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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第4章 視界からも味わえるSR弁当制作 Story2

「わぁ〜…。2組とも、容器にまで拘ってるね」
 料理も一切妥協せず、それを盛り付ける容器の見た目でも客を楽しませようと考えている。
「こっちも大人だけじゃなくって、子供も食べやすいものにしたいね」
 その様子を眺めていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)も、何か工夫してみようと考案してみる。
「例えば、イカ飯っぽいパエリアにしちゃうとか…ね♪」
「それなら女の子も買ってくれるかもね!」
 オシャレな味わいなら、女の子の口にも合いそうだし面白い発想だね、と真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)が頷く。
「駅弁だし、ヴァイシャリーのイメージで作ってみようかな」
「先生を何か思いついたの?何々、教えて!」
「温度が高くなると溶けるゼリー寄せとかどう?カップタイプにしておけば、温めて飲みやすいと思うし。上品に飲みたい人のために、スプーンもちゃんと用意するよ」
「カップの底に加熱装置をつけて、好きな時に温めてもらうのはどう?」
「そのまま食べちゃったら、無駄になっちゃうし…。落として火事になったら怖いよ!」
 大人が目を離した隙に、床へ落としてボッ!と燃えてしまうんじゃ、と西園寺は首を左右に振り、全力で拒否する。
「だったら危なくないように工夫しよう♪」
「ううん、ゼリー寄せが見えなくなると、気づかれずにポイされちゃうかもよ。食べてもらえないと、ゼリー寄せだってションボリしちゃうよ!」
 加熱装置の傍に隠れて、ポツンと食べ残されてたゼリー寄せの寂しい気持ちを考えて!と声を上げる。
「電子レンジで加熱すれば危なくないし、残っちゃう心配もないね」
「んー、その方がいいのかなー」
 火災事故を防ぐなら、その方がよいだろうと頷いた。
「そうと決まれば、まずは米研ぎからだね♪」
「弥十郎、頼まれたものが届いたぞ。どこに置けばいい?」
「入り口の傍にお願い。作るからには、新鮮なものを使いたいね♪」
 一輝が手配してくれた品物を確認しようと、さっそくボックスの蓋を開ける。
「全部あるね、ありがとう!」
 彼に礼を言い、さっそく調理に取り掛かろうと弥十郎は米の袋を開ける。
 1合分だけザーッとボウルに入れ、ハンドル水栓を下げて米研ぎを始める。
「イカの中に貝を詰めるの?」
 蟹を茹でつつ弥十郎の作業の様子を見ようと、彼の方へ視線を移す。
「普通のパエリアだと、風味が逃げちゃうんだよね…」
「パエリアならムール貝は外せないよ」
「あははっ、殻ごとなんてありえないって」
 まさか殻ごと詰めるんじゃないよね?と先生に言われ、そんなわけないと笑う。
 米の水切りをしてテーブルに置き、砂出ししておいたムール貝を掴む。
「これだけ海の方で獲れたやつなんだよね。ヴァイシャリー湖にいるかわからなかったからさ」
 オイスターナイフで剥き、身をボウルに移す。
「まっ、いるってわかったら、原産地のものに変えたいね♪」
 それ以外は現地で獲れた魚介類を使い、食べやすいサイズに切る。
「見た目はもちろん、味や香りも大切だからね」
 駅弁を食べてくれる人たちの表情を想像しつつ、テキパキと香りづけ用の食材を皮を剥く。
「んー?たまねぎはともかく、にんにくもいれちゃうの?」
 匂いを気にする人もいるんじゃ?と西園寺が首を傾げる。
「香りづけにちょこっと加えるだけだよ」
