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WahnsinnigWelt…行く手を阻み拐かす森

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第8章 不死を求めて何が悪い?永遠の欲望

「お菓子みたいな匂いがするの」
「―・・・・・・お譲、幻影を見せる香りです・・・。よろしければ・・・・・・自分と、・・・お人形遊びでもどうですか・・・?」
 心を惑わす甘い香りでハツネが幻影を見てしまわないよう、香りから気を逸らそうと東郷 新兵衛(とうごう・しんべえ)が話しかける。
「うん。遊びたい」
 彼に小さな人形をもらい、2人で遊び始める。
「遊ぶのもいいが、ちゃんとついて来いよ。逸れたら見つけられねぇかもしれないんだぞ?」
 人形遊びに夢中になりすぎて逸れないよう、鍬次郎が2人を注意する。
「分かっている・・・・・・。お譲を・・・、迷子にしたりはしない・・・・・・」
 新兵衛が物静かな口調で頷く。
「霧の向こうに誰かいるな。あれは・・・魔女か?」
「その着物姿、鍬次郎で間違いないわね」
「あぁ、そうだ」
「―・・・2人がお待ちかねよ、行きましょう」
 魔女は深い霧の中へ進み、鍬次郎たちを案内する。
「少し霧が出てきたから。迷ってしまわないように、私が向かいに来たの」
「ほぅ。気が効くじゃねぇか」
「ここよ」
 ギィイイッ。
 鉄製のドアを開け、彼らを研究室の中へ案内する。
「よぉ、来たか、早くこっち来いよ」
 ソファーに座っている王天君が鍬次郎たちを手招きする。
「生徒たちが研究所を探しているようだが安心しろ。俺たちが護ってやるからよ」
「ククッ、それはありがたいな。で、例の物は持ってきたか?」
「これだな?魔女から預かっていたUSBメモリーだ」
「ありがとよ。これで研究が進められるぜ!金光聖母、魔女たちにさっさと命令して作業を開始しな」
 彼からUSBを受け取った王天君は金光聖母に手渡し、魔科学の研究を進めさせる。
「あっあの、ハツネちゃんと一緒に警護してもいいんですけど。できれば・・・その、不老不死の非検体にしてもらえませんか?」
「そういや、そんな約束してたよな。いいぜ、奥のラボに行きな」
 遠慮がちにおどおどとした口調でいう葛葉の申し出をすんなり受け入れる。
「―・・・ありがとうございます!あと・・・出来れば、僕の中にいる・・・“もう1人のボク”・・・彼と同一になれれば・・・。僕はこんな弱い僕じゃなくて、もっと強い僕として生きていけるんじゃないかなって・・・。魔科学では、肉体強化以外にもそういう精神的な部分も改造してくれるんですか・・・?」
「その固体の人格だけなら可能かもな」
「本当ですか!?やったー!嬉しいなっ」
「まず、不老不死化させてから試してみようぜ?一時的になれるだけだが、一番古いデータの方が安全だな。不の感情を糧にして生きるやつはまだ実験段階だしなっ」
「まだ長時間、不老不死になっていられるわけじゃないんですね?」
「途中で邪魔が入っちまったしな。人格の操作はやったことねぇから、失敗しちまうリスクもあるんだ。もし何かあっても、不老不死になっておけば安全だろ?」
「確かにそうですね・・・。分かりました、ではお願いしますね!」
「おうっ。魔女ども、葛葉をあの部屋に連れて行けっ」
 奥の扉を親指でぐいっと指し、魔女に命令して葛葉を不老不死の実験室へ連れて行かせる。
「で、そっちのは誰だ?見たことねぇ顔だな」
「安心しろ、俺たちの協力者だ」
「はーい!初めまして♪この度、ボクの大親友で悪友のハツネちゃんと鍬次郎さんに協力を頼まれて、参上いたしました「デューンサーカス団」団長の横倉右天だよ。仲良くしてね、十天君の皆様」
 鍬次郎に紹介してもらった右天は紳士のように丁寧に挨拶する。
「さて、ボクからは魔科学の研究のお手伝いを呼んであげるよ」
 何もなかった手の中からパッと取り出した真っ白なシルクの布を床へ敷く。
「イッツ・ア・マジッ〜〜ク!」
 布をつまみ床から除けると、アルカ・アグニッシュ(あるか・あぐにっしゅ)が現れた。
