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少年探偵の失敗

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少年探偵の失敗

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23. 一日目 発着場 午後三時二分

 僕は稽古場をでて、発着場に撮影にきた。
 美沙ちゃんのお船がある船着場と、京子ちゃんの電車の駅は、隣り合った場所、というかほとんどくっついてて、同じ場所にある。
 本人同士もいつもくっいてて、すごく仲がいい。僕と流ちゃんの、時には、サーチアンドデストロイの仁義なき関係とは、大違いだ。
 さっき、ナガンちゃんに、午前中、屋敷で起こったことをだいたい見せてもらった。
 やっぱり、泥棒も探偵も家に入れちゃいけない人種だと、僕はつくづく思う。
 人ん家で、勝手になにをドタバタしてるんだ。麻美くん五人に増殖とか、ふざけてるよね。犯人は、おまえら全員だ、って話ですよ。まったく。
「維新姉さん。やっぱりきたんやね」
 八才の少女の僕を、ここまで堅苦しい呼び方をするのは、この家では、彼しかいない。
「王ちゃん。君は、六才なんだし、もっと、年相応に子供らしくした方が、みんなに受け入れられるキャラクターになる、と思うんだよね。たしかに君は、数学の才能があるのかもしれないけど、お姉ちゃんは、小難しいことばかり言ってる君の将来が心配よ」
 姉らしく、小言を言ってやった。
「そうやって、思ってもない言葉をTPOに合わせて使い分ける維新の軽さが、オレの理屈っぽさを育てたんや。いまさら、説教してもムダじゃ」
 僕の弟のかわい王太郎は、すごく背が小さくて、いつも小学校の制服を着ている外見以外は、子供らしいところがあんまりない。
 目玉焼きが好きだとか、身長をのばすために牛乳をよく飲むとか、かわいく思えるところもないではないけど、勉強、特に数学が得意で学校にも行かず(成績がよいので、行かなくても問題ないらしい)、十四年上の京子ちゃんの恋人を気取って、いつもヘンな方言混じりで、小難しいことを言っている。
 一番の問題は、こいつが実の姉の僕をバカだと思ってることだ。
 クソガキ。
「オレは、京子さんの電車に乗るけん。彼女が心配だかんな。維新は、どうする気じゃ?」
「僕は、部屋で恋人が待ってるから、ここの撮影がすんだら、館へ帰るよ」
「サイコ・キラーの歩不やろ。オレや京子さんや他の家族の評判もあるんやから、おまえら駆け落ちしたり、放火したり、心中したりすなよ」
「待ってるのは、歩不くんじゃないよ。お色気たっぷりの、セクシーダイナマイトな十才くらいの女の子」
「誰や、それ」
「今朝、出会った。会って二分で僕のファンになったんだ。なんでもしてくれる」
「・・・おまえ、嘘がヘタんなったら、とりえなしやぞ。そんなやつ、おるわけないわ」
 それが、いるから困るんだ。弟よ。
「ん。けんど、今朝、オレもそんなんあったな。姉弟だからか。おまえと目にみえんなにかでつながっとるのは、オレは認めとうない」
 僕もだ。
「ケイラさーん」
 王ちゃんが呼ぶと、褐色の肌で目鼻立ちのはっきりした美人のお姉さんが、頭は良さそうだけど性格は…そうな少年と、連れ立ってやってきた。
「王ちゃん。二人も引っかけたのか」
「違うわ。それにな。ケイラさんは、ああ見えて男やぞ。一緒におるのは、パートナーのマラッタじゃ」
「本当に奇遇だ。僕の新恋人も女で、僕と同性なんだ」
「オレには、京子さんちゅうれっきとした人がおるんやで、ケイラさんは、お友達や。ケイラさん。こいつ、オレの姉の維新。バカで嘘つきやから、気ぃつけてな」
「そうなんだあ。自分は、ケイラ・ジェシータ。維新ちゃん。よろしくね」
 ケイラさん。いい人そうですが、まずは、王ちゃんの紹介を疑って欲しいです。
「俺は、マラッタ・ナイフィード。かわい維新。はじめまして」
「お二人とも、王ちゃんと、京子ちゃんの電車に乗るんですか?」
「うん。ここまできたんだし、体験できることはしないと・・・・・・もったいないよね。いま、ここの家は、なにかと物騒だから、自分が側にいれば、王ちゃんと京子さんを助けてあげられるかもしれないし」
「正直、俺は、子供の恋に興味はないんだがな。ケイラがこう言ってるので、しかたなくってとこだ」
 二人とも王ちゃんには、もったいないお人です。
「本人がいないんで、ここだけの話ですけど、いま行方不明中の、僕の弟の王太郎って不良少年は、
「おい。姉。いらんこと言うな。ケイラさんは、今朝、オレに会った時にな。
 。なか光観の館だんいなゃじ者いし怪は達分自とえ、はちにんこ
 。ねくしろよ、んさ郎太王に特いし嬉ばれれくてし接く良仲んう
 って言ってくれたんや。維新には、マネできんやろ」
 そんなの、誰がマネできるんだ。
「王ちゃん。みるからに賢そうだったから、こういうの喜ぶかな、って思って」
 いい人すぎる。ケイラさんは、きれいな心の持ち主だ。
「ケイラさん。いくら優しくても、僕の姉や弟に、パズルや言葉遊びを与えると、狂喜乱舞、増長、暴走してろくなことになりませんよ」
「おまえのその言葉がいらんのや。もう、おまえ、あっち行けや。あ。それからな、維新姉さん。オレと京子さんに、けったいなことすなよ。ええな」
「王ちゃんは、お姉ちゃんが苦手なの?」
「うん。この事件であいつ死んだら、ケイラさんが、オレの、男の姉になってくれてもええで」
 。かきべくお、にずさらは、み怨のこ。郎太王