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少年探偵の失敗

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少年探偵の失敗

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18. 一日目 エーテル館 阿久の部屋 午前十時三十二分

V:どうにか、阿久先生のところにたどり着いたあたしたちを待っていたのは、レンさん、クライブさん、ルナちゃんと、永遠の眠りについた阿久先生でした。

 レン・オズワルド。クライブ・アイザック。ルナ・シルバーバーグ。三人が見つめる寝台には、朝、館に到着した一行に挨拶をした、顎鬚を生やした中年の医師、阿久路井門が、盟友のオサム医師と同じように苦悶の表情を浮かべ、横たわっていた。
「教導団第一師団少尉のクレア・シュミットだ。医学の心得がある。阿久医師を見させてもらうぞ」
 伊月たちと共に部屋に来たクレアは、阿久に近づき、容態を診察した。
 すぐにクレアは、他のみんなの方をむいて首を横に振る。
「オサム医師と同じ症状だと思う」
「鍵を握る人って、やっぱり先に殺されちゃうのねぇ。もっと、急いで会いに来るんだったわぁ〜。さあ、かわい家の秘密の真相までたどりつけるかしら」
 はしゃいだ様子の伊月の隣で、ラシェルはひたすらにメモを取っている。
「ミーは、まるでサスペンス劇場に出演しているみたいデース」
「ジョセフ。いまさら、なにを言ってるです。阿久路井門さんがこうなってしまったのは、悲しいですけど、これからが名探偵、美央の腕のみせどころです。くるとくんは、そこでゆっくり見てればいいです」
 あまね、くるとの横にいた赤羽美央とパートナーの吸血鬼ジョセフ・テイラーは、さっそく室内の調査を開始した。
「俺がこの部屋に着いた時には、ドアには鍵がかかっていた」
 レンが、死体を発見した時の状況を話しだす。
「ノックをすると、男の声で、少し待ってくれ、と言われた。それで俺は、廊下で待っていたわけだ」
「そこへ俺とルナが来たんだよ。レンさんに話しを聞いて一緒に廊下に立ってたんだ」
「クー兄と私は、えつ子さんの部屋から、ここへ来たんだよ」
 ルナは怯えているらしく、クライブの服の裾をぎゅっとつかんでいる。
「しばらく待っても、なにも言ってこなかったんで、俺は、入っていいか、と尋ねたんだ。すると、中から、まだだ、と返事がきた」
「そしたら、レンさんが、急にドアに体当たりしたんで、びっくりしたぜ」
「二度目の声も男だったが、最初のものとは違っていた。後は、経験とカンだ。室内が異常な状況なのは想像できた。間違っていれば、あやまればいいと思ってな、だが、遅かった」
「ドアが壊れたら、ベットにその人が・・・・・・」
 ルナが震える指を阿久にむける。
「自殺かな。俺には、わかんねぇよ」
 悔しそうにクライブは、唇を歪める。
「どうする。阿久氏をこのままにして家捜しするのも、なんだろう」
「そうねぇ。困ったわ〜」
「ノンちゃんは、使用人さんたちを呼んでこようかなぁ。ラシェルちゃん、迷うとヤだから、ついてきてよ」
「お嬢。行ってあげても、よろしいでしょうか?」
 ラシェルに聞かれ、伊月は鷹揚に手を振った。
「いいわよ〜。ラシェルちゃんもノンちゃんも、いってらっしゃあい。なにかおもしろいお話でも、仕入れてきてくれると、うれしいわ。私は、楽しそうなとこにいるから、適当に探してねぇ」
「畏まりました」
「いってきまーす」
 ラシェルとノゥンは部屋をでてゆく。
「解剖するわけにもいかないし、くわしくはわからないが、しかし、あなたちの話が事実だとすると、この死体は冷たすぎる」
 クレアは、手袋をつけ、阿久の体のあちこちを調べている。
「あまね。私たちが、この屋敷に着いたのは何時だったか?」
「バスが着いたのが、八時半くらいだったですかね。だいたい二時間前です」
「私の見たところ、彼はそれ以前に死んでいるぞ」
「ぅんふふふ〜。こういうの期待してたのよ〜。楽しいわねぇ〜」
「それってさ、俺の聞いた声も、レンさんがその前に聞いた声も、この人のじゃ、ないってことか」
「クー兄。怖いよう」
 クレアの説明に、レンは顎の先に指をあて、しばらく黙ってから、
「まずは、ここに来たみんなが俺とクライブ、ルナを疑ってないのを感謝する。捜査する者としては、どうかと思うがな。いまのクレアの検死が正確だとして、俺たちが声を聞いた人間は、どこに行った。なぜ、ここにいたんだろうな」
「それには、私がお答えします。その人たちは、ここに行ったんです」
 他の者が話している間、マイペースに部屋の調査をしていた美央は、ベットの下から這い出してきて、にっこり笑った。
「秘密の通路。見つけました。ジョセフが潜入調査中です」
「みなさん、早くきてクダサーイ。ミー、一人は、困りマース」