「という訳で、うちのアルカさんを使ってあげてくれないかな?」
「・・・右天様の命により悪魔の博識と生物学の知識を元に、魔科学研究の手伝いをさせていただきます。・・・どうぞ、ご自由に命令を」
「ほぅ・・・。じゃあ不老不死の研究を手伝ってもらおうか?金光聖母がラボに入るからあいつの指示に従え。非検体は葛葉を使いな」
「かしこまりました」
 研究を手伝おうと奥のラボへ入っていく。
「ボクたちは研究者の皆様や、金光聖母様の護衛をするよ」
 右天がニコッと爽やかな笑みを浮かべる。
「おう、頼んだぞ!」
 護衛しにラボへ入る彼からハツネへ視線を移す。
「ハツネは何をやってるんだ?」
「お姉ちゃんたちを狙うやつが来るっていうから。準備してるの・・・」
「へぇ〜。ハツネはイイ子だなー」
 自分たちを護るためにトラップを仕掛けているハツネの頭を撫でる。
「王天君をお姉ちゃんを護るために、頑張るの」
 褒められたハツネは嬉しそうにニタッと笑う。



「不老不死か、クククッ。誰でもなれるんだったら、手に入れなきゃ損だよな!」
 ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は完全不死を欲し、イルミンスールの森の中で研究所を探す。
「ここに魔女がいるのですね・・・」
 両手をわきわきとさせ、シメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)は目をギラつかせる。
「魔法学校の生徒ならこの際、誰でもいいですよね。研究所にたどりつくことが目的ですし」
 こそこそと彼を追いかけ、茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)たちはゆっくりと進む。
「ねぇ、衿栖・・・。もしもだけど、味方の生徒が誰も乗り込まなかったらどうするつもり?」
 小さな声音で茅野瀬 朱里(ちのせ・あかり)がぼそっと言う。
「―・・・えっ?」
「他の人が研究所の様子を見ているだけで。入り込む時とズレちゃったら、フライングもいいとこよ」
「あー・・・確かにそうかもしれませんね」
「んもぅ、どうしてそこまで考えておかないのよ。警備が厳しくなっちゃったり、研究所をお引越しされたら困るじゃないの」
「うぅ、それは困りますっ」
 耳が痛くなってしまいそうなほどの小言を朱里に言われてしまう。
「―・・・じゃあ、こうしましょう!衿栖たち2人だけで来たことにしませんか?金光聖母を引きつける名目で、見張りの数を少し減らしてあげましょう♪」
「捕縛のフラグしか見えないんだけど。ここまで来たら、それしかないわね・・・」
 予期せぬ方向転換に朱里は疲れたようにため息をつく。
「ついたっぽいですよ」
「わぁ〜。トレジャーセンスじゃなくって、まるで強欲センサーが働いているみたいね」
「朱里、さりげに酷いです」
 衿栖が傍らから、ぼそっと小声で呟く。
「十天君の術は今のところ発動していませんね」
「金光聖母は研究所の中にいるっぽいわね。どうするの?」
「うーん・・・今仕掛けても、研究所にいる生徒に反撃されてこっちがヤバくなりますし・・・。あ、魔女たちに紛れて研究所へ入ろうとしている人がいますよっ」
 草むらの陰からじっと様子を窺っている衿栖の視線の先に、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が現れた。
「誰、あなた。魔女じゃないみたいね?」
「おやばれてしまったか。まぁ隠しているつもりもないが。不老不死の研究に興味があってな、協力させてもらえないか?」
「―・・・・・・向こう側に、関わったことのないやつのようだが・・・」
 スナイパーライフルのスコープを覗き込んだ新兵衛は、敵対者かどうか確認する。
「しかし・・・、今までのこともある・・・。一応・・・・・・、お譲に携帯で連絡をしよう・・・」
 研究室に入ろうとしている3人の外見を覚えてハツネに連絡する。
