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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第8章 学校をイメージに商品開発…あわあわあわ石鹸

「波実ってどんな校風アルか?」
「俺のところか…?そうだな……。孤児院にいる子供には、優しいやつらが多いかもな」
 校風に合わせた石鹸の参考なのだろうと、当たり障りのないイメージならよいかと思い和輝がレキに言う。
「色は…茶色か、赤だな」
「チョコレートカラーってことに、しておくアル。教導団のほうは、どんなイメージアルか?」
「んー……。訓練とか…訓練とか、訓練ね」
「そればっかりじゃ分からないアルよ、月夜さん」
「後は校長しか思い浮かばないわ」
「そうアルかー…。後は電話で聞くしかないアルね」
 まずは葦原の学生から聞こうと、ネット電話で話しかけてみる。
「静香さん、そこに葦原の生徒さんいるアル?」
「いるよ。透乃さん、電話だよー」
「えー、誰から?」
「チムチムさんからだね」
「―…なんだろう?もしもーし私だよ」
「透乃さんアルね、葦原のイメージについて聞きたいアルよ」
「いきなり聞かれてもなぁ…」
 唐突に言われても“和風”の単語しか浮かばず…。
「んっと…ニンジとか、侍とかいる和風のイメージで…」
「わかったアル、ありがとう!」
「後は陰陽……ってあれ?ありゃりゃ、きれちゃったよ」
 いったい何のために聞いてきたのやら…と首を傾げた。
「次は携帯で北都さんに聞いてみるアル。もしもーし、今話せるアルか?」
「うんいいよ。何かな?」
「薔薇ってどんな感じの学校アル?」
「特徴を聞きたいってことだよね。執事はー…どの学校にもいるし。言葉で伝えるとなると難しいね」
「チムチム的にはかっこよくて優雅で…強い!っていうイメージが欲しいアル」
 言うまでも無くこれはビジネス。
 ゆえに売れるものを考えたら、それがよいのだろう。
「パッと思い浮かんだのは、戦場でも料理を堂々と作る弥十郎さんと、闘牛…かな?」
「参考になったアル!」
 北都が言葉を続けようとしたその時。
「闘牛士イコール薔薇ってわけでも…。ぁっ!」
 プツンと通話が切れてしまった。
「大学はエースさんに聞いてみるアルッ、エースさん、今お話してもいいアル?」
「大丈夫だけど、デザイン案が決まったの?」
「ううん。そのために今、リサーチ中アルよ。大学の特徴を聞かせて欲しいアル」
「俺のところはー…。うーん…医術とか…。いや、それだと独学で学んでる人もいるしなぁ。高機能なパソコンとか…まぁ、いろんないい機材があったりするけど」
「パソコンアルね!」
「特徴がそれだけってわけじゃ。あ、ちょっと!」
「レキ、リサーチ終わったアルよー」
「見せて!どれどれ〜…」
 さっそく考案しようと、チムチムが書いたメモをレキが覗き込む。
「葦原のイメージって、やっぱりこんな感じか。葦原は侍石鹸の紅色にしよう!大学は…パソコンでいいや。スペックが凄くよさそうだし。色は灰色でいいかな。天御柱学院の人には聞かなかったの?」
「イコンと強化人間のイメージが強いアルね」
「じゃー…イコンのほうで!真っ白ってのもアレだから、アイボリーだね。薔薇は闘牛士の弥十郎さんにしちゃえ!」
「なんでそーなるアル!?」
「牛と闘って食材を確保する感じでさ。色はワインレッドかな」
 チムチムのリサーチを元に、思ついた石鹸のイメージを企画書に書き込む。



「ラズィーヤ、ワタシたちも商品を考えてみたわ」
 他の者のアイデアを聞きに向かうラズィーヤを、シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が呼び止める。
「ジグソーパズルにトランプやジグソーパスルにカレンダー、あと、写真集とかDVDを提案させてもらうわ」
 どれも魔列車や駅舎周辺、実際に乗車している情景に、イラストや画像を使ったものを予定している。
「こんな風にイラストにすれば、女性とかにも受けると思うの♪」
 アイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)の写真を基に、キャラ化したイラストを描写のフラワシに描かせる。
 扇を口元に当てつつ、ラズィーヤは悩んだあげく、かぶりを振る。
「それですとイラストを描ける人が駅舎いないと困ってしまいますわ」
「事前にメールで予約をとってもらえれば大丈夫よ♪」
「少し難しい相談ですわね…。今回は、ジグソーパスルとカレンダー、写真集の3つのアイデアをいただきますわ」
「ん〜残念ね。まっ、オール不採用じゃないから、いいけど」
「…サンプル…」
 ほとんど却下されてもアイリスは引き下がらず、デジカメで撮った写真を、ラズィーヤに見せる。
「…イラスト…小物…」
「アイは、イラストが小物にも使えるって言ってるの」
「…絵には絵の写真には写真の、良さがある…」
