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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

リアクション


・試作型兵器探索隊


 地下二階。外周。
 中央は吹き抜けとなっており、光術の光を放てばそこにはベルトコンベアのようなものが存在する事が分かる。
 ここは量産型機甲化兵の倉庫であると同時に、人工機晶石を用いた試作型兵器――魔力融合型デバイスの製造・量産を行っていた場所のようだ。
「さあ、開きましたよ」
 島村 幸(しまむら・さち)がピッキングによって、外周の扉のロックを解除する。
「それでは皆さん、実験(オペレーション)開始と致しましょう。試作型兵器及び人工機晶石の確保・保護を優先しなさい」
 一歩足を踏み入れる幸達。
 彼女がリーダーを務めるS×S×Labは研究集団だ。古代の、それも公の記録に存在しないロストテクノロジーともなれば、大いに興味をそそられる事だろう。
 扉の中は、通路が伸びていた。人が横に五、六人は並んでも問題ないほどの広さである。
「待って、みんな」
 遠野 歌菜(とおの・かな)が警戒する。
「この先に何かあるのは確かだけど、罠がありそう」
 ただ通路が広がっているだけで、機甲化兵の姿はない。それがかえって怪しかった。
「センサーか何かじゃねぇのかい? 防衛システムみたいなのがありそうだ」
 東條 カガチ(とうじょう・かがち)が言う。
「だけど、向こうまで一本道みたいなんだよねぇ。どっちにしたって進むしかなさそうだよ〜」
 佐々良 縁(ささら・よすが)もまた、先に何かがあるのを感じ取っている。
「避けては通れなさそうですね。いいでしょう、皆さん戦闘準備はいいですか?」
 幸が笑みを浮かべる。
「邪魔するものは全て殲滅します。私達に向かって来たことを後悔させてあげます……くくくっあははは」
 全員が態勢を整えるのを幸が確認する。
「姉様、まずは何が来るか確かめませんと」
 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)が、アンデッドのスケルトンを先行させる。何か罠にかかったらすぐに分かるようにだ。
 一メートルもスケルトンが進むことなく、警報が鳴り響く。
 パッと急に照明が付き、周囲の壁がスライドする。否、壁だと思っていた場所は、シャッターだった。
 それが上がると、中から機甲化兵が出てき――

 ガガガガガガガ!!

 集中砲火、スケルトンが木端微塵になる。現れた機甲化兵は、一体や二体ではきかなかった。
「随分な歓迎やな」
 七枷 陣(ななかせ・じん)が声を漏らす。その数、八。対しSSLのメンバーは十三。もし彼らが平均的な強さだったならば、五分ともたずに全滅したことだろう。
「さっちゃん達は奥の試作型兵器の確保を優先してくれ。何、ちっとくらいなら時間も稼げるさ」
 カガチが機甲化兵に向かって轟雷閃を放つ。
「了解です。縁、歌菜、リュース、三人は最奥へ。陣、遙遠は援護を」
 幸が指示を出す。
「陣殿、遙遠殿、手伝いましょう」
 彼女のパートナー、ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)が転経杖を回す。
「来よ、我が友に御力を!」
 魔力強化である。
「ヨウくん、いくで!」
「はい!」
 タイミングを合わせてのサンダーブラスト。機甲化兵全体へと電撃を打ち込む。
「そっちの構造はお見通しだっての!!」
『研究所』において、機甲化兵に関する「第一次計画」の情報を解読したのは陣だ。その中には、機甲化兵の設計図の図面のようなものも存在した。
 彼にとっては、既に「研究済み」の敵なのだ。
「御主人様、遙遠様、援護します!」
 陣の契約者である小尾田 真奈(おびた・まな)が彼らをサポートするように、弾幕援護を行う。
 それはあくまで撹乱であり、動きを鈍らせた機甲化兵には容赦なく轟雷閃を叩き込んでいく。
 その間に、リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)はバーストダッシュで駆け抜ける。機甲化兵に遠当てをしつつ、軽身功。その頭上を越えていく。
「抜かせてはくれませんかッ!」
 だが、彼に対し銃撃型の機甲化兵による一斉射撃が迫る。
「兄様!」
 彼のパートナーであるシーナ・アマング(しーな・あまんぐ)が氷術を使用。一時的に彼の前に氷の壁を形成し、攻撃を防ぐ。
「ぐ……」
 しかし、何発かは食らってしまう。
「リュース兄さん!」
「このくらい、大丈夫です」
 とはいえ、さすがに敵の数が多過ぎる。
「スパーク! いくよ!」
「おう!」
 パートナーのスパーク・ヘルムズ(すぱーく・へるむず)と共に、歌菜は迎撃に移行する。
「纏めて……吹き飛べーっっ!!」
「纏めて……吹き飛びやがれっっ!!」
 歌菜が則天去私を、スパークが等活地獄で眼前に迫っていた機甲化兵に渾身の一撃を加える。
「今のうちに!」
 リュース、シーナと共に彼女達が奥の間へと急ぐ。
「シーナ、怪我はねーか?」
「ええ、なんとか……」
 後ろを振り返る。未だに機甲化兵は動きを止めていない。
「ほんと、キリがないねぇ」
 縁がスプレーショットで機甲化兵達を牽制する。
「幸姐ぇ達、すぐ戻るから。それまで持ちこたえて!」
 リュース達と共に、奥へ走っていく。
「陣、遙遠。遠距離攻撃を防ぐために、射撃型を重点的に狙って下さい」
 幸が指示を出す。
「射撃型が六体、後の二体が近接型ですか……分が悪いですね」
「幸!!」
 そのうちの近接型が幸の眼前に迫っていた。その一体にガートナが轟雷閃を叩き込む。
「貴女を傷付けはしません」
 狙いは間接。
 近接――斧を手にした機体の右腕の関節部に転経杖を突き刺し、内部からショートさせようと試みる。
「重火器類は使わせませんよ」
 遙遠がブリザードで射撃型の発射口を塞ぐ。
「陣さん!」
 次いで、陣がサンダーブラストを発動する。今度は転経杖に加えて、禁じられた言葉による魔力増幅だ。
「ぶっ壊れろ!!」
 射撃型全体に食らわせた後、手近な一体にバーストダッシュで近付き、今度は直接機体の中に雷術を流し込んだ。
 ボン、と音を立て、機甲化兵が煙りを上げる。
「どうや!」
 これで一体。
 だが、まだ七体残っている。
「御主人様!!」
 さらに悪い事に、陣に向かって機甲化兵の砲弾が飛んで来ていた。
 真奈の弾幕援護、そして遙遠のブリザードによってなんとか彼にぶつかる前にそれを撃ち落とすことには成功するが――
「――ぐあッ!」
 傍らの近接型の槍に斬られてしまう。
「ガートナ、陣にヒールを!」
 すぐに回復を施す。
「こいつはちっとマズいねぇ……」
 口元を歪ますカガチ。度重なる魔法や技で、精神力も限界が近付いていた。
「まかせて!」
 カガチの契約者の柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)が驚きの歌で、精神力の回復を図る。

 ちょうどこの時に、リュース達が奥の間に辿り着いた。