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リアクション
『フィーア・四条 VS ジナイーダ・ドラゴ』
「おい、君。いっちょ遊んでやるから出てきなよ。それとも怖気づいてでてこれないのかな?」
開始早々、リングに立ったフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)は、ジナイーダ・ドラゴ(富永 佐那(とみなが・さな))を指定してきた。
ジナイーダ・ドラゴはそんなフィーアの挑発に乗って、リングに上がった。
フィーアは小柄な体に回転を加えながら、ジナイーダ・ドラゴの腹にチョップを加えるなど、確実にダメージを与えていく。
「フィーア選手、ここは地道にダメージを与えていきます。解説の文則さん、それにしても最初会場の皆さんが感じたとおり、フィーア・四条とジナイーダ・ドラゴ、この二人戦いから始まりましたね」
「んなもんみればわかるっての。そんなこといちいち解説すんなよ」
「す、すいません。……おおっとジナイーダ・ドラゴが反撃に強烈なパンチを決めてきたぁ!」
実況マスク(サー アグラヴェイン(さー・あぐらべいん))は于禁 文則(うきん・ぶんそく)に怒られながらも、一生懸命試合の実況に努めた。
リング上では攻撃してくるフィーアをジナイーダ・ドラゴが真正面から殴ってダウンさせた。
そして、ジナイーダ・ドラゴは正面からフィーアの腰を掴んで持ち上げると、軽くジャンプし、落下と同時に自身の体重を加えながら逆さになっていたフィーアの肩から肩甲骨の辺りをマットに叩きつけた。
「決ったぁ――!! ジナイーダ・ドラゴのパワーボムが綺麗に決まりました。これは体格差のあるフィーア選手にとっては相当のダメージですよね、学人さん」
「そうだね」
「……」
話を振ってみたが、ヤル気のない冬月 学人(ふゆつき・がくと)ではなかなか盛り上がらない。それでも実況マイクは頑張って実況に努める。
ぐったりしているフィーアの足を頭の方へ上から押さえつけ、ジナイーダ・ドラゴはフォールを決めにかかる。
しかし、レフェリーのシン・クーリッジ(しん・くーりっじ)が二秒数えた時、フィーアは動きを見せ、早々と試合が終わることを回避した。
その後、足を捌かれマットに頭を打ちつけたジナイーダ・ドラゴは、フィーアにコーナーポストからのとび蹴りを食らわされた。
「よっしゃ、あたしも続くぜ!」
そして、フィーアに続いて典韋 オ來(てんい・おらい)も、再び起き上がったジナイーダ・ドラゴにコーナーポストから蹴りを食らわしていく。
「連続ドロップキックゥゥ!! 見事に決まりました!」
「やるならもっと徹底的に、四人でボコボコにしちまえばいいのにな」
「そ、そうですね」
不敵な笑みを浮かべる于禁 文則(うきん・ぶんそく)に、実況マイクは背中が寒くなるのを感じた。
「んじゃ、交代だ」
「あとは任せたよ」
フィーアは典韋と軽快な音のタッチを交わしてリングを出て行く。
客席では……
「あの、キリエさんで間違いないですよね」
パイプ椅子に座ってみていたキリエに、あゆむが話しかけてくる。
「……そうちょよ」
一瞬、誰だろうと思ったキリエだったが、生徒達があゆむというメイドにレイゼルの妹の機晶石が入っていると教えられたことを思い出す。
「あゆむちょよか?」
「はい。そうです。騨様から聞きました。キリエさんはあゆむの記憶を知っているのですよね?」
「そうちょよ。……聞きたい、ちょよ……か」
口籠りながら問いかけるキリエ。
すると、あゆむはゆっくりと首を振った。
「やめておきます。今は皆さんがキリエさんのために用意してくれたこのイベントを、一緒に楽しみたいです」
そう言って、あゆむはキリエの隣に椅子を持ってきて腰を下ろした。
『典韋 オ來 VS ジナイーダ・ドラゴ』
ジナイーダ・ドラゴは力強い攻撃で典韋の足元をふらつかせる。
「よっし、さっきのお返しだ!」
ジナイーダ・ドラゴはロープを使って勢いをつけると、つらそうに頭を抑える典韋にラリアットを狙った。
しかし――不意をついてジナイーダ・ドラゴの鎖骨にチョップを振り下ろされ、動きが止まる。
「きました。カウンターのモンゴリアンチョップです!」
「ハッ、そんな簡単に決めさせるかっての」
典韋は倒れたジナイーダ・ドラゴをうつ伏せにすると、背中に跨り両足を無理矢理持ち上げて、サソリ固めをきめてきた。
レフェリーのシンがカウントを始める。
三秒数える前にロープを掴もうとするジナイーダ・ドラゴだが、後少しの所で届かない。
すると、シンがロープを足で引き寄せジナイーダ・ドラゴに掴ませた。
「ちょっと、今のなんだよ!」
抗議するレイラ・ソフィヤ・ノジッツァ(れいらそふぃや・のじっつぁ)にシンは、無罪を主張するように両手を振っていた。
その間に、ジナイーダ・ドラゴの代わりにスワン・ザ・レインボー(白鳥 麗(しらとり・れい))がリングにあがる。
「もう少しでしたのに、残念でしたわね♪」
「てめぇら……」
『典韋 オ來 VS スワン・ザ・レインボー』
スワン・ザ・レインボーは典韋と両手を合わせて力比べを始めた。
額が当たるほどに顔を近づけながら、お互い腕に力を入れる。
