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【ろくりんぴっく】貫け! 君の想い!

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【ろくりんぴっく】貫け! 君の想い!

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第3章


 競技も中盤に差し掛かった頃、応援合戦が始まった。
 湖の上ではまだまだ戦いが続いており、キャンディスの実況は相変わらず白熱(?)している。
 応援用の台は、応援出来る部分は意外と湖面スレスレになっている。
 しかし、その下にはしっかりと空間があり、待機したり、色々と操作したりするスペースが十分に作られている。


 応援は東からだ。
「ホイップと一緒に応援出来て嬉しいですわ」
 ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)が参戦している。
「うん! 私も!」
 言われたホイップはかなり嬉しそうである。
 そんなやりとりを丸い台の下で終えると、静麻から指示が入った。
「そろそろ出番だ。しっかりと応援してこいよ!」
 ホイップ達は皆、笑顔で頷く。
 ホイップ達は奈落から舞台へと上がっていく。
 台の上に観客からの注目が集まったところで、静麻が舞台の上にスモークを焚いてホイップ達を隠した。
「簡易更衣室になります。こちらで着替えを」
 スモークの中でそう叫んだのはクリュティだ。
 スモークで舞台の上が隠れると速やかにテントを展開したのだ。
 本人はメモリープロジェクターで姿を隠している。
「衣装が準備出来たでござる! 手早く着替えるでござるよ!」
 テントの中へと保長が衣装を放り投げた。
 着替える人は中へと入り、急いで衣装を着替える。
「……私の分まであるなんて……もうこうなったらヤケクソです! 全力で用意された衣装で応援させて頂きます!!」
 舞台の上に上がっていたレイナは、自分がまさか衣装を着ることになるとは思っていなかったらしく、かなり凹んでいたが、腹を決めたようだ。
 テントは幾つかあるので、1人1つに近い形で着替える事が出来た。
 様子を確認した、静麻はクリュティと保長にスモークを晴らす事を告げる。
 指示を聞いた、2人は急いでテントと来ていた服を一緒に回収した。
 ファンによってスモークが完全に吹き飛ばされると、着替えはすっかり終わり、まさかここにテントがあったとは思われないだろう。
 みんなが着替えたのはホイップのいつもの服だ。
 色違いになっている点以外は一緒の作り。
 ティセラまでホイップと同じ衣装だ。
 ティセラのは白を基調としたものとなっている。

 東側の観客席ではルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)が用意しておいた、応援用のメガホンやタオルを観客に回していた。
「ふふ、やはり元気なホイップさんが一番ですわね」
 妹を見る姉の心境でそう呟く。
「さー、皆様、盛り上げていきますわよー!」
 メガホン等が行き渡るのを確認すると、ルディは客席に向かって叫んだ。
「声出すのとかー、ちょータリーんですけどー。別にこんなに頑張って応援しなくてもいいんじゃね?」
「そうそう! 一生懸命な姿が可愛いとか思ったら大間違いだっつーの」
 ほとんどの人は賛同して、一緒にやろうとしていたのだが、若くて小麦色の肌をした女性2人がそんな事を言っていた。
「あらあら……ルディお姉さんが、げぼ……こほん、お説教して差し上げます」
「ちょっ――」
「何すっ――」
 それを見たルディは2人を無理矢理引っ張り、ちょっと暗いところへと向かっていったのだった。
 その後、少しだけ悲鳴が聞こえたかもしれないが、応援の声に全てはかき消されたのだった。

