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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

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終章 一


 ヒラニプラ。
「駄目だったか……」
 ミューレリアが依頼した人工機晶石の分析結果は、「分からない」というものだった。
 通常の機晶石とそう変わらない出力数値は示したものの、どういった原理で作られたかは分からなかった。
 ただし、彼女の持ち帰った銃型の試作型兵器のカートリッジに何かを組み込む場所があったらしい。そこに人工機晶石がぴったり埋まったため、それを彼女に渡したのである。
(この先、何かに使えればいいな)

            * * *

「見つからなかった……」
 イルミンスール側の遺跡。卓也ルーメイの二人は、黒ドレスの女を探しに潜ったものの、発見する事は出来ていない。
 それもそのはずである。こちらの遺跡にはいないのだから。
「おそらく、別の遺跡の方に行ったのだろう。もしくは、それ自体が嘘だったとかな」
『研究所』の顛末を知っていれば、生存の可能性を信じる方が難しい。
「仕方ない、また調べ直さなきゃ」

            * * *

 空京大学。
「そんな……」
 ひなは、ジャスパーに全てを伝えた。
『研究所』で起こった事、そこで知った事を。
「だけどジェネシスさんは、封印しなければいけなかった子達を案じていたのですっ。でなかれば娘達を救ってほしい、なんて言わないですよ」
 ジャスパーは何事かを考えているようだ。
「でも、わたしはみんなの今を知らない」
「これから知ればいいのですよー」
 そんな時、ひなの下に連絡が入った。緋音からだった。内容は、ヘリオドール・アハトを保護したという旨のものだった。
「お友達が見つかったですよ」
「本当?」
「本当ですっ。今はまだいろいろあるけど、事態に収拾ついたら、みんなで遊びに行きましょーね」
「え、でも……」
 戸惑い気味のジャスパー。
「私はもう友達になったと思ってますけど、ジャスパーとしてはどうです〜?」
 名前がないのもあれなので、彼女をそのままジャスパーと呼ぶ事にした。
「うん、友達……だね」
 お互いに笑顔を向ける。
 
 ガシャン。

 そんな中、部屋にあった花瓶が風で倒れて床に落ちた。
「あらら、風が強くなってきちゃいましたねー」
「閉める?」
 窓を静かに閉めた。
 雲行きも怪しくなりそうな、そんな空だった。

            * * *
 
 遺跡の地上にて。
「先生、騙してたんですか?」
 虚空を見つめ、リヴァルトは呟く。
「十年以上も何とぼけたんだよ!!!!」
 叫ぶしかなかった。
 自分の親代わりであり、学問を教わり、パラミタへ渡る時にいろいろと手伝ってくれた人が。
 ジェネシス・ワーズワースという因果の始まりであり、自分の家族を殺した人物であるとは。
 信じたくはない。だが、それでも今の彼からは何かが抜け落ちてしまった。
 魔力が暴発し、地下四階のあの部屋はどうなったのか分からない。
 だが、司城は出てこなかった。
「リヴァルトさん……」
 掛ける言葉なんて見つからない。
 おそらく、彼もまだ混乱しているはずだ。

 その時である。

 大荒野と森の境目。
 そこに佇む人影があった。
 背丈はそれほど高くはない。だが、肩までより少し短い銀色の髪。そして、無貌の仮面がその人物を物語っていた。
「ノイン、なのか?」
 刀真が問う。だが、その人影は何も答えない。
 ただ、じっと彼らを見つめているだけだ。

 まるで、何かを告げるように。

 しばらくすると背を向け、消えた。
 テレポートしたのだろう。
 顔は見ていない。だが、体型からすれば『研究所』にいた時に比べて幼くなっている、そんな気がした。
 
 誰もいなくなった荒野からイルミンスールの森の中へと、一陣の突風が吹いた。
 まるでそれは、何かが去っていったそれを告げるかのようであった。




――2020年5月某日 PASD調査報告





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