拮抗しているように見えた力比べは、ふいに力が緩んだ隙に典韋がスワン・ザ・レインボーをロープへと突き飛ばして終わった。
「しめたっ!」
典韋は背後からぶつかりロープで跳ね返ってきたスワン・ザ・レインボーにラリアットを叩きこもうとした。
「ふふ、かかりましたわね!」
スワン・ザ・レインボーは典韋の脇を抜けて背後に回り込む。
力比べに負けたのはワザとだったのだ。
背後に回ったスワン・ザ・レインボーは片足を斜めに出して、典韋に対して身体を真横に捻った状態にすると、そこから一気に反対の足で遠心力を加えた蹴りを放った。
背中に強烈な蹴り食らった典韋は苦しそうな声を漏らして、ロープを激突して軋ませた。
「スワン、これを!」
「どうも!」
スワン・ザ・レインボーはイリーナ・ハシミコヴァ(メルセデス・カレン・フォード(めるせですかれん・ふぉーど))からレモンを受け取った。
そしてロープに身体を預けている典韋の目に、背後からレモンを刷り込むように押し付けた。
「新鮮なレモンですわ。きっと美味しいですわよ」
目にレモン汁が入った典韋は叫び声を上げる。逃げ出そうにも前にはロープ、背後にスワン・ザ・レインボーと逃げ場を塞がれている。
そしてレフェリーのシンは……編み物をしていた。
「ちょっと、何してだよ!」
「編み物」
「ちょっとレフェリーはどうしたんだよ」
「今、いい所なんだから邪魔しないでくれ……」
レイラが抗議している間にも、典韋は攻撃をしかけられる。
「イリーナ、行きますわよ!」
「わかりました」
スワン・ザ・レインボーとイリーナ・ハシミコヴァは、典韋の腕を抱え込むように掴む。
そして、必死にもがく典韋を無理矢理後ろ向きに引っ張り、自分達と一緒にマットへと仰向けにダイブさせる。腕を掴まれた典韋は受け身もとれぬまま、マットに背中と頭部を強打した。
はたから見れば、典韋はマットにぶつかっただけに見えるかもしれない。しかし、そこには腕をつかんだ二人分の体重を乗せられているため、衝撃は計り知れないものになっていた。
スワン・ザ・レインボーはイリーナ・ハシミコヴァに任せてリングを降りる。
お腹の上にかぶさりフォールを決めに入るイリーナ・ハシミコヴァ。
すると、屋良 黎明華(やら・れめか)が身体ごとぶつかってカットした。
『屋良 黎明華 VS イリーナ・ハシミコヴァ』
「5分が経過しました」
実況マスクの声が響く。
リングを降りた典韋は、レイラから受け取った水の入ったペットボトルで、涙と共にあふれるレモン汁を必死に洗い流した。
「仲間の仇は取らせてもらうのだ〜」
「そうですか。あなた達はどんな果実を使うんですか?」
「黎明華達はそんな卑怯な手は使わないのだ! 正々堂々、倒して見せるのだ〜!」
黎明華は少しずつ近づきながら、張り手や蹴りで地味に攻撃を加える。
「ちまちま、面倒なのよ!」
イリーナ・ハシミコヴァは黎明華の張り手に合わせて、素早く近づき、自身の両腕を相手の脇の下へと滑り込ませる。
そしてそのまま黎明華を持ち上げ、ブリッチの体制を取って相手を頭からマットに叩きつけようした。
だが――
「あ、危ない危ない……」
黎明華はギリギリの位置で両手をついて耐えていた。
体を捻って逃れた黎明華は、イリーナ・ハシミコヴァから距離を取る。
黎明華は向かってきたイリーナ・ハシミコヴァを一度交わすと、ロープを使ってさらに早いスピードで向かってくる相手に攻撃を仕掛ける。
身を屈めてイリーナ・ハシミコヴァの股の間と肩口に腕を差し込むと、走ってきた勢いを利用して肩に乗せつつ、そのまま抜けていく方向へと叩きつけた。
「うぐっ!」
背中を打ちつけたイリーナ・ハシミコヴァのうめき声と共に、マットが衝撃で大きく波打った。
黎明華がイリーナ・ハシミコヴァの上に圧し掛かって、レフェリーのカウントを待つが、今までにないくらいのんびりしたカウントのせいで終わりにすることはできなかった。
レフェリーが選手をひいきしているのは明らかだった。
「黎明華達に分が悪いようなのだ。でも……誰がみても圧倒的な勝利で乗り切るのだ!」
「そうは……させないわよ」
イリーナ・ハシミコヴァは立ち上がり、黎明華を睨みつける。
またしても張り手を叩きこんでくる黎明華。
イリーナ・ハシミコヴァはそれを真正面から受けると、黎明華の髪を掴んで、思いっきり頭突きをかました。
ふらつく黎明華に、イリーナ・ハシミコヴァは自身の頭を相手の腋の下に滑り込ませると、首に巻きつくように腕を絡ませ、もう片方を股の間に入れて、相手の身体を持ち上げた。そして半回転しながら倒れ込むイリーナ・ハシミコヴァ。空中で逆さまに持ち上げられた黎明華は抵抗する間もなく背後からマットに叩きつけられた。
黎明華の背中から頭部にかけて痛みが走る。
「今のは……」
「確か、ファイヤーマンズキャリーだね」
「うわっ、だっせ。綺麗に決められてやがる。いつまでもちまちまとションベンくさいガキみたいなこと、やってっからこういうことになるんだよ」
「あの、ちょっと、言いすぎでは……」
「うっせ、家畜みたいな不細工な面を仮面で隠しているような奴がさっきからギャーギャーうっさいんだよ!」
「まぁ、一番うるさいのは君だと