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あなたもわたしもスパイごっこ

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あなたもわたしもスパイごっこ

リアクション

 美衣弛馬鈴大会運営本部。盗撮、痴漢、水着泥棒対策と称して、大会会場の周囲に塀を作って中に男が入れないようにした連中の根城。しかも自分たちは文字通りの高みの見物を決め込むために建てられた施設。一時的に看板が「美尉恥罵隷大会運営本部」と摩り替えられたこともあったが、いずれにせよ読みは同じのため大した意味は無い。
 要がアレックスに対して送りつけた指令は、ここにアイスを持ってくることだった。そしてその要を偶然発見した和泉絵梨奈もまた、この施設にいるということになる。
「へぇ、こんなのがあったのね」
「例年ここでビーチバレー大会が行われるって話だったはずなんだが、最近はやったのかどうかわかんねえけどな」
 何しろ地球からチーマーとそれにくっついてきたヤクザが荒野に殴り込みをかけに来たり、恐竜騎士団が暴れに来たりと、かと思えばかつてのシャンバラ宮殿が復活したり闇龍が大暴れしたりと、ビーチバレー大会を行うだけの余裕が無かったのだ。建物の屋上は爆破され、大会会場の塀の一部も破壊され、まともに整備もされないまま放置されていたこの場所に、要と絵梨奈はいるのだ。
「さて、どうせ2人以外に客なんていないんだろうし、さっさと入ってさっさと終わらせようぜ」
 そのままアレックスの先導で、5人は建物の中に入っていく。ちなみにここについた時点でまた暴れだしたシルフィスティはリカインによって止められていた……。

「おや、皆様お揃いで」
 運営本部屋上に上がった5人を迎えたのは、ジャックの指令者である絵梨奈――5人が来る前に水着から普段着に着替え済みである――だった。
「絵梨奈……、約束の氷とシロップとその他諸々、持ってきてやったぜ」
「お疲れ様です」
 絵梨奈から送られた労いの言葉はただそれだけだった。ジャックの方も結果に期待はしていなかったのか、その後は何も言わずにバーベキュー用の食材を用意し始めた。
「あら……、本当に食材持ってきたんですか」
「スーパーで何とか買い揃えたぜ。まあしばらく待ってなよ」
 言いながらいつの間にかその場に置かれていた簡易コンロをセッティングしていく。
「それにしても、この暑い時期によくもまあ……」
「すごく気持ちよさそうに寝てますね……」
 アレックスたちが来たことに気づいていないのか、要はいまだにビーチパラソルの下で眠り続けていた。あまり汗をかかない体質なのか、その顔に水分が張り付いた様子は無く、寝顔を覗き込むアレックスとコハクを驚かせていた。
「まあこのまま放っておくのもなんだし、起こしてやるか。おいこら要、起きろ。アイスが届いたぜ」
「ん〜……?」
 アレックスに体を揺すられ、要はもぞもぞと布団の中から身を起こした。
「……あ〜、おはよ、アレックス〜」
「おはよう、っつーかもう昼過ぎてんぞ。ほれ、運べっつってたアイスだ」
「お〜、ありがと〜!」
 アレックスが運んだクーラーバッグの中身を出すと、要はどこに持っていたのかスプーンを取り出して早速その蓋を開けようとした。
 だがその行動はまずシルフィスティの怒声によって遮られた。
「要ー! ここで会ったが百年目! 今度こそぶっとばーす!」
「ちょっとフィス姉さん、今はギャグシーンよ? またやられるのは目に見えてるんだから今日はやめておいた方がいいわよ、ね?」
「ううー!」
 出会ってから何度も要にやられているシルフィスティとしては、今すぐにでもこの場で要を殴り倒したいところだったが、羽交い絞めにして離さないリカインにそう言われてしまえば黙るしかなかった。
「……ねえアレックス、何であの人たちが来てるの?」
「途中でたまたま会ったんだよ。荒野をうろつくついでに一緒にここまで、ってな」
「ふ〜ん」
 シルフィスティに睨まれる立場である要の方はあまり感心を示さず、むしろ別のところからただよってくる匂いに気を取られ始めた。
「ん、何この肉とかが焼ける匂いは……」
「あ〜、そういえばバーベキューやるとか言ってたな」
「マジでっ!?」
 その言葉に要の目が完全に覚める。
 そのバーベキューを準備していたジャックは要が完全に起きたのを確認したのか、そちらに振り向き、
「おう、そっちのお嬢ちゃんも起きたか。絵梨奈の発案によるバーベキューだ。存分に楽しんでいけや」
「ジャックって、料理できたんですね……」
「まあ一応、な……」
 パートナーの驚いたのか驚いていないのかわからない感想を横目に、魔鎧の男は肉や野菜を焼き続けた。

