リアクション
「すごおい…」
鉄道娘な綾乃は、その鉄道に対する情熱でエンジン室に入る許可を2度ももぎとった。魔列車がくるとわかっていたときから、ずっと環菜に頼み込んでおいたのだ。
入る前から心臓がどきどき、息苦しいくらいで、いざ入ってみるともう、まともな言葉も出なかった。
魔列車の動力がここにあるのだ、巨大でどっしりとして、ものすごい力を出して車両を牽引するくろがねの心臓だ。
やがて出発時間がせまって、彼女は運転士達に隅っこにおいやられ、その心臓が目覚めていく様を見つめていた。
正直彼女は彼らにとって邪魔である。が、その表情を見てしまっては、誰も邪険にはできないだろう、最後のぎりぎりまで運転士達は彼女を放っておいてくれた。背中に受ける視線は、どうしたってこっちの心をもくすぐるのだ。
「わー…わーっ!」
じわじわと音のボルテージがあがり、圧倒的な存在感が彼女のこころをもみくちゃにして、興奮にほっぺたが熱くなる、意味もなく叫んでしまいたくなるくらい、うれしい。
舞香があまりに遅いと思って呼びに来るまで、うまく足が動かなくて、もう少しいさせてあげたいけれどと舞香に笑いながら引きずられていくまで、心の底まで鉄道という存在にひたっていた。
「まいちゃん、すごかったよお…しあわせ…」
とろとろに表情のとろけた綾乃をあやして、舞香もしあわせになる。
「よかったわね、また来させてもらうといいわよ」
「…うん!」
幸せな気持ちを二人でぎゅっとする、でも舞香はしあわせだからこその苦笑を浮かべてこっそりと呟いた。
「でも、時々ちょっと妬けてしょうがないわ、うーん…」
「……」
「ティア、すごい?」
開通したばかりのレールとその上を魔列車が動く感動に、ぽかんとどうにも言葉も表情も作りかねているらしい3Dの妹を眺めて、フューラーは笑った。
ものをつくるということは、すごいことだ。それが実体のない情報や、感情であってさえ、存在が及ぼすものには形がある。
この子は、もうそれをしっかりと感じ取ることができる、子供がつかまり立ちをはじめて視線の高さを獲得したように、その心でものをとらえる幅を獲得している。
「きっとこれだけで驚いちゃいけない、この事業はまだまだ続くよ。あとで環菜さんに挨拶にいかなきゃね」
「うん、そうね。環菜さんは、こういうことをたくさんやってこられたんだわ」
この子は、これからももっとそのたくさんを思い知っていくんだろう、と兄は思った。
そうして、自分達を新しいところに連れて行ってくれる振動を、素直に感じていた。
皆様、お疲れ様です。
比良沙衛マスターと共同執筆いたしました按条境一です。
今回の、比良沙衛マスターの描写部分は、鉄道事業名やレールなどのシーンになります。
【進行度合い】
・ヴァイシャリー湖南駅まで
完成部分:レール、噴水、待合室、ライブステージ、駅舎(駅舎の中の店などは未完成です)
・燃料の加工
使用分のみ完了
【次回の進行】
ガイドのマスターコメントでお知らせします。
一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。