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リアクション
6.『炎の庭園』
「アリッサのやつ。言いたい放題言いやがって……」
ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)はアリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)を恨めしそうに睨みつける。
庭園を進むベルグは、何か行動するたびアリッサにやれ「がさつだ」「乱雑だ」と言われていた。
「よし、ちょっと脅かしてやれ」
ベルクは軽い気持ちで威力を抑えつつ、アリッサの進行方向に【ヴォルテックファイア】を放った。
すると――
「キャッ――!?」
「やばっ!?」
突然、舞い上がった炎に驚いたアリッサは、大きくバランスを崩し、地面に落下し始めた。
さらに運悪いことに、落下地点には大きく口を開いた≪食人植物グルフ≫が待っていた。
「マスター、アリッサが!?」
「おっ、おう!」
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)はアリッサを助けるために、≪食人植物グルフ≫の触手を忍刀で斬りさき、ベルクが魔法が唱える援護をした。
ベルクはアリッサごと≪食人植物グルフ≫を焼き払うと、氷を放って急いで消火した。
「だ、大丈夫かアリッサ?」
ベルクは上着をアリッサに渡しながら、戸惑った様子で話しかける。
すると全身を液でベタベタ。服が≪食人植物グルフ≫の唾液で若干溶け出したアリッサは、半泣きの瞳でキッとベルクを睨みあげる。
「大丈夫じゃないよぉ!!」
アリッサはベルクから上着を奪い取って上から羽織った。
ベルクはやりすぎたことを反省し、必死に謝る。
そんな二人の傍に宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が舞い降りてくる。
「もしかして痴話喧嘩? なんだかとても面白そうね。記事にしたらいい物になりそうね」
祥子はカメラを構えるふりをしてみせた。
「おいっ、喧嘩売ってんのか?」
「おおっと、それはやめておきます。無用な争いは好きではありませんから」
掴みかかろうとしたベルクから数歩離れると、祥子は笑顔で答えていた。
さっさと退散した方が良さそうだと考えた祥子は、氷雪比翼を広げて空へと舞いあがる。
「あ、そうだった」
見上げる高さまできた祥子が、ポンと手を叩いた。
「警告! もうすぐこの辺、火の海になりますから早く退避した方がいいわよ」
「「はぁ!?」」
目を丸くするベルク達を置いて、祥子は手を振りながら廃墟の方角へ飛んで行ってしまった。
庭園の入り口。緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は屋根の上から庭園を見ている弓彩 妃美に呼び掛けた。
「おーい、妃美ちゃん。みんな避難したかなぁ?」
周囲への引火しないよう庭園の雑草をぐるりと一周刈ってきた透乃は、全体に火をつけて一気に焼き払ってしまおうと考えていた。
「声かけてきたみたいだから大丈夫、大丈夫♪」
妃美は大きく手を振りながら答えた。
「じゃあ、さっそく――」
「ちょっと待って!」
炎を纏った拳を腰に構え始めた透乃に、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が慌てた様子で話しかけてきた。
「透乃、あなた何をしようとしているのよ!?」
「何って一気に焼きはらおうかと……」
「そんなことしたら、空気が乾燥して火災の原因になるし、熱で毒花粉が飛散して大変な事になりかねないわよ」
「大丈夫だよぉ♪ 屋根の上からの風で安全な方角に花粉を飛ばすし、火も周囲にうつらないように止めるから! というわけで、いっくよぉ!!」
透乃はセレンフィリティの制止も聞かずに、【チャージブレイク】で威力をあげ、拳から爆炎を放つ。
「どーん!!」
視界に入る範囲は一面火の海になった。
火は着々と範囲を伸ばして庭園の奥へと進んでいく。
「じゃあ陽子ちゃん、危険な場所がないか探しに行こう♪」
「はい、わかりました」
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はフレアライダーに飛び乗ると、透乃と一緒に火が周囲に燃え移ってないかチェックしに向かった。
