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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第16章 Christmas Eve After5

「ベアトリーチェ、ケーキまだなのー?」
 待ちきれなくなってきた美羽がパートナーの名を呼ぶ。
「はいっ、もう少し待ってください!!」
「僕はお肉とケーキ!」
「チムチムも食べたいアルー」
「お待ちくださいっ」
 請負ってくれる人がいないため、臨時で彼女が食堂車で働いている。
「美羽さん、ケーキは皆と食べてくださいね」
 列車の形をした大きなケーキを丸いテーブルの上に置く。
「どこからもらおうかしら…」
「食べちゃうのもったいないアルね」
「じゃあチムチムの分は僕がもらっちゃおう!」
「ずるいアルよ、レキ。イヤ、アル!あげないアル〜」
「環菜さんから送られてきたお料理は、各テーブルにありますから。好きなものをとってください」
 1人ではさすがに対応しきれなくなりそうなので、バイキング形式にしてみた。
「あの鶏肉、漫画肉みたいだね。おいしそーっ」
 さっそく目当てのお肉を手に入れようと、レキはナイフで殺ぎ取る。
「サイコロステーキみーっけ!わさび醤油で食べてみようかな?あむ…むぐむぐ…。ん〜〜、ツーンとする!でもおいしーっ」
「鶏肉の皮がパリパリしてるアル〜。クリームロールも美味しそうアルね…」
「牛の薄切り肉で、いろんな野菜を巻いているみたいだよ。なんだか高級レストランで食事してるみたいだね。幸せすぎてとろけちゃいそうー…」
「ベアトリーチェ、フルーツがいっぱい入ってておいしー!」
「気に入っていただけてよかったです」
「なくならなうちに、皿にとっておこっと」
「チムチムもそうするアル」
 競争率の高いケーキはあっとゆう間に、胃袋の中へ消え去ってしまう。
 デザート用に確保しておこうと皿に盛る。
「静麻さんもどうですか?」
「少しもらおうかな」
 静麻はプッシー・キャットをテーブルに置き、取り皿にもらって食べる。
「遠慮してるとなくなっちゃいますよ」
「いや…景色を見ながらゆっくり食べたいんだ」
 そう言うと彼は窓の向こうに見える粉雪を眺める。



「歌菜、1日遅れだが、俺からの誕生日プレゼントだ」
「私からも羽純くんにあげたいものがあるの」
 イブの前日は2人の誕生日。
 互いにプレゼント交換をし、包装紙を丁寧に取りケースを開く。
「わぁ〜キレイ!ねぇ、私の髪につけてくれる?」
「それはまた、ずいぶんと難しい注文だな…」
「いいから早くっ」
 ガラス細工の髪飾りを彼に渡し、ソファーに座り恋人を見上げる。
「おかしくなっても知らないからな」
「羽純くんにつけてもらいたいの」
「―…こんな感じでどうだろう?」
「うん、凄く素敵。ありがとう、羽純くん」
 恋人がくれたプレゼントが、自分の髪を飾る様子を鏡台で見ると、彼女は髪飾りにちょんと手を当てる。
「今度は歌菜が俺のために、ロックグラスにウィスキーを注ぐ番だ」
「分かったわ、今日だけ特別にね」
 プレゼントしたグラスにウィスキーを注いでやり彼に渡す。
「いつもより酒が美味く感じるな。きっと、歌菜が注いでくれたからだ」
「おだてても注いであげないわよ♪」
「困ったな。どうすれば歌菜姫のご機嫌を取れるんだ?」
「私の好きなところを、3つ言ってくれたら考えるわ」
「それは難題だな…。歌菜の全てが好きだから、言葉にするのが難しい」
「―……それなら、仕方ないから注いであげなくもないわ」
 気恥ずかしそうに景色の方へ視線を逸らす。
「まぁ、言葉に出せても言わないし。秘密ってことでいいか?」
「えーー!?そんなのズルよ、羽純くん」
「注いでくれたら教える気になるかも?」
「むぅ〜、じゃあ注いだらちゃんと答えてね」
 子供のように頬を膨らませ、ロックグラスに注ぐ。
「ありがとう」
「じゃー教えて!」
「教えるとは言ってないが?」
「羽純くんってば、ズルィッ!お仕置きしちゃうからね」
「いたたっ、いたいって!」
 お姫様からのお仕置きとして、ぺしぺし軽く背中を叩かれる。
 トントンッとドアを叩く音が響き、その向こう側から“お食事を持ってきました”と、ベアトリーチェの声が聞こえる。
 羽純は恋人から離れ、ドアを開けてやる。
「どうもありがとう、イブなのに大変そうだな」
「お料理は環菜さんが手配してくれたものですし。私はそれを運んだだけです。では、失礼いたしますね」
 自分もイブを楽しもうと、ベアトリーチェは足早に食堂車へ戻る。
「料理がきたぞ、歌菜」
「美味しそうね…いただきます!」
 料理を目にした彼女はさきほどのお仕置きタイムを終了させ、香草のスープをスプーンですくう。
「なぁ、歌菜」
「何?」
 真剣に自分を見つめる向ける彼の眼差しに、歌菜姫はスプーンを口元から離す。
「今年は色々な事があって、来年も色々あるだろうが、きっと何の問題もない。そうだろう?」
「うん、今年も2人で過ごせる幸せに感謝!」
 彼が言うならきっとそうに違いない。
 どんな苦難がやってこようとも、羽純が傍にいれば乗り越えられる。
 恋人だけに見せる笑顔を向けた。