「そうよ!その辺、もう一度検討してほしいわ」
「―…考えておきますわ」
「…商品、じゃないけど…スペース…」
「きっとアイはこう言いたいのね。駅が活気付けば、自然と路上画家とか。写真家が寄って来る、と思うってね」
 アイリスが何を喋っているのか、理解していなそうな困り顔をする彼女のために、シオンが通訳する。
「そういったスペースもあると素敵ですわね。その時は場所代をいただきますけど」
 しっかりいただくものはいただくと言い、やや腹黒そうな笑みを浮かべた。



「環菜様がいないわ、どこかなー…」
 オリジナルの雑貨の提案を聞いてもらおうと思ったが、肝心の環菜が見えたらない。
「生徒たちに囲まれているぞ」
 月崎 羽純(つきざき・はすみ)の視線の先へ顔を向け、遠野 歌菜(とおの・かな)は小さく“ぁ…、埋もれそうな感じね”っと声を漏らす。
「なにやら困っているようだな。私が話しを聞こう!」
「屈まないと部屋に入れないんですね?」
「はっはっは!普通に立ってしまうと、天井を破壊しかねないからな」
「何かアイデアがあったら私たちが代わりに聞くわ」
 コアの巨体の後ろから、高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)がひょこっと顔を覗かせる。
「お土産といえば、記念になるものがいいわ。魔列車の写真や絵が入った、オリジナルTシャツなら需要もあると思うの。他にもラズィーヤ様、環菜様とかのね」
 紙に自分の学校の校長であるエリザベートやアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)
 男女問わず人気がある桜井校長の写真入りTシャツなら、欲しい人はきっとたくさんいるはず。
「写真に直筆サインなんか入れてもらうと、ファンなら買いでしょう!?」
「それはシャツ全てに書いてもらうのか?そうなると本人たちが大変だと思うぞ」
「何枚か1枚は本物ってことにすると、シャツを探す人にめちゃくちゃにされちゃいますよね」
 中にはきっとマナーの悪い客もいるだろう。
 店内を荒らされたような状態になり、たたみ直すのも一苦労だ。
「残念ですけどサインは諦めます…。他にも商品アイデアはありますからめげませんよ!」
「それもTシャツなのか?」
「はい!『I(ハートマーク)魔列車』とか、『私を遠くへ連れてって』とかの言葉を入れるんです。文字入りTシャツを好む人もいますからね」
 のんびりな旅がコンセプトであり、インパクトのある魔列車にちなんだ言葉を入れることで、需要もあるはず!とコアに言う。
「飽きさせないためには魔列車の写真や絵を背景に、お客さんが好きな言葉を入れられるサービスも必要ですよっ」
「印刷する機械を店舗内に置かないといけなくなるな。陽太、予算的にどうだ?」
「ごめんなさい、これ以上は厳しいですよ。でもよいアイデアなので、保留にしておきませんか?」
「設置は資金が集まったらってことですか?」
「そうなりますね」
「他のアイデアはこんな感じだそうだ」
「―…えぇ、これくらいなら発注出来そうです」
「妻の写真がプリントされたTシャツを売られるのは、イヤではないのか?」
 環菜の夫なら拒否権はあるだろうと思い、念のため聞いてみる。
「普通の写真なら構いませんよ。2つの学校には資金を出してもらってますし。皆さんには大変な労働で、助力してもらっているわけですからね」
「ほう…陽太がよければよいのだが」
「商品の案がまとまったら、業者に委託する手配をしますね」
「了解した」
「これだけたくさんあると、品物の管理が大変になってしまいそうですね?お弁当の発注は私がします」
「そうしてくれると助かります」
「いただている資料を元に、お弁当の発注をしてきますね」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は委託業者を探そうと部屋から出た。
「コア、おおまかな店舗の平面図は書けるのでは?」
 採用が決まったものもあるのだから、先に簡単な図面を書いては?と鈿女が言う。
「うむ、そうしよう!」
 スケールを使い、コアが図面を引き始めた頃。
 別邸の中に入れない龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)はというと、庭で昼寝をしている…。



 駅といえば列車がくるまで、待ち時間がある。
 この魔列車ともなれば、かなり待つことになりかねない。
「陽太さん…、魔列車は日にどれくらい往復可能なんですか?」
「今は朝出発したら、翌朝戻ってこれるスピードにしてありますよ。速くも遅くも調節がきくので、需要と要望を取りれてから、時刻表の設定を決める予定です」
「寝台特急のような作りなんでしたっけ…?」
「一応、寝台車両だけじゃなく、普通の席も用意してありますよ」
「確かに……。出発してすぐ戻ってくるものじゃ、……なんか面白みにかけそうですよね。駅の中に書店を誘致しませんか?」
