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リアクション
第12章 その温度は無限…アダマンタイトに限界なし!?story1
「むぅ〜、3000度くらいまでしか上がらないよー…」
リーズも取っ手から火術の気を炉に送ってみるが、なかなか溶解温度まで達することが出来ない。
「まっ、後はオレがやるからこっちにくれ」
「ちぇー…」
ものは試しと思いチャレンジしてみた結果…結局溶かせず、ちょっと残念そうに言う。
「つーかさ、お前仮にも彼氏に対してぞんざい過ぎね?何かの補正がかかったように、パネェんですけど」
「ぞんざいっていうか…彼氏だからこそ、こうやって気さくにやり取りしてるんじゃない♪…って言うか、天からネタが降ってくるんだからしょうがないじゃん」
「んなもん、降ってこさせるなっつーの」
「陣くんが降って困るのは、雨だけかと思ってたよ。にゃははは♪」
「残念やったな、今日は快晴や!」
ぞんざいな扱いに負けるものかと、空を指差して言う。
「他にいじるネタ、降ってこないかなー」
「ちょっ…おま、どんだけやっ!?」
いじり倒すつもりなんか、と声を上げる。
「だって陣くんの価値といったら、いじられるか…気づかないうちに突然いじられているか、とかしかないんだよ?」
今更何を言っているのやらとリーズが嘆息した。
「マジひでぇええ…」
こんなにドエスな女の子が、オレの彼女なはずが…と思ったが、現実はすでにカレカノなわけで、もはやどうしようもない。
「他の使用用途といったら炎関係くらいじゃん?」
「いや…この世界におけるネ申っていうか…。フウゥゥ…って威嚇してたり、偶に爪をシャキーンって伸ばしてるぬこって言うか…」
陣がこっちにきたのは、発掘現場にいったらおねこさまにそっくりな、猫サメの玩具になる予感しかないから、という理由もある。
「ま、海の中だし。打つ手ナシだよね。てーいうかさぁ、無闇に攻撃しなきゃ威嚇はされないんじゃ?されたらそれは、外敵と思われてるんだよ」
「攻撃したらそりゃ思われても仕方ないんやないか?」
「俺はニャ〜ンズの背中に乗せてもらった…」
グラキエスが通りすがりにぼそっと言う。
「ほ〜ら、動物も好意的な人なら懐くんだよー。それでも、陣くんはボールにされると思うよ」
「うっさい!オレだってな、ここで十分役に立ってるんやからなっ」
彼氏として威厳を取り戻そうと、不死鳥・アグニを召喚し、炉の取っ手をガッと握る。
取っ手を握っている影響からか、その手にアグニの力が注ぎ込まれ、自分の焔の気と混ざる。
灼熱の気がアダマンタイトへ注ぎ込まれ、あっとゆうまに溶かす。
「すごーい陣くんっ、10秒も経たないうちに溶けちゃってるんじゃない?」
「ふっふーん、これがオレの力だ!」
鼻高々といった態度を取り、ただのイジラレカレシから、自分のカレシは意外と凄いと格上げされた気分を味合う。
「あー、でも氷術でちょうどいい温度に調節するまでは、時間かかりそうだねー」
「うっ…」
とりえは焔だけ?みたいに言われてしまい、あっさりと鼻っ柱を折られてしまった。
「ボクじゃ全然溶かせなかったのに、凄いと思ったけど。修理担当の人に渡すまでの時間を考えるとなんかねぇー」
「オレだってなぁ…その…」
折るだけでなく力強く握られ、そのまま捻られ無残に押しつぶされたあげく、いっきに引き千切られたような思いに沈む。
「アダマンタイト、こっちにください!」
「あ、うん…」
心の傷が癒えないまま、溶かした金属を注ぎ口からコテにつけて、ベアトリーチェに渡す。
「人手が足りなくて困っていたので助かります」
「いやーまぁ、うん。暇だったし」
「どーぞこきつかってやって。溶かすのは早いけど、温度を調節するのはちょーっとアレだけどね」
「オレをアイテムみたいにいうなやっ」
「何?焔意外に、用途があったけ?」
「(ちくしょうぅ、後で覚えてろよぉお)」
同じようなことをまた言われ、悔しげにギリギリと歯を噛み締めつつ、アダマンタイトを溶かす作業を続ける。
「どんどん溶かしてねー」
アゾートが歩夢に教えているところを覚えていたリーズは、分量を調節しながら陣に渡す。
「あれ?さっきよりも、冷却しやすくなってるな」
「金属の量を減らしたんだよ。いっぱい溶かしたら、冷やす時に時間かかるじゃん?」
「そっか…ありがとうな」
「ん?」
「―…さぁて、作業を続けますかーっと」
彼女のさりげない気配りの優しさに、こういういいところもあるんやったなぁ、と心の中で呟いた。
「あれ?精錬はもう終わってるんですね」
アダマンタイトが含まれた鉱石から、精錬した金属が詰められた箱が、アゾートの傍にあることに詩穂は首を傾げる。
「今回は、溶かす加工だけしてほしんだよね」
「いつの間に終わったんですか?」
「皆が頑張ってくれたから、精錬は終わっているよ」
「ではトロトロ〜に溶かしちゃいますね☆」
「客車を修理するために、横に倒したいのだがよいだろうか?」
