校長室
太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編
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キレイというよりも、だいぶファンシーな雰囲気のライブステージを、満足そうにラブが見上げる。 「フフフ…。ここで歌ったり、ダンスを踊って皆を楽しませてあげるわ!」 やはり“ファーストステージは譲れない!”という感じだろうか…。 「―…うーむ。だが、他の者たちは改札の方に集まっているようだぞ」 パートナーの暴走が止まらなくなるうちに、それらしい言葉を投げて止める。 「んもぅ、皆せっかちね。でも置き去りはいやっ。さっさと行くわよ、コア」 「急がないと出発してしまうかもしれないな」 「それはそうと…。ライブの日取りが決まったら、歌やふりつけを考えなきゃね!」 どんな歌を歌ってみようか、やっぱりふりつけは可愛い〜感じにしよう、なんて脳内で考えつつ改札へ走る。 「あんなに急いでどうしたんでしょう?」 駅舎の中へ向かうラブとコアの姿を見つけ、ヴァーナーが目をまん丸にする。 「後、10分くらいで出発するみたいですよ☆」 噴水の傍にいる少女を詩穂が呼ぶ。 「はーいですっ」 「ルカ、俺たちも行くぞ」 「もうちょっと見ていたかったのにっ」 なごり惜しそうにもう1度駅舎を携帯のカメラで撮り、ぱたぱたとダリルたちを追いかける。 「なんとか無事に完成したようだね」 魔列車に乗る前にじっくり眺めておこうとメシエも駅舎を見上げる。 「だけど、売店が何にもないんだよな…」 「それは後々かな?ぼやぼやしていると乗り遅れるかも…」 「今度は内装も担当してみるか」 「アダマンタイトの時以上に過酷そうだけど?」 きっと重労働に違うない、と苦笑いをする。 改札口の前では静香が当日限りの切符をむりょうで配っている。 それもレールの設置や駅舎などの建設、魔列車に関わった者たちのみにだ。 「まいちゃん、早く早くっ」 「急がなくても列車は逃げないわよ」 ため息をつきながらも舞香は嫌がる様子もなく、綾乃に手を引っ張られるがまま、魔列車に乗車する。 「普通のSLと雰囲気が違いますね。確か…これがエンジンだった気がします!」 「あのー…」 少女の後ろから、アゾートが遠慮がちな小さな声音で話しかける。 「これってどうやって動くんでしょうね!?」 しかし彼女はエンジンにぺたぺたと夢中で触れ、まったく聞いていない。 「ちょっといい…?」 「―……っ!綾乃、退いてほしいみたいよ」 アゾートの存在に気ついた舞香はパートナーに、エンジンから離れるように言う。 「あっ、ごめんなさいっ」 「燃料をまた入れていないんだよね。歩夢さん、外側の容器を外してここに詰めて」 シリンダー型のエンジンの蓋を開け、その中を指差す。 「そーっと置かなきゃね。ひゃー、冷たいっ」 容器を外すと氷の層が、歩夢の手をひんやりと冷やす。 加工した燃料を詰め込んで蓋を閉めると、淡い水色の層がだんだんと気化していく。 火の層の熱を抑えていた層が全て気化しきり、液体のビリジアン・アルジーを熱する。 ターコイズ色の炎がシリンダーの中を駆け回り、機晶石を徐々に燃やし始める。 綾乃が連れてきた車掌は見たこともない機械に戸惑いながらも、計器に触れて電源を探す。 何分か時間がかかってしまったが、電源を入れると眠りから覚めたかのように、魔列車内の明りが点った。 5000年前に埋没した魔列車が、再び地上を走り出すのはもう間もなく…。 御神楽夫妻は運転席の中で、列車が動き出す時を待つ。 その2人の姿に月夜がレンズを向ける。 「皆の力を得て、ここから御神楽環菜は鉄道王の一歩を踏み出した…で締めは決まり」 そう言いカメラのバッテリーが切れるまで、撮影を続ける。 「環菜、次はどこへレールを設置しますか?」 「皆と共にこのままどこまでも進んでみたい…と思ってみたりね」 「―…皆って?」 そこに俺は含まれているのでしょうか、と気になった陽太が小さな声音で言う。 「もちろん、私の隣にいてくれるわよね?」 「は…、はい!ずっと…一緒にいましょうね」 夫婦は互いに手を握り、窓へ顔を向けた。 レールはパラミタの地だけでなく、人々の絆をつないでゆき、どこまでも続いてゆくのだろう…。