「セレン、私達も行きましょう」
「わかったわ」
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に声をかけられて、セレンフィリティは透乃達とは反対側から庭園を見て回ることにした。
庭園の雑草は勢いよく燃え上がりながら、火の粉を撒き散らす。
しかし、事前に透乃達が周辺の雑草を排除してくれたおかげで、それほど危険そうな場所はなさそうだった。
セレンフィリティは駆けながら、手の甲で細い顎に伝う汗を拭う。
「これのおかげで急に暑くなってきたわね……」
「でもセレン。私たちは水着なだけマシでしょう」
「あ、そっか」
二人は軽快な足取りで庭園の周囲を駆け抜けた。
祥子は廃墟の屋根から風を庭園に送っていた。
「俺も手伝おうと思うのだがよいかな?」
廃墟の窓から夏侯 淵(かこう・えん)が屋上に上ってくる。
「嬉しいけど、掃除の方は大丈夫なの?」
「ああ、大広間のほうは大体終わったし、もうよいだろう」
「じゃあ、お願いするわ」
淵と祥子は協力して、花粉を廃墟とは向かい側の森へと吹き飛ばす。
「ちょっと火を追加しようかな」
祥子は手に持った天狗のうちわを握りしめる。
「風神たる天狗の神通力……火神爆臨ヴォルテックファイヤ!」
祥子が肩から腰へと斜めに手に持った天狗のうちわを振り下ろすと、豪風と共に真っ赤な炎が庭園に放たれた。
「おお、本当によく燃えるわ〜」
放った炎は、既に上がっていた炎と混ざり合い、さらに勢いを増して庭園を赤く染め上げていった。
すると、淵が火が燃え広がる先に、植物とは違う動く影を見つけた。
「ん、今なんか見えんかったか?」
「どこら辺ですか?」
「ほら、あの辺に……」
淵が指さす方向。そこには取り残されたフレンディス達の姿があった。
炎から避難していたマグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)は、その高い身長で庭園に動く人影を見つけた。
「間違いない。あそこに取り残された人達がいる! 栞、頼む。キーの解除を!!」
「わかりました!」
近衛 栞(このえ・しおり)がマグナの力を100%引き出させる。
「はぁぁぁぁぁ!!」
腋を絞めて拳を腰に構えたマグナが、気合の雄叫びを上げる。
「よし、今、行く!」
庭園に飛び込むために、マグナが蹴った地面が大きくひび割れた。
辛うじて炎が回っていない場所で、フレンディス、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)達は庭園からの脱出を試みていた。
ベルクは空から周囲を見渡す。
「くそっ、今にも翼が溶けそうだぜ」
水滴が滴り始めた氷の翼を動かしながらベルクは地面に降り立った。
「アリッサ、お前の箒はどうしたんだよ」
「さっき、ベルクちゃんにいじめられた時に壊れちゃいました!」
アリッサは歯をむき出しにして怒っていた。
「悪かったよ。……とりあえずあっちはまだ大丈夫だ」
ベルクの指さす方角に生徒達は走り出す。
するとミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)の目の前に≪食人植物グルフ≫の触手が飛び出してきた。
「ちょっとまたですか! 先を急いでいるんですけど!」
「ゆっくりしている暇はないよ。一気に終わらせよう」
淳二はミーナと協力して≪食人植物グルフ≫を倒す。
その間にも炎は庭園を縦横無尽に浸食していく。
「こんなことしている場合ではないのに……」
淳二が苦い顔をする。
その時だった。
庭園の雑草が揺れ、大きな体つきのマグナが飛び出してきた。
「見つけた!」
「マグナさん!? どうしてここに!?」
驚くフレンディスにマグナは親指を立てて見せた。
「俺は身長が高いからな。普通にしててもみんなの位置がわかるんだ。さぁ、安全な位置まで先導する。こっちだ!!」
「お願いします!」
高い身長で雑草から頭を突き出したマグナは、安全な場所まで生徒達を先導していく。
そんなマグナは、廃墟の屋根で苦笑いを浮かべる妃美を見つけた。
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