「駅といえば大抵ありそうですし、たぶん許可をもらえると思います。ただ…書店によっては、受け入れられない場合がありますよ」
「そちらで…その書店に何か問題あると判断したら…、却下をしていただいても構いません」
 陽太が言うように、店事態に黒い噂などがあれば当然、断るべきだと非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)も理解している。
「あと…パートナー同士だけの企画では、店舗を1つをまるごと提供することは出来ないんですよ」
 近遠が提案してくれた書店は、駅中にあれば人を飽きさせないために必要な店だ。
 だが、どの人にも自分とパートナーだけの店の案は通しておらず、共有スペースにしなければならない。
 近頃、書店のカウンターの傍に、ゲームなどちょっとしたものが置かれていることもある。
 そういったものがあっても不自然ではないし、やはりここは待ち時間の有効活用が必要なのだからと、小さく頷いてスペースの共有を承諾する。
 駅舎内に、ヒッソリと…コッソリと存在する、書店の誘致を計画する。
「長時間待つとなるとたいくつですし……、どこかの書店を誘致しておきますか…」
 まずヴァイシャリーの書店から誘致するべく、根回しを試みる。
 打ち合わせに出向いてみたりもしたのだが……。
「―…どこもお断りされてしまいましたね」
「そうめげることでもなかろう」
 きらりと涙を浮かべ、椅子に腰をかけて項垂れる近遠の頭を、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が撫でる。
「ですが……、せっかくの書店計画が通ったのに、白紙になってしまったんですよ…」
「誘致となると、相手の承諾を得るのは難しいのだからな」
「近遠さん、提案する機会だってまたあるかもしれませんよ?」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)はパートナーの隣に座り、本の関連で思いついたことがあったら、別の機会に提案してみては?と言う。
「お店が完成したら4人でいろいろ見て回って、ぱーっと盛り上がりましょう!」
「ふむふむ、今後の参考にもなるだろう。ユーリカはどうだ?」
「皆が行くならあたしも、完成したお店を見てみたいですわ」
 へこんでいる近遠を元気づけるのを兼ねて、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)もイグナたちの店舗巡りに参加する。
「近遠ちゃんも一緒に見ましょう!というか拒否権はあげませんわよっ」
「ユ…、ユーリカさんっ。分かりましたから……、そんなに揺らさないでください……!」
 両肩を掴まれ、がっくんがっくん揺らされる。
「あたしたちはまったり待機していましょう。店舗の完成…待ち遠しいですわねー」
「誘致が白紙同然なったわけですが……」
 別邸のソファーで寛ぎ、うきうき気分の3人の傍ら、これでよいのですか?と近遠は気分をモヤッとさせる。
「駅舎の店舗ために貴重なアイデアをくれたのですから、気にすることはありませんよ」
「陽太さんがそう言うなら……。完成パーティー、楽しみにしていますね」
「はい!ぜひきてくださいね。―…それにしても、ノーンとエリシアの姿が見えませんが、どこにいるんでしょう?―…電話に出ませんね」
 携帯にかけてみるが永遠と呼び出し音ばかり鳴り、電話に出る気配がない。
 エリシアは別室で商品のサンプル作りに熱中するあまり、携帯の音にまったく気づかないようだ。
 もう1人のパートナーであるノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)の方は、バイブモードにした携帯をカバンに放り込んだまま…。
 サポート役としてお手伝いするのに忙しく、気づくはずもない。
「おねーちゃんのお手伝いをするよ!」
 至れり尽くせりにより、エリシアが所望する工具やサンプル用の材料を、ノーンが用意してあげる。
「ありがとう、ノーン。業者に発注するからには、自分の手で作ったものを参考にしてほしいですわ」
 司のデザインを元に、ジオラマのパーツを作る。
「こうして見ているとなんだか、細部にも拘りたくなっちゃいますよね」
「子供でも簡単に作れるものでなかればいけませんのよ」
「ですよねー…。おっきいお兄さん向けのものだと、価格も高くなりそうですし」
「ちょっと疲れてきましたわね」
「たまには休んでねー」
 サンドイッチをテーブルに置き、メイドインヘブンでエリシアたちの疲れを癒してやる。
「昼食にしましょう」
「ずっと描いてたら、私も手た痛くなってきましたね…。いただきます」
「そういえば、店舗の工事のほうはどうなっているんですの?
「見にいってないからわからなーい」
「列車の内装の時も不安でしたし、ちょっと心配ですわね」
 今回も無事に完成するんですの?という思いもあったが、無理をして倒れてしまわないか心配する。