「それなら大丈夫かな?女の子だと特に、気にしちゃうからね」
 美味しい味ばかり追い求め、食べてもらった後のことを考えないなんて、料理人としてあるまじき行為。
 弥十郎らしく駅弁を食べた人だけでなく、その周りにいる人も気にならないように、当然の如く配慮しているようだ。
 刻んだにんにくとたまねぎ、貝の剥き身などを米に加えてサッと混ぜる。
 内臓を取って水洗いしたイカの中にパエリアを詰め、その詰め口を楊枝で止める。
 鍋にイカを入れ、白ワインとブイヨンで煮込み始める。
「イカに詰めちゃえば、ご飯に魚介類の風味とかが、しっかり染み込むかな♪」
「私の方ももうちょっとで出来るよ!どれからほぐそうかなー…」
 茹で上がったカニやブロッコリー、ほかほかのポテトを眺める。
「んー…ここはやっぱり、手間がかかるカニから身を取ろうかな!取ってる間に、他のがちょうどいい温度になってそうだし」
 ツメの間接をハサミでチョッキンと切り、身が詰まったツメを片手で持ち、もう片方の手を添える。
 その手でツメを持っている腕をポンッと叩くと、身がポロッと皿の上に落ちる。
「何それ?なんか心太みたいで面白いね」
 スポンッと身が抜け出た瞬間を弥十郎も見ていた。
「上手く出ない時は、何度か叩くといいよ」
「へぇ〜…。カニの身って、取るのが大変だよね。それでも出ない時ってどうするの?」
「それはハサミで切って、地道に取るしかないよ」
 ツメの先とかは確かに取りづらいかも…と頷き、取りきった身をバラバラにならない程度に小さく切り分ける。
「さてと…他のもちょうどいい温度になったし。具から先に、型に入ちゃおう。後から入れて、ブイヤベースが零れるともったいないからね」
 彩りを考えて一種類の具だけ多くなったりないよう、バランスよく型に入れ、最後にブイヤベースを注ぎ込む。
「固まるまでだいぶ時間かかるかも…」
 アスピックの試作であるゼリー寄せを冷蔵庫に入れる。
「こっちはもう出来ちゃったよ」
 それが固まりきる前に、弥十郎は鍋をコンロから降ろして、パエリアを詰めたイカを菜箸で摘み、まな板に移す。
 イカを包丁で切ると、断面から鮮やかな色合いのパエリアが顔を出した。
 縦長な駅弁の容器をテーブルに置いて、まずはイカ飯を2つ並べる。
「先生、マッシュポテトは?」
「そこのボウルの中にあるよ」
「えっ、いつの間に!?」
「ゼリー寄せを冷蔵庫に入れた後、すぐに作ったんだよ」
「さすが先生、仕事が早いね」
「カニの身を取ってる間に、他の食材も茹でていたからね。もちろん別々の鍋でね」
「キッチンが凄く広し、コンロもいっぱいあるからね。まぁ、時間を無駄にしないイイ方法かな?」
「商品化するなら多少急いだほうがいいし…。その付け合せ、私が盛り付けてあげるよ」
 敷居をはさんだところには、西園寺がブロッコリーとマッシュポテトで彩る。



「スキヤキ弁当ということですが、これを可愛らしくするとなると…。少し難しいですね」
 子敬はスキヤキ用に牛肉を切り分け、大皿に並べる。
「野菜を汚すわけにはいきませんからね!」
 包丁を流し台で丁寧に洗い、春菊などをザックリと切る。
「おや、テノーリオ。やっと戻ってきましたか。例の食材は手に入りました?」
 ぜぇぜぇと息を切らせてキッチンに入ってきた彼の方へ振り返る。
「―…あったよ魯先生……割高だったけどさっ」
「ありがとうございます!ささっ疲れたでしょう、椅子に座って寛いでください。荷物は私にくださいね」
 パイプ椅子を彼の方へ寄せてやり、足りなかった食材を受け取る。
「エリザベート、これお釣りな」
「はい、お使いご苦労さまですぅ〜♪」
 お釣りをテノーリオから受け取ったエリザベートは、お金を財布にしまいこむ。
