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少年探偵の失敗

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少年探偵の失敗

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2. 一日目 撮影セット 午前十時二十一分

 鼓動がまだ普通に戻らない。
 やばいよね、これ。
「いっくん。どこにいたの。お弁当、もう頼んだ?」
「禁断の場所にいました。いちおう。弁当も、飲み物も、シミも全部まだです」
「よかった。弁当三つ追加して欲しいんだ。それから」
 僕は、次郎兄に小型カメラを手渡された。
「本編とは別に、メイキング撮って。あの学生さんたちにもできるだけ焦点あててさ。ウチの現場に限らず、継承式まで、かわい家にいる人、起きることをいっくんの視点で撮ってよ」
「僕、一人でですか?」
「学生さんたちは、きみみたいな年下の女の子が一人で行ったほうが、心を許してくれると思うけどね」
「えー、兄上監督様。現場の雑用もこなしながら、メイキングも撮影するというのは、僕一人じゃ」
「それなら、デュパンもつける」
「にゃ。にゃにゃ」
 たまたま通りかかった黒猫のデュパンが、次郎兄の手招きに応じて、僕らのところへやってきた。
 こいつは、ペットというわけではないんだけど、勝手にかわい家の敷地に住み着いていて、神出鬼没、自由気ままに暮らしている優雅な猫様だ。
「これでいっくんのステータス、かわいさ+5だから。猫と少女で、がんばってね。じゃ」
 物腰は柔らかいけど、なんだかんだ言って、いつも身勝手な天才若手映画監督の次郎兄は、行ってしまった。
「デュパンは、僕とくるのか、ニャ?」
「ニャ」
 歩不くんは、とっくにどっかへ消えてて、僕と猫は歩きだす。かわい家の夜明けにむかって。
 きっと。