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蛙の代わりに雨乞いを……?

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蛙の代わりに雨乞いを……?

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     ◆

 レキ、歩、カムイたちと丁度反対側の公園出入り口付近、黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)甲斐 英虎(かい・ひでとら)とそのパートナーたちであるユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)ミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)リゼルヴィア・アーネスト(りぜるゔぃあ・あーねすと)と、甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)が歩いている。
「やっぱこんな暑い日にはアイスに限るよな!」
英虎は手に持ったアイスキャンディを舐めながら、そんな事を言った。
「いや、まだ早いだろ…アイス食うのは」
 竜斗は苦笑しながら隣に歩く英虎を見やる。と、公園の奥の方で、何やら人だかりを見つける。
「あれ、なんでしょうね」
 どうやらユリナもその人だかりを見つけたらしく、指を指しながら一同に疑問を投げかけた。
「何々っ!? うわぁ…ほんとだ。もしかしてこれからお祭り? お祭りだったらボク行きたいっ!」
 きゃっきゃしながらユリナのすぐ後ろを歩いていたリゼルヴィアが飛び跳ねながら言う。
「お祭り…にしては、ちょっと季節外れじゃないですか?」
「アイスキャンディを今の内から食べている英虎殿の手前、そういう行事があっても不思議ではない気がするが…」
「そうですわよね」
 腕を組んで考え込むミリーネに対し、何処かおかしげな表情のユキノが肯定した。が、そこで英虎が何かを見つける。群がる人だかりの中、何かを見つけた。
「あれ…って、もしかして南條さんじゃないか?」
「ん? あれ、ほんどだよ。でもなんだってあんなところで集まってんだ?」
「とりあえず行ってみて、何をなさってるか聞いてみたらどうです?」
 英虎と竜斗のやり取りに割って入ったユリナに対し、二人は「そうだな」と返事を返し、一路人だかりの方へと向かう。

     ◆

 傍から見れば雅羅たちの集団は随分と目を引く。何せ結構な人数の集団なのだから、それは当然と言えば当然だ。勿論近くを歩く人たちの注意が引かれる訳で、それは彼等、
ミルト・グリューブルム(みると・ぐりゅーぶるむ)たち四人も例外ではない。
公園内を歩く四人の中、先行するペルラ・クローネ(ぺるら・くろーね)南雲 アキ(なぐも・あき)が最初にその集団へと注意を向けた。
「あら? 今日って此処、お祭りでしたかしら」
「そんな話は全く聞いてないけどね。それに、もしそうだとしたらもっと人数集まってるんじゃないかしら?」
不思議そうな顔でその集団に目を向けている二人の横に、レオナ・バイオレット(れおな・ばいおれっと)がやってくる。
「それよりお二人、ミルトさんの姿がありませんけど」
「あら、あの子ったらいつの間にか逸れてしまったのかしら…困りましたわね」
 と、三人が再び前方に集まっている集団に目をやると、そこにミルトの姿を見つけた。
「えっと、あれ? あれミルト君じゃないかしら」
「あら」
「うん……そうですね。間違えないです」
 どうやら彼、ミルトは人だかりに若干の興味を持ったらしく、三人が話している間に彼等の近くに行ってしまったらしい。手にする紙パックのストローを口に咥え、ふと、蛙の横たわるベンチの前までやってきた。
「………………」
「………………」
 ぐったりはしているが意識のある蛙とミルトは、目があったまま暫くの沈黙に身を置く。
「……蛙?」
「……………」
 思わずそう呟く彼の口には、相変わらずストローが咥えられていた。が、どうやら蛙とすれば、その光景がどうにも怖かったらしい。隣で会話に意識を向けているラナロックの袖を懸命に掴もうとしていた。瞳にはこれでもかと言う程の涙を溜めながら。
「ミルト、貴方そんなところで何をしていますの?」
 と、突然背後から聞こえる声にミルトはやや驚いた様子で肩を竦める。声の主はペルラだった。
「勝手にどっか行ったら心配するじゃない」
「そうですよ。何処かに行きたいなら一言断ってから行くのをおすすめしますよ」
 彼女に続いて、今まで共に公園内を散歩していたアキ、レオナも姿を見せる。
「あら?」
 そこで初めて気づいたのか、ラナロックが四人と蛙の方を向く。
「あらあら、蛙さんったら、貴方も協力してくださる方たちにお声を?」
「うん?蛙さん?」
 ミルトを除く三人が、彼女の言葉に反応してミルトが見ていた蛙に目をやった。
「なんか、元気ないですね。この蛙」
「最近雨降りませんものねぇ」
「蛙にすれば参っちゃうわよね、最近の天候って」
 それぞれが蛙を見て述べると、ミルトがふと、何かに気付いた。
「この人だかりってもしかして、この蛙を助ける為に集まった人たち?」
「えぇ、そうですわ。あそこに見えるキモい方。あぁ、“ウォウルさん”と言うんですけどね。その方が、半ば強引に集めてきた心優しい方たちですわ」
 笑顔で答えるラナロック。
「き、キモいって……」
「そうかしら? 此処から見れば随分格好いい男の人なんだけどなぁ」
「アキ姉さん……」
 あまりにも彼女がさらっと述べた一言に反応する三人だがしかし、ミルトとしてはその辺りはどうでも良いらしく、同行してきた三人に尋ねた。
「ねぇねぇ、この蛙。僕たちも助ける手伝いしようよ。駄目?」
「…特に急ぎの予定、私にはありませんけど……」
 はて、と首を傾げながらアキ、レオナの方を向くペルラ。
「私たちもないわよねぇ?」
「……まぁ、ないって言えばないですけど。でも、結構これ、厄介だったりしそうな予感しますよ」
「んじゃ、いいじゃない」
「ね、姉さん!」
 レオナの心配をよそに、アキはやんわり笑ってミルトに答えた。
「わぁい!じゃあお姉さん、僕たちもこの蛙を助けるの手伝うよ!」
「本当ですの? それは嬉しいですわぁ」
 ぽん、と胸の前で手を叩いた彼女は、ウォウルを読んで三人を紹介する事にした。