「可愛らしい弁当とは、どんなものなのでしょう…。子供も好むものとなると、遠足ならウサギの形をしたリンゴとか入ってますよね。はっ、その手がありましたか!」
 なにやら閃いた子敬はニンジンで、花や動物の形を作る。
「飾り包丁かー…。それなら見た目もよくなるな」
 細やかなその作業をトマスが傍らから覗く。
「フフッそれだけじゃないですよ、坊ちゃん。ネギの緑色の部分を刻んで散らし、花と緑の中に動物が戯れている感じにするんです!」
「かなりファンシーになりそうだな」
「一見、色合い的に地味そうに見えるスキヤキでも、ひと手間加えると可愛くも美しくもなるんですよ!!」
「数作るとなると大変そうだけど。食べるだけの弁当じゃないなら、これもアリなのか…?」
 腹を満たすならその辺のコンビニ弁当で十分だが、ゆっくり旅をする者なら、駅弁の蓋を開けて記念に写真を撮ったりしそうだ。
 長距離列車なのだから箸をつけるよりも、まずは目で見て楽しむことも必要なのだろう…。



「にーちゃん、お弁当の容器できたー!」
 難しい模様の部分も真の手を借りずに、じぶんだけで作ったー!とはしゃぎながら、蒼はキッチンへ駆け込む。
「色もつけたんだね?」
「んーとね。ライターで焼た釘で、プラスチックで溶かしたの。でね、溶けたのが釘にくっついて、それを塗りつけたんだよー!」
「容器の形はどうやって作ったのかな?」
「しかくい形のがあったから、あつーくした釘を使って、形を作ったのっ!」
「熱くなかったの?」
 まさか素手でそれを触ったんじゃ、と蒼の手を見る。
「ペンチでつまでやったからへーきっ」
 火傷なんてしないよ、と手の平を彼に見せた。
「ちっちゃいパラレールのオマケも作ったよー。サンプルだから、運転車両しかないけどーっ」
「なかなか戻ってこないと思ったら、細かく作りこんでたからか…。蒼がこんなに頑張ったんだから、俺も駅弁作り頑張るかな」
「にーちゃんのお弁当、楽しみぃいいっ!!」
 真の駅弁作りを見学しようと、椅子に飛び乗って眺める。
「ご飯はもう炊けてるからいいとして。蒼が列車の形をした器を作ってくれたから、中もそれっぽくしようか」
「ピーマンは刻むだけなの?子供はピーマン苦手だったりするよーっ」
「ないほうがいい?」
「ううん、えいよーいっぱいとれるお弁当がいいの!にがーい味とかしなければ、平気だと思うー」
「バターライスっぽくして味を隠そうか。確か、たまねぎが好きじゃない子もいたりするよな…」
 苦いアイツだと子供にバレると食べ残されてしまう。
 種を取ったピーマンと、微塵切りにしたたまねぎをミキサーに入れ、形がなくなるまで細かくする。
 バターとご飯を軽く炒め、すりおろした人参と、原型を失った2つの野菜もフライパンに入れる。
「海老とかも入れてピラフにするか」
「(うぅ、じぶんも食べたいぃいっ!!)」
 嫌いな食べ物の匂いがバターの香ばしい香りで消され、食べたい気持ちを我慢している蒼が、じゅるりと唾を飲み込む。
「あとね、トマトがすっぱくてイヤッ!って子もいると思う」
「トマトプリンにしちゃおうか」
 甘酸っぱい程度なら口にあうかな?と蒼に聞く。
「それいいかも、おいしそーっ!!」
「(子供が嫌いな食べ物づくしになったね…)」
 わんこのアドバイスをもらいながら作っているものの、窓に使うチーズやハム、バターとご飯以外、子供が嫌いなものばかりだ。
「毬おにぎりのピラフは出来たから、次はプリンか」
 コンロの火を止めた真はトマトを半分に切り、種を取り除いてすりおろし器ですりおろす。
 水にふやかしておいたゼラチンをレンジで加熱している間、トマトと砂糖、牛乳を入れて混ぜる。
「しっかり混ぜなきゃな」
 砂糖を溶かしきり、加熱したゼラチンと生クリームを入れて混ぜ合わせる。
 器に流し込み、後は冷蔵庫に入れて冷えるのを待つばかりとなった。