「それだと、大きなマットが必要だと思いますよ?」
私の言葉だけでは決められません☆とコアに言う。
「アゾートちゃん、どうします?」
「んー…。綿を詰めたマットなら用意出来るけど。その綿と布をリサイクルしなきゃいけなくなるんだよね」
「捨てるのはもったいないですし…。かといって、保管するのも困るサイズですよねー」
「後で、ちゃんと何か…駅舎で売るものを作ってくれるなら、提供するよ」
「な…私が手芸を!?」
機械の修理ならまだしも、ちまちまとぬいぐるみでも作らねばらないのか!?と、返答に迷う。
「グァアァォオ、ガァア!!(漢ならやるしかないぞ!)」
「ドラゴランダー、手伝う気はあるか?」
「ガァアァアッ!!(手芸なんぞ、出来ると思っているのか!?)」
「いや…無理か」
根気のいるということもあり、思わない、と即答する。
「仕方ない。使った後は、私がリサイクルしよう!」
「じゃあ手配するね」
アゾートがネットで注文すると数十分後、業者によって巨大なマットが運ばれた。
「では頼んだぞ、ドラゴランダー!ゆーっくり…横にするのだぞ?」
「グァアァォオッ!!(それくらい心がけている!)」
「ありがとう、ドラゴランダー。さっそく作業に取り掛からせてもらおう!」
ドライバーとその巨体を比較すると、玩具のように小さく見えてしまう。
慣れた手つきで車体のパーツを外し、シートの上に部品ごとにまとめる。
「少し熱いですから、気をつけてくださいね☆」
アダマンタイトをコテにつけ、コアに渡してやる。
「うむ、では破損が酷いところから始めるとしよう」
磨り減って緩んだネジの周りにアダマンタイトをつけ、ピッタリとはまるようにコテの先で形を整える。
「慎重に運んでもらったおかげで、使えないほぼないな。亀裂などを直して、組み立て直せばよいか」
黙々と列車の下側の修理をしているコアだったか、4車両分の修理に1週間近くかかってしまった。
「ふぅ、今日から外装の工事だな」
「これ内装の工事予定の図面なんだけど、見てくれるかな?」
八雲と一緒に作った設計図を弥十郎がコアに渡す。
「ほうー…なかなか造り込まれているようだが…。期間的に可能なのか?」
「そこが悩みどころでもあるね」
「ふむ、1番後ろの車両は展望の窓を大きくするのか?アダマンタイトの熱で、元の金属を溶かしつつ…。厚みをもたせたような感じで整えればよいのか」
「頼めるかな?」
「皆が喜ぶならば、私が工事を行おう!」
ぐっと親指を立ててニッと笑ってみせる。
「ほう…防弾ガラスをはめるのだな。ならば、それなりの厚みが必要となるな」
メジャーで幅を計り、調節する場所に目印用の付箋をつける。
「持ち手が長めのコテにアダマンタイトをくれないか?本体の方のデザインの調節が必要らしいから、温度は高めにしてもらいたい」
「かなりあつーくしてありますよ☆」
詩穂はニッコリと微笑んで言い、たっぷりとアダマンタイトをコテにつける。
熱された金属はさっきよりも鮮明に輝き、水色のような色合いになる。
コアはそれを受け取るとドアが外された部分に、ジュッとつけて押し伸ばす。
「ドラゴランダー、使わない座席の土台をこっちに運んでくれないか」
「グァァアァ!(持ってきてやったぞ!)」
「これをアタマンタイトの熱で溶かし、足りない部分へ補強しよう!」
1万度以上ありそうな熱気を放つ金属をつけたコテを、使われない部品に押しあてると、ドロリと溶ける。
溶けた金属をくっつけて、ガラスの枠に足りない部分や、厚みをもたせるために補強する。
「他の窓も枠を広げなければならないか」
「これが1等車両になるんですね?」
「あぁ、そのようだ」
「どんな感じになるのか楽しいです☆1番後ろのスイートは、1人用の個室のように見えますねー…」
「なにやら貴族的な考えも入っているようだから、そうかもな」
「1等車両は何人も泊まれないんですね?」
「宿泊する者によるのでは?展望にしても、1人で泊まる決まりはないようだ」
「それなら友たちと一緒に泊まったりしやすいです☆クリマスパーティーには参加するんですか?」
「この体格では、入れるかどうかだな」
「ちぎのたくらみのスキルを使うという手があります☆」
小さくなれば問題ないですよ☆が言う。
「うぅむ、考えておこう」
会話していると窓枠がだんだんと冷え、スミスハンマーでも叩ける温度にまでなった。
水色に輝いていた金属は黒に近い青色となり、地の色合いによく馴染んでいる。
「かたまりきらないうちに、形を整えねばな」
カーン…コーン、カーンカーンッ。
ハンマーで叩く度に、駅の周辺まで金属音が響く。
「ガアアアァァァァ…」
何もすることがなくなってしまったドラゴランダーは、大きな欠伸をする。
「グァアァ…ガァアァ。(…それにしても平和だな。ハンマーの音が…我を眠りに…いざな…)」
最後まで言い終わる前にパタンッと倒れて眠ってしまった。
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