「新兵衛から電話が来たみたい・・・。もしもし・・・?うん・・・聞いてみる。王天君のお姉ちゃん、外に3人・・・不老不死の研究をしたい子がいるんだって。おかっぱの女の人と・・・、ちょっと柄の悪そうな男の人と・・・、不健康そうな悪魔がいるみたいなの」
 彼から聞いた研究志願者の特徴をハツネが王天君に教える。
「へぇ・・・。全部知らねぇやつだが。城で生徒どもが入り込んだらしいしな、とりえず3人ともグレーゾンな」
「うん、簡単に信用しちゃうのよくないの・・・。よくないこと考えてる人だったら、ハツネが壊してあげる」
「よろしく頼むな、ハツネ。腹へってるだろ?フルーツケーキしかねぇけど。夜まで我慢してくれな?」
「ありがとう・・・」
 ニタッと笑いもらったフルーツケーキを食べる。
「お仕事するから・・・、ちょっと隠れるね」
 王天君を護るように光学迷彩で姿を隠し、彼女の傍に控える。



 ゲドーたちはそれぞれ別のラボに案内され、不老不死の研究を始める。
「俺様も不老不死に興味があってな、もっとも俺様の目指してるのは完全不死だがな。ま、それはいいか。アンタらの研究のお手伝いをしたいのさ。急ぎだったんで大したモンは用意できなかったが・・・」
「どんな意味の不死なの?」
「フッ、知りたいか?なら教えてやろう!」
 興味津々な顔をする魔女にゲドーは得意そうに説明をしてやる。
「老化しないっていう点は同じだが。これにはな、魔力は利用しないんだ。死は・・・蘇生でなく、完全不死を解除しなきゃ死ぬことはない。んで、完全不死になったら元人間ってことだな、俺様の場合は」
「魔力を使わなくていいなら楽よね♪」
「それでは、金光聖母さんを呼んでくるわ」

 ゲドーとシメオンを残し、2人の魔女が金光聖母を呼びに行った。
「ちょっとこっちを手伝ってくれないかしら?」
「はい、今行きます。葛葉さん、少し待っててくださいね」
「あっ、はい!」
「アルカさん。私が戻ってくる間に、そこの部品の組み立てをお願いします」
「分かりました」
 彼女が部屋から出て行くとアルカは言われた通りに、透明な容器の上に丸いが空いた銀色の板を置きネジで止める。
 その穴に漏斗のような部品をセットし、ドーム型の蓋をかぱっと被せて溶接する。
「チューブはそれぞれの機械に繋げるみたいですね・・・」
 薬品や魔力の液体を流す細いチューブをセットする。
 アルカが魔道具を組み立て入る間、金光聖母は2人目の非検体がいるラボへ入る。
「2人の非検体ですか・・・」
「研究を手伝う代わり・・・といっちゃあなんだが、研究成果の実験を俺様にしてもらいたいのよ。まぁ、リスクは承知。もっとも、失敗したらナラカ人になって化けて出るかもしれねぇけどな。だひゃははは。あ、勿論成功したら実験データはもらうぜぇ?」
「あなたの態度次第ですね」
 欲のために自ら非検体となるゲドーに冷静な口調で言う。
「(ずいぶんとドライな女だな・・・)」
 さらっと短い言葉で返され、思わず絶句する。
「錬金術の知識はいらないのか?」
「賢者の石を作るわけじゃありませんから、今のところいりませんね。では、お持ちいただいた物を、遠慮なく使わせていただきます」
 ナラカの水を水色の器に注ぎ、悪霊を込めた死体の血を抜き取り混ぜる。
「後は・・・脳と心臓の部位をよく混ぜるんです・・・」
「それで完成なのか?」
「霊に憑かれることはあっても、死ぬことはないと思います・・・たぶんですが」
 限りなくブラックに近いグレーカラーの液体をゲドーに差し出す。
「(水はともかく・・・、他は鉄分とか・・・のはず!)」
 息を止めてぐいっと飲み干した。
「特に変わった感じしねぇけど?」
「不死の実証方法はただ1つ、あなたの身体を傷つけること・・・」
「そりゃそうだな。―・・・ぅぐっ!」
 ゲドーがナイフで皮膚を軽く裂いてみると、すぐさまスッ・・・と再生した。
「あなたの要望では無痛覚を希望なさっているように聞こえませんでしたので・・・。不死になって再生しても、傷を負った時の痛みを感じるんですよ」

「まぁ、その辺の指定はなんもしてねぇからな。ていうか完全不死になれたのか?」
「えぇ・・・。ですが、数時間だけ・・・ですね。魔力を加えてませんし。身体に材料を浸透させる言葉もかけていないのですからね」
