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灰色の涙

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灰色の涙

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・外部からの援護


「なかなか厳しいですね」
 真人達は倒した直後に現れた残りの機甲化兵・改の掃討に当たっている。
「こっちだぜ!」
 トーマがマシンピストルを放ちながら、機甲化兵・改のセンサーに入るように動く。そうする事で、牽制と陽動を同時に行っているのだ。
 彼がそうやって動いている間に、真人と白き詩篇がサンダーブラストで応戦する。
 狙いは全部、これまでと同じだ。
 今度の敵は火力が高い。両腕に内臓されているのは火炎放射器と、機銃だ。
「攻撃を繰り出す瞬間、もしくはし終えた直後が狙い目ですね」
 銃口までは、分厚い装甲で覆われているわけではない。だからこそ、敵の動きをよく観察しながら、攻撃のチャンスを窺う。
 敵は四体、うち二体を彼らが相手取る事にした。
 射撃型が一体に、刀を持った近接型が一体。
「火炎放射は、これでどうじゃ?」
 銃口を凍らせてしまえば、そう簡単には撃てない。白き詩篇が射撃型の銃口に向けて氷術を放つ。
 当然、それを溶かそうと敵は炎を放とうとする。だが、塞がれているのにも関わらず、無理に攻撃をしようとすればどうなるか――
 炎が逆流する。とはいえ、その火力で装甲が溶けることはない。だが、火炎放射が元々の威力を失ったのは確かだ。
 そこに、真人がサンダーブラストを放つ。銃口から直接敵機内部に電流を流し込む。その威力は、禁じられた言葉によって底上げされている。
 敵の動きが停止する。その間に、今度は雷術でとどめを刺す。内部に流れた電撃が人工機晶石を破壊した。
 近接型に至っては、武器を持つ腕の関節に電撃を流し込みさえすればいい。そうして麻痺させた後に叩く。
 これによって、近接型も始末した。

 別の二体と戦っているのは、ランツェレットと彼女のパートナーだ。
「さすがにそろそろ厳しくなってきますね」
 目の前にいるのは剣を構えた二体の近接型だ。
 ミーレスが弾幕援護を行い、射撃中心で牽制を行う。その上でランツェレットがサンダーブラストを放つ。
 二体の敵のうち、弱ったと思われる方へとシャロットが轟雷閃を叩き込む。そして関節部に対してはそのままランスバレストだ。
 二人が遠距離からの攻撃を行い、それで生まれた隙を突いて、一人が接近して攻撃を叩き込む。
 だが、前の戦いもあり、かなり消耗をしている。この二体を倒すくらいまではいけそうではあるが、さらなる敵の援軍が来るとなれば、もちそうにない。
「ドラージュ!」
 ランツェレットが契約者であるシュペール・ドラージュ(しゅぺーる・どらーじゅ)の名前をコールする。これが合図だった。
 ドラージュは全長十八メートルの機晶姫であり、アーク内部に彼女達と入る事は出来ない。そのため、外からアークを狙う事にしたのだ。
 だが、彼女のコールに反し、アークには何の異変も起きない。
「……おかしいですね」
 さすがに飛空戦艦とはいえ、ミサイル攻撃はまだしも、加速ブースターで巨体が突っ込んできたら何らかの影響があるはずである。
 しかし、そうはならない理由がある。
「とにかく、まずは目の前のこれを何とかしませんと」
 先程までと同じ要領で、機甲化兵・改に対し攻撃を加えていくランツェレット達。

            * * *

「外からいくら攻撃しようが、このアークのシールドを破れるものか」
 中央制御室で、アントウォールトが呟く。
 魔導力連動システムによる戦艦のシールドは、同等の威力を持つものでなければ破れない。下手にそれに触れれば、逆に消滅するくらいのものだ。
「さて、さすがに随分と集まってきたな」
 ドラージュの攻撃は、空振りに終わった。そもそも艦に触れる事すら敵わなかったのである。
 だが、彼以外にも、外から攻めようとしたものが現れた。
 ロザリンドとアレンが呼び寄せた、援軍である。
「いくら来ようと同じ事だ」
 基盤を操作するアントウォールト。
「消え失せろ」
 次の瞬間、艦から全包囲に魔導レーザーが放たれた。上空から攻め込もうとする援軍の飛空挺達が次々と地に墜ちていく。
「おっと……そろそろここに到着する頃か」
「アントウォールト様」
 彼に対し、口を開いたのは東園寺 雄軒(とうえんじ・ゆうけん)だ。
「司城 征は生け捕りにするのですか? それとも、殺してしまって構わないのですか?」
「捕縛だ。だが、やむを得ない場合は殺しても構わない。頭さえあれば記憶は奪える」
 雄軒に告げるアントウォールト。
「どうやら、征の連れている連中はなかなかやるらしい――お前に力をやろう」
 そのままの状態では、雄軒一人でPASDを抑えるのは難しい。アントウォールトは彼にシステムの魔力の一部を付与した。
 さらに、
「そちらの機晶姫の性能も上げてやろう」
 バルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)を一時的にではあるが、強化した。それによって、二人は試作型兵器一つとは渡り合えるくらいにはなる。
 そして、中央制御室に新たな人影が現れた。
「扉の前の連中はどうした?」
「事情を話したら、通してくれましたよ。なんとか……ですが」
 睡蓮だった。彼女はアントゥオールトを倒すために乗り込んだわけではなかった。最も、表向きはそうではあったのだが。
「……単刀直入に言います。協力させて下さい。私は……知りたいんです」
 彼女はワーズワースの知識を自分も得たいということを告げた。そして、万が一の事態に陥った場合、その一部を自分に与えて欲しいということを。
「もし私が倒されるような事があるなら、お前達二人にくれてやる」
 雄軒と睡蓮の二人に共通していたのは、知識欲だ。そのため、自分が敗れるような事があれば、二人にその知識を継がせようというのだ。
「だがそうはならないだろう。協力すれば、空京を消滅させた後に多少なら教えてやらぬ事もない。どうだ?」
 それが真意かは分からないが、概ね知識については保障された。
 アントウォールトは新たな協力者を得て、PASDを迎え撃つ。

「さあ、来い。そして自分の無知と無力を恥じて沈むがいい」