「こーれからー! イーストシャンバラ、略してイーシャンの応援をー、始めるーー!!」
 ホイップの横でマイクも使わず、応援旗を持ったままそう叫んだのは藍澤 黎(あいざわ・れい)だ。
 黎はホイップと同じ衣装ではなく、白いハチマキ、白いたすき、白手袋、白ランとなっている。
 普段から白い制服を着用しているので、まったく違和感がない。
「おーっす!」
 黎の声の後に、全員が声を出した。
「フレーーー! フレーーーーー! イー・シャ・ン!」
 黎が腹から声を出す。
「フレッ! フレッ! イー・シャ・ン! 頑張れ、頑張れイー・シャ・ン!」
 その後をホイップ達全員が声を揃えて言う。
 水色を基調としたホイップ衣装を着たヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は太鼓を叩き、場を盛り上げる。
(みんなかがやいてて、かっこいいです〜)
 競技参加者と応援、観客を見て、ヴァーナーはそう感じていた。
 ヴァーナーが前半の太鼓を終えると、カッチン 和子(かっちん・かずこ)へとバチを手渡し、交代した。
「あとはおねがいします〜」
「任せてっ!」
 リズムよく、太鼓をたたいて、応援の声が締まる。
「みんな! もっと声出せよな!!!」
 頭に白いハチマキをした雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が大きな声で、もっともっとと煽る。
 黎の体からは大量の汗が出ていたが、それを感じさせないくらい、気合いの入った声がガンガン響く。
 それが終わると、前に出てきたのは今まで後ろで大声を出していたポンポンを持ったメンバーだ。
 黒のホイップ衣装を着た由宇がテンポの早い幸せの歌の演奏を始める。
 それに合わせて、チアリーディングをしていくのだ。
「さすがティセラは呑み込みが早いね!」
「当然ですわ。これくらい出来なくては十二星華の名がすたりますから」
 ハイキックのコツを教えた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がティセラに声を掛けると、そんな返答が返ってきた。
 美羽の衣装は赤いチア衣装を着ている。
「ホイムゥは…………ほら、こんな感じだよ」
「えっと……う、うん……でも……なんか恥ずかしいよ」
「何言ってるの! 恥ずかしがってやってたら、応援にならないよ! みんなが頑張ってるんだもん、私達も頑張らないと!」
「うん! そうだね!」
 美羽の言葉で目が覚めたのか、恥ずかしさは少し残っているものの、ホイップはしっかりと足を上げ応援をする。
「楽しいものだな。さ、もっと足を上げるのだ。どうせ見られても大丈夫な物を履いているだろう?」
 美羽と同じ赤いチア衣装を着たカナタが鼓舞をする。
 確かに、衣装の下には皆、見られても大丈夫なように工夫をしている。
 ホイップは一分丈のスパッツ、ティセラも同じく、美羽とカナタはアンダースコートを履いている。
 他の人達も色々と着ているようだ。
「全力で戦っている人達を全力で応援するのは気持ちがいいですよね」
 下に水着を着て、黄色いホイップ衣装を着ているレイナが良い笑顔で言った。
「ホイップと同じ服を着て、応援が出来るなんて愉しいですぅ〜」
 淡い菫色ホイップ衣装に身を包んだメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)がポンポンをリズム良く振っていく。
「僕はこの衣装……ちょっと恥ずかしいかも。ま、ちゃんとやることに変わりは無いんだけれど」
 濃紺ホイップ衣装を着ているのはセシリア・ライト(せしりあ・らいと)だ。
「みんな〜、頑張ってね〜」
 白銀ホイップ衣装はフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)
 あまり足をあげる事はせずに手に持ったポンポンをゆらゆらと振って、声を出している。
 由宇の演奏が終わると、東の応援全てが終了した。


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 今度は西の応援なのだが……東とは違い、人数がかなり少ない。
 メンバーはホイップと美羽とレイナと久世 沙幸(くぜ・さゆき)だ。
 一度、東の応援団がどいてから、静麻がスモークを出し、それと共にメンバーが台にせり上がった。
 スモークをファンで吹き飛ばすと、先ほどと同じ衣装の面々が現れた。
 沙幸は黒と赤のホイップ衣装を着てポンポンを手にしている。
 美羽もなのだが、ホイップのスカートの丈より短くしているようだ。
「人数は少ないけど、その分、一生懸命応援するからねーーー!」
 沙幸はマイクを持ち、競技参加者と客席に向かって叫んだ。
 その声に応えるように、客席から歓声が上がる。
 4人が定位置に着いたのを確認して、静麻は音楽を流した。
 曲はろくりんぴっくの公式ソングだが、ちょっとロックテイストに仕上がっている。
 その曲に合わせて、ポンポンふりふり、足を上げ上げ、華麗にダンスを披露していく。
 一曲終ると、西の応援はそこで終了となった。
 ここから先は全員が台に上がり、それぞれが応援していくこととなる。


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 熱くるしく実況中継をしているキャンディスの元にお客さんが現れた。
「よっ! 遊びにきたぞ!」
 キャンディスの肩の上に乗っかったのはボビン・セイ(ぼびん・せい)だ。
 どこが肩なのかいまいち分かりづらい体型ではあるが、肩の上だ。
「いらっしゃいネ」
 キャンディスは肩にボビンを乗せたまま、実況を再開したのだった。