「改良しなきゃいけねぇってことか」
 期限つきの完全不死を堂改良すべきか、ゲドーは髪をぐしぐしと掻きあげて考え込んだ。
「何か具合悪そうね?」
「ハァ・・・ハァ、大・・・丈夫・・・です。(しかし、なんと美しいのでしょう。魔女の魂というのは)」
 心配そうな顔で覗き込む魔女に対して、今すぐにでも彼女の魂をもぎ取ってやりたい欲望を必死に堪える。
「私の・・・心の神が・・・叫ぶのです」
 ゲドーを観察しようと背を向ける魔女へ寄り、ぬっと手を伸ばす。
「あなたの心を、魂を・・・奪えとね!!」
 ディテクトエビル邪気を察知され、魔女が彼の方へ振り返るのと同時に、その者の魂を素手で奪い取る。
 卑しき爪をズブッと深く突き立てる。
「クハハハハ!私は心教が救世主シメオン・カタストロフ!全ては心の神の命ずるままに!!」
「お前、こいつのパートナーなんでしょっ!?よくも私たちを騙したわね!」
 魂の美しさに見惚れている悪魔を指差し、ゲドーに向かって魔女が怒鳴り散らす。
「さぁ?俺様がここに来たのは完全不死になるためだ。シメオンは八つ裂きにするなり隙にしろ」
 自分の欲望を満たすためにゲドーは、あっさりとパートナーを見捨てる。
「あいつをぶっ殺せーー!!」
 1人の魔女が声を上げるとシメオンは慌ててラボから逃げ出す。
「待てっ、この野郎っ!!」
 ブチキレタ魔女はシメオンを追いまわし、手にしている箒で彼の頬をバシィイッと殴る。
「あぁあっ!!?」
 その衝撃でせっかく奪った魂を落とし、取りに行こうとすると魔女に阻まれてしまう。
 このままでは本当に殺されてしまうと思った彼は、研究所を飛び出し必死に逃げた。



「非検体のいる、向こうのラボではないのか?」
 ゲドーや葛葉がいるラボで研究させてくれないのか、大佐は少し不満そうに魔女に聞く。
「えぇ。そちらは最も信頼出来る者でないと入れないのよ」
「(ふむ、かなり警戒しているようだ。やはりそう簡単には、そっちに入れてはくれないか)」
 メガネのフレームのテンプルを指でつまみ、くいっと持ち上げる。
「魔科学関連の資料などがあったら見てみたいんだが?」
「んー・・・・・・。―・・・いいわよ。ただし、私たちが監視してるけどね?」
 しぶるように言うものの、監視つきで許可を出してやる。
「まぁ、それで構わない。(無警戒なわけはないか)」
 それも計算内のことだと資料室に入り読みふける。
「魔科学は魔力を結晶化することが出来るのか?ほぅ・・・材料として金属などに含ませる技術もあるのだな?」
 ぺらぺらとページを捲り熱心に読む。
「こっちのは魔術か?さすがにスキルの修練が必要のようだな。このページに書かれている文字は魔法じゃないみたいだが。それを言葉に出して読むと、魔科学で作った物に魔力を与えるのか?」
 読み飛ばさないように、行を指でなぞる。
「―・・・ドイツ語か。魔女に聞かないと読めそうにないな。中国語が含まれてないのが幸いか」
 資料に付箋をつけてテーブルに置く。
「ほぉ。身体再生の本もあるのか?命といっても、不死の再生の部類はだいぶ違うな・・・」
 死者の身体に他の者の魂を入れて動かす、外道の科学などが書かれている。
「そこの魔女、ゴースト兵に超再生能力を加えるどうだ?」
「あぁ〜。ちょうどいい死体がないのよね。無力なその辺のやつじゃ役に立たないって、金光聖母さんが言っていたわ」
「そういうものなのか?生前の身体能力が平凡だと、たいしたものは作れそうにないのだな」
「死体なら何でもいい、ってわけじゃないのよ」
「ふむ・・・。いきなり不のエネルギーだけを糧に生きる不老不死の実験を進めるより・・・。第1段階として倒された時に1回だけ、周囲から不のエネルギーを吸収して復活するのはどうだ?試すのは森にいるモルモットでも十分だしな」
 手近にある資料に目を通しつつ提案する。
「うーん・・・。邪魔しに向かっている連中がいるみたいだから。なるべく早く進めたいのよね」
「なるほどな、他の方法を考えるべきか・・・。あぁそれと今思いついたんだが、瀕死の仲間を取り込んで自身の力に出来る技術もよさそうだ。でも未熟な人がやってるので多分どこかで失敗か暴走するかもな」
