づかれず進もうか考えている。
「倒していくにしても数が多いですね。ブラックコートや隠れ身でも、気づかれずに進むのは難しいかもしれません。これを使いましょう」
 もう一度、先制攻撃で小人の小鞄から小人を呼び出し、兵の邪魔をさせ突破を図る。
「何だこのちびっこいのは。―・・・あっ、見つけたぞ。このっ、邪魔すんじゃねぇえ!」
 邪魔をする小人を蹴り飛ばし、階段に近づく幸に向かって刀を向ける。
「ありゃ。やっぱりお出ましだねぇ・・・真くん、リュースくん、あとかがっちゃん。姐ぇのエスコートよろしくね?」
 縁は弾幕援護を放ち、4人を先に行かせる。
「んもー、また自分から危ないとこやるんだから・・・皆さんは先へ!」
 1人でゴースト兵の群れへ突っ込んでいく縁を見て、皐月はため息をつき、仲間たちに上の階へ行くように言う。
「おまえたち2人だけでは無理だろう・・・」
 黒龍と葛葉も残り、兵の足止めに加わる。
「天、私に無断で勝手にナラカに逝ったら、後でラボでお仕置きしますよ」
「―・・・なぜ私だけ」
 理由を言わないまま、幸は階段を上っていく。
「こちら10番、侵入者どもを6階で見つけた。近くにいるやつは大至急来るように!」
 彼らを発見した兵は、無線機で仲間を呼ぶ。
「―・・・待て、黒龍・・・・・・」
 葛葉がパワーブレスを黒龍にかける。
 バスタードソードの柄を握り、黒龍がターゲットの手首を狙い斬り落とす。
「これがほんとの足止めってぇやつかねっ!」
 縁は相手の足元を狙い、スプレーショットの弾丸の雨を放つ。
「いい気になりやがって、クソガキどもがぁあ!」
 侵入者を排除しようと兵は、アサルトカービンで縁を狙い反撃する。
「おぁわわっ。イッてて!」
 銃撃を避けきれなかった縁の身体を銃弾が掠める。
「せっかく注意したのに、そんな傷だらけになって」
 眉を吊り上げて怒りながらも、皐月は縁の傷をリカバリで癒してやる。
「そんなところで止まるなんてな。蜂の巣にしてやるっ」
 壁際に隠れている兵は少女たちを狙いトリガーを引く。
「させるか・・・っ」
 黒龍はタワーシールドで縁に迫る銃弾をガードし、バスタードソードで兵の胴体を薙ぐ。
「・・・まだ・・・・・・、動く・・・のか」
 胴体を真っ二つにされても銃を握り、反撃しようとする兵を見下ろす葛葉は光条兵器で何度も刺す。
「天さん伏せて!」
 階段を上り6階にやってきた歌菜が、黒龍に伏せるよう大声で言う。
 ズダダダァッ。
「―・・・後ろにもいたのかっ」
 伏せるのが遅れていたら今頃、蜂の巣にされていた。
 歌菜は槍の柄を咥えて両足首で兵の首を挟み、くるりとバクテンしゴキンッと捻り折る。
「間に合ってよかったです」
「すまない・・・、油断してしまったようだ」
「それじゃあその借り、今度返してくださいね」
「あぁ・・・そうだな。必ず返す・・・」
「まだ来るようですね。ここから先へ行かせるわけにはいきません!」
 下の階から無線で連絡を受けた兵が大勢来てしまい、歌菜たちは足止めを続ける。