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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

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「皐月ぃ!!」
 走り始めて幾らもしない内に回り込まれた。
 木々の間を駆けるのに軍用バイクは適していなかった事、そして八神 誠一(やがみ・せいいち)の一閃に後輪を切られた事で、皐月七日の乗るバイクは、サンタのトナカイに追いつかれたのだった。
 止まると同時に七日が跳び出した。軽身功で瞬時に宙を駆けて加速した。
「っつ、ちょっと待て」
 地に足を着けた直後、が雅刀の柄で七日の蹴りを受けたが、間髪入れずに蹴撃が襲い来た。
「某っ!!」
「構うな! それより、皐月をっ!!」
 明らかに押されている。それでも誠一は視線を外さなくてはならなかった。真に捉えるべき相手が居るのだから。
「皐月……」
 痩身にも見える細身の体が自然体に立っていた。
「狙いは、これか?」
「なっ」
 皐月は躊躇いも無く、青龍鱗を自身の後方へ放り投げた。
「安心しろ、そう簡単には壊れない」
「…… 試したのかぃ?」
「あぁ、欠片もこぼれなかったよ」
 ブライトグラディウスを胸の前に上げてゆく。なるほど、その剣で青龍鱗を壊そうと。
「強奪した理由は、青龍鱗を壊すため…? いやぁ違うな、青龍鱗と共に争いの中核になろうとしたんだろぅ?」
「…… そうなれば、オレ以外の者に矛先が向く事は無い……」
「そぅ、みんなを守れるなら、自分が狙われる的になろうと」
「………… 買い被りすぎだ」
「じゃあ、どうして!」
 言いながら皐月は腰を落とした。
「邪魔をするなら」
「皐月!」
 揺れている、微かに、ほんの僅かに眼球が揺れた。そのは必死に揺れを抑えようとしているようにも見えて。誠一は地に目を落としてから、覚悟を決めた。
「…… 理由も分からないまま、死に行かせる訳には、いかない……」
 誠一もブライトグラディウスを握り構えた。
 互いに動かず、視線で幾らか斬り合いてから。2人は飛びだした。
 皐月のランスバレストを轟雷閃で迎えうつ。互角に弾きあったが、皐月の方が速くに体勢を整えた。
 肩、腕、腹へと突きを放ちゆく。誠一はこれを見切るに遅れて、剣でこれを受け捌いた。
「くっ」
 避ける事さえ出来れば……。
 突きが肩上をかすった、そのまま誠一は腰を落として地面に向けて轟雷閃を放った。
 雷鳴が空気を音裂き、地を砕いた。
 瞬間の硬直。
 砂片が弾け飛ぶのに合わせて突いた誠一の剣が皐月の柄を、続けて剣の腹で、握る指を斬り抜いた。
 意図した訳ではない、意図してなど出来る訳もないのだが。弾かれ飛んだ皐月の剣が、回転しながらに青龍鱗に向かい飛んだ。
 2人は視線をぶつけながらも、両者がぶつかった音を耳端から聞いた。
「今ので青龍鱗が斬れてたら、僕のせいになるのかなぁ」
「ふっ、あんな事じゃ、壊れねーよ」
「そうか、試したんだったねぇ」
 切っ先を外して向かい立つ。視線ばかりは今もぶつっかってはいるものの。
「七日、もういい」
「! …………」
「何だ? 決着ついたのか?」
 転がる剣、青龍鱗を拾う誠一の姿を見て、2人は体の力を抜いた。
「青龍鱗は、ヴァンガードに届けるよ」
「………………あぁ」
「おまえら、また襲ってくるとか止めろよ」
 が見せた笑みに乗って、誠一も柔いで言った。
「怪我をしたりするだけで悲しむ奴が居る、そういう奴も居るって事だけは、忘れないでおくれ、よ」
 2人を残して、トナカイが駆けるを始めた。プレゼントの中身は青龍鱗ですよ〜、というサンタを乗せて、トナカイさんはガラクの村を目指しました。とさ。