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リアクション
★ ★ ★
「それでは、第一回、パラミタ大陸悪役会議を始めるよ」
森の中の広場で、ジープ・ケネス(じーぷ・けねす)が集まった者たちにむかって言った。
『悪役? はん、この石の塊がか?』
【SOUND ONLY 01】と書かれた石像から若い男の声が響いた。広場には、十二枚のモノリスがナンバリングされて宙に浮かんでいた。その中央には鷽がいる。
『いいじゃない。誰だか分からなくて』
『まあな。どだい、我々が一つ所に集まるのは無理というもの』
『どうでもいいが、今私は戦闘中で忙しいんだが』
『いいじゃない、面白ければ』
『面白いか? だいたい、ここに列席するには値しない小物も含まれているようだが』
『あっさり撃退された過去の遺物には言われたくないわね』
『現役だからっていいってわけじゃないでしょが。私のことも忘れないでほしいものだわ』
『だったら、あんたも寝返っちゃえばいいじゃない』
『まったく節操のない。もっと悪役としてのポリシーをだなあ』
『ポリシーも何も、私は確信犯なんだから、悪役じゃないわよ、厳密には』
『まあまあ、そんなに喧嘩することはないぞ。いずれ、バラミタの全土はわしの物になるんだからな』
『まあ、そう思い込んでいるがいい。裏では、お前たちの知らないことが着実に進んでいるのだからな』
『何よ、その御都合主義。あんたなんか辺境でくすぶってればいいのよ』
『そういうお前こそ、実は**でしたが多すぎるぞ』
『伏線よ』
『誰も知らんわ!』
「ええと、あのー、みなさん、喧嘩はしないでよね。とりあえず、ひとまず休憩しようよね」
あわてて、ジープ・ケネスが出席者をなだめた。
★ ★ ★
「それでは、第一回正義の味方会議を始めます」
すぐ近くでは、リーフ・ケネス(りーふ・けねす)が別の会議を主催していた。
こちらも、出席者はモノリス状態なので、誰が誰だか分からない。
『えー、私出席してもいいんでしょうか。一度死んじゃってるんですけど』
『生き返ればいいのよ。問題ないわ』
『封印されたままはありですか?』
『どうして、いきなり不幸自慢になるのです。わたくしのように、華やかにしていらっしゃいな』
『ヒーローって言われても、いつも勝手に駆り出されているだけだし……』
『負けなければいいのだよ。無理に勝とうとするのは愚かなことだ』
『まあ、要請があれば、我々はどこへでもでかけていく用意が常にある』
『おう。必要があれば覚醒だろうと何だろうとやってやるぜ』
『とにかく、今は対エリュシオン対策で手一杯だからのう。気を抜くと、生き馬の目を抜かれるぞ』
『エリュシオンだけではないでありんす。マホロバ、カナン、さらにはティルナノーグと問題は山積でありんす』
『イコンでなんとかする!』
『いや、対外政策は、高度な政治的判断をしてだなあ……』
『デコトラでぶっ飛ばせばいいのよ』
『いったいあんた誰だよ』
『なあに、すべての力を結集すれば勝てぬ物などありはしないさ』
「ええっと、ちょっと休憩しましょう」
リーフ・ケネスが休憩を申し出た。
その間に、ジープ・ケネスの所に相談しに行く。
「なんだか、訳が分からないんだよね」
「うーん、まさか、全部鷽の自作自演と言うことはないだろうなあ」
「いや、ありえるかも。だいたい、どうしてこうなった?」
「さあ」
有意義な話が両陣営から聞けると思ってのことだったが、方法がまずかった。しょせんは鷽の舌先三寸でどうにでもなる会話である。信憑性は皆無だ。
『おい、いつまで待たせるんだ』
『そうよ、いったいいつまで……。ややや、あんたは……』
司会の二人が遅いので様子を見に来た双方の出席者が、あろうことか鉢合わせしてしまった。
『貴様は……。ここであったが百年目!』
『ほーう、たった百年かな。みみっちい』
『なんだと! ところで、どちら様でしたでしょうか?』
『貴様に名乗る名などない!』
『ふん』
ペチッ。
『ああ、叩いたな! パートナーにも叩かれたことないのに』
『うちなんて、一日一回叩かれてるわよ』
「ああ、みなさん落ち着いてよね」
「喧嘩はやめて、喧嘩は……」
あわてて間に入るジープ・ケネスとリーフ・ケネスを無視して、モノリスが互いにぶつかり合って喧嘩を始めた。実にシュールな光景である。
傍目から見たら滑稽な戦いも、だんだんと激しさをましていった。あちこちで、因縁の戦いが勃発しているようだが、結局のところ単なるどつきあい以上にはならない。とはいえ、あちこちでモノリスが砕ける音が鳴り響く。
「うそでごんす!」
突然、鷽の悲鳴が聞こえた。倒れたモノリスの下敷きになったらしい。
次の瞬間、すべてのモノリスが灰となって風で消えていった。
後には、広場でポツンと立ちすくむジープ・ケネスとリーフ・ケネスが取り残されただけであった。
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