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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第12章 姉妹のように絶叫めぐり

「まずはジェットコースターに行くわよ!」
「(まったく、イブの日に女同士って・・・)」
 大はしゃぎする五十嵐 理沙(いがらし・りさ)の傍らで、セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)はわびしく見えるんじゃないかとため息をつく。
「イヤっていったらどうしますの?」
「うん?乗るね、乗りたいのね?」
「そんなこと言ってませんわ」
「有事の時の訓練よ、こういうのは慣れが大事よ」
 後ずさりする彼女の手を掴み、ジェットコースターの方へ引っ張る。
「きゃぁああぁ!何ですの、あれは!!」
 セレスティアは凄まじいスピードで走ってくジェットコースターを見上げて顔を蒼白させる。
「(速さというよりもう、あれを見ただけで危険度全開ですわ)」
 ありえない方向に曲がったレールを見上げ、逃避エネルギーを発動したい気分でいっぱいだった。
「さぁ、もう乗ったからには逃げられないわよ♪」
「(こここここ怖い、怖いですわぁあ)」
 楽しそうに言う理沙だったがその一方、絶叫が苦手な彼女はぶるぶると震えて声が出なくなってしまっている。
「(2人で可愛く悲鳴をあげつつ、ぎゅっとハグしあって耐えるのがいいんじゃないの)」
 理沙は自分を抱きしめて妄想を始める。
「(はっ、違う違う!)」
 我に返った彼女は両手で妄想空間を消し去る。
「ゴ〜♪」
 走り出した瞬間、理沙はノリノリで声を上げる。
 一瞬でスタートのランプが消え、時速80はもう超えているんじゃないかと思うスピードで、ジェットコースターはレールの上を走る。
「ぃいいいやぁあああ!!」
 肩の安全装置をぎゅっと掴み、激急な角度の螺旋のレールを爆走するそれにセレスティアが絶叫する。
「レールはどこにあるのかしら?あら、真下にくねっているのね♪ひきゃぁああ〜」
 途中でレールが途切れたかのように視界から見えなくなり、逆ゼットに近いレールを見て可愛らしく悲鳴を上げる。
「(怖いのは自分だけじゃないのね)」
 叫び声を上げる理沙の方を見て、少しだけほっとし怖さがやわらぐ。
「後ろに戻っていくんですの?きゃぁあぁ〜っ!」
 先端の方へつき数秒止まったジェットコースターが、魔物に引きずられるかのように猛スピードで終着点へ戻っていく。
「(絶叫系は遊園地での醍醐味なのよね。こっそりセレスの顔を撮っちゃおうと)」
 半無きになっているセレスティアを、パシャリと携帯のカメラで撮る。
「おっと、しまっておかなきゃ。手が滑って落としたら台無しだものね」
 落とさないように携帯をカバンへしまう。
「はぁ〜・・・今度こど大人しい乗り物に・・・」
「やっぱりここはゴンドラ・謎のアドベンチャーね」
 ぐったりしている彼女に対して、理沙はまたもや絶叫系を選択する。
「(来年は恋人と来たいですわ)」
 その呟きに出来れば絶叫は避けたいと、セレスティアが心の中で言う。
 結局、また彼女に引きずられるように連れて行かれてしまう。
「あれれ?何だかイメージと違うわね」
 絶叫というわりにはゴンドラはゆったりと進み、不服そうな顔をして理沙は首を傾げる。
「私はこっちの方がいいです」
 実は大人しい乗り物なんだと思いセレスティアはほっとする。
「氷の森ってキレイですわね。こういうまったりとしたアトラクションなら大歓迎ですわ。ぴーちくぱーちくツヴィッチャーン、ツヴィッチャーン〜♪」
 従業員の漕ぎ手が教えてくれたように、のんびりと歌う。
「あら、小鳥が・・・こっちいらっしゃい〜♪こっちに・・・・・・来ないでぇえええ!!」
 パササッとコマドリが彼女の方へ飛んできたかと思うと、その鳥のソリットビジョンが避けて中から巨大な怪鳥が姿を現す。
「いやぁああぁ、そっちは激流ですわ。ゴンドラが沈んでしまいますわよ!」
「遠慮なくそっちに進んじゃって♪」
「何をいっているんですの?沈みますわよ、確実に!ていうか安全装置ってこれですの!?全然っ安全じゃありませんわっ」
 漕ぎ手に余計なことを言わないでというふうに理沙へ抗議の声を上げる。
「この漕ぎ手さんはプロなのよ?毎日こんな激流と戦ってんだから大丈夫♪それにジェットコースターよりかはゆっくりじゃないの」
「あれと比べれても分かりませんわっ。水上バイク並にありますわよ!?」
「小型飛空艇もその形になるから、慣れているわよね」
「何言っているんですの、それとは比較になりませんわ。命綱にもならなそうな綱1本が安全装置ってそういうことですの!?」
「それも大丈夫♪だって落ちる前に漕ぎ手さんが助けてくれるもの」
 こんなところでアレなフラグがあるわけないじゃないと、理沙は楽しそうに笑う。
「ちょっとぉおお、だからってこれはないんじゃないんですのっ」
「おぉ〜お嬢ちゃんたち、楽しんでいるようだな」
「もしかして私も含まれてしますのっ」
「そうだけど、違うのかい?」
「はぁあい?これが楽しいように見えますの!?」
 セレスティアは必死に縄にしがみつき、泣きながら激怒する。
「もう少し流れが速いところへ行こうか」
「これ以上の速さはご遠慮願いたいですわ」
「なぁに、ただのサプライズだ♪」
「ウフフッ、サプラーイズありがとう〜っ」
 2人の漕ぎ手と理沙がグッと親指を立てる。
「おっとー。この先はあの怪鳥から逃げるんじゃないぜ。見ろっ、あのツララを避けながら進むんだ」
「あぁ、あれがゴンドラに刺さったらアウトだな」
「きゃははは〜、スリルゥウ最高♪」
 スドォオンッ、ゴォオオンッ。
 轟音を立てて天井のツララが落ちる。
「これはもうゴンドラじゃありませんわっ。バイクですわよ、バイク!」
「さぁ、もうすぐ出口だぞ。右か左、どっちへ行く!?」
「左よ!」
 セレスティアの意見を聞かず勝手に選んでしまう。
「どうしてそっちがいいんだ?」
「危険な香りがするからよ♪」
「右、右の方がいいですわ」
「もう選択しちゃったから無理よ」
「そんなぁあ。ひきゃぁあぁああっ!!!」
 すっとーんと垂直の滝へ、ゴンドラが滑り落ちていく。
「んもぅ。無理ですわ・・・」
 ゴンドラから降りたセレスティアはレインコートを従業員へ返すと、ついにベンチへばってしまった。
「えぇえ。んー仕方ないなぁ、じゃあショップで何か買っていこう」
 理沙はドアを開けてお土産屋のショップへ入る。
「氷の恋人があるわ。中は恋人が寄り添った形の、ソーダ味の飴が入っているのね。それを買っていこうかしら?」
「私もそれにしますわ、パッケージがキレイですわ」
 セレスティアも夜景の中心でカップルが抱きしめ合う缶を手に取る。
「あ、写真・・・あぁゆうのばかりだと無理ですわね」
 ショップの外に出たセレスティアがしょんぼりと俯く。
「それならライトアップされた夜景をバックに撮ったらいいじゃないの?」
「えぇそうしますわ」
 クリーム色に淡く輝く大きな観覧車と、花の形をしたコーヒーカップが少し入るように、2人で記念写真を撮った。