「死にそうな仲間を取り込むのはちょっと却下ね」
「それは残念だな。(仲間意識は高いとはな・・・)」
 仲間は大切にしているのかと、意外な一面を見たように心の中で呟く。
「(それにしても、ずっと見張っている気か?)」
 不老不死を滅ぼすことは出来ないか、まずは不老不死について学んでいるのだが。
「(あまり考えると探知されてしまう危険性があるしな。さて、どうしたものか・・・)」
 考えることすらままならず、邪魔そうに魔女をちらりと見て小さく舌打ちをした。



「お待たせしました葛葉さん」
 ゲドーがいるラボを一旦離れ、葛葉を不老不死にしてやろうと金光聖母が戻ってきた。
「(ほぉお、よく見るといい女じゃないか!)」
 20代前半に見える落ち着いた外見の、金糸のロングヘアーの彼女をカフカが眺める。
「魔道具のセット、終わりました」
「ありがとうございます、アルカさん。魔力と薬品の配合をちょっとアレンジしてみてください」
「薬品の量を少し減らしてみます・・・」
「次は・・・魔道具に繋がっているチューブを、彼女の手足の静脈にセットするんです」
「はい・・・かしこまりました・・・。―・・・じっとしていてくださいね?」
 静かに頷くとアルカは点滴の針を刺す要領で、六芒星の陣の上に葛葉の静脈にセットする。
 Die Person, die in ewiger Zeit lebt. Der K’’orper, der weder die Krankheit noch den Schmerz hat. Ihr Leben, ohne es einfach zu sein.
 魔女たちがそう唱え始めると、チューブを伝って薬品と魔力の混ざった液体が葛葉の静脈へ流れ込む。
「フフフ・・・半日しかもちませんが、実験を進めていくのですから。十分な時間でしょう?」
 金光聖母はチューブを外してやり小さく笑う。
「ありがとうございます!まだ一時的だけど、嬉しいなぁ・・・」
 痛みを感じない不老不死の身体に、彼女は満足そうな顔をする。
「少しこの場をラスコットさんにお任せしますね」
「あんたはどこいくんだ?」
「私は右天さんと外の羽虫を退治しに参ります」
 それだけ言うと金光聖母は右天を連れて研究所から外へ出る。
「小娘ども・・・想定と違う状況に戸惑っているのでしょう?フフフッ、無策で来たのと等しいくらい愚かですね」
 衿栖の考えを見透かすよう、小ばかにしたように冷たい眼差しを向ける。
「残念ですけど。私が作ったゴーストは、本物のオメガが住んでいるとこへ放ちましたのでここにはいませんよ?」
「そうなんですか、それは残念ですね・・・」
「研究所の守りを強化するために、ゴーストをもっと増やしてもいいかもしれませんね?お前のような小娘ではなく、他の人をお迎えするために・・・です」
「(浅墓な考えって、ホント・・・笑えちゃうね♪)」
 金光聖母がそう言い終えた瞬間、右天がブラインドナイブスの襲撃を朱里にくらわす。
「ぁあっ!」
 背を蹴り飛ばされた朱里が草むらへ転ぶ。
「まさか金光聖母様が護衛もつけずに動くとでも思ったわけ?ほーんと笑えるね!」
 苦しそうに咳き込む彼女を見下ろして嘲笑う。
「ここは一旦、逃げるしかなさそうですねっ」
 朱里を助け起こした衿栖はそこから逃れようと走る。
「やっぱり魔女たちが追ってきましたね」
 ちらりと後ろを見ると金光聖母の命令で、森の中を見回りしていた魔女が2人を追いかけてくる。
「これで少し、外が手薄になると思うんですけど」
「おかげで朱里たちはピンチだけどね!(衿栖が何か考えていたほうだと、もっとピンチになっちゃいそうだけど)」
 衿栖の予定通りに進んだら今頃どんな目に遭わされていたか。
 考えたくもないと首をふるふると振る。
「ねぇ、こんな時に何してるの?」
「戻れるように、蛍光ペンを塗ったパンくずを落としているんですよ」
「まだチャレンジする気なのね・・・」
「アイシャルリターンですね!」
「リターンって・・・戻ってこれれば、だけどね」
 十分ピンチなのにさらに大変な状況を生み出されるかと思うと、朱里は悲しみのため息をついた。