 それからというもの、この場にいる全員の昼食としてジャック・メイルホッパーが調理したバーベキューと、アレックス・レイフィールドが運んできた「シャンバラ山羊のミルクアイスLLサイズ」を楽しんだのは言うまでもない。


高島 要――シャンバラ山羊のミルクアイス、さらにバーベキューを楽しみ、非常にご満悦。

アレックス・レイフィールド――指令それ自体はともかく、テープレコーダーの「爆発」はやめてもらいたいと要に頼み込んだ。結果、それは聞き入られる。

今回のミッション失敗者――
 その1・東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)(女装させるのに失敗)
 その2・日比谷 皐月(ひびや・さつき)(指令内容を勘違い)

伏見 明子(ふしみ・めいこ)――その後、静かに夏を乗り切れたかどうかは不明。

アズミラ・フォースター(あずみら・ふぉーすたー)――「指令」のあおりを受け、フラワシ使いになってしまう。

弥涼 総司(いすず・そうじ)セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)――そのアズミラからラッシュを食らい再起不能(リタイア)。

ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)――「名前を呼んではいけない缶詰」の食べすぎで体調を崩し再起不能(リタイア)。

久多 隆光(くた・たかみつ)――崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の鞭ラッシュを含め、色々やられた結果、数日間、再起不能(リタイア)。

宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)――何とか無事にアルバイトを終え、その後は自分も「スパイ小作戦ごっこ」を楽しんでいるらしい。

リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)七枷 陣(ななかせ・じん)――「指令」の影響で精神的にダメージを受け、しばらくの間、再起不能(リタイア)。

カリギュラ・ネベンテス(かりぎゅら・ねぺんてす)――アイスと「そうでないもの」を大量に食べさせられた結果、体調を崩し再起不能(リタイア)。

エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)――蒼空学園女子寮の皆様に袋叩きにされ再起不能(リタイア)。

コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)――チケットを無事に届けることに成功。

鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)――結局また迷子になったらしく、近くにいた誰かに道案内を受けた。

ミッション・ポッシブルゲーム(スパイ小作戦ごっこ)――またどこかの契約者がこれで遊んでいる。


TO BE CONTINUED…?

担当マスターより

▼担当マスター

名も無き詩人

▼マスターコメント

 参加者の皆様、お疲れ様でした。
「あなたもわたしもスパイごっこ」のリアクション、いかがでしたでしょうか。
 ま、またかなりの遅刻をしてしまいました……。本当に申し訳ございませんでした……。
 今回は早く書けると思ってたんだ……!

 さて今回は懐かしのテレビドラマを元ネタにしたゲームのシナリオをお届けいたしました。様々な指令、そして遂行時のアクション、楽しく読ませていただきました。思わず笑ってしまったものもたくさんありました。またこちらに余裕ができましたら、いつぞやの「イコン改造」と同じく、第2弾、第3弾とやるのもいいかもしれません。
 改めて申し上げておきますが、今回のリアクションで登場した「指令」の「処分方法」は、全てこのシナリオでのみ使えるものでございます。もちろん中には別のシナリオでも使えそうなものがありましたが、基本的には使用不可能とお思いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

 またアクションを確認中、装備欄にアクションで使用するアイテムやスキルが装備されていない方が何人かおられました。スキルや武装は「アクション投稿時」のものがそのまま反映され、その後で変更してもこちらには反映されません。
 アイテムの場合、私は時々服装欄に入っているものを使わせていただくことがありますが、これはマスターからのサービスに過ぎません。原則として、使用するアイテムは「武装」の方のみを使うことになっております。どのようなアイテムにせよ、購買で購入できるもの、キャラクエで入手できアイテムデータが存在するものを使う場合は、基本的に「武装欄」に装備させていただきますよう、なにとぞよろしくお願いいたします。

 それではまた縁がございましたら、別のシナリオにてお会いいたしましょう。
 お相手は「名も無き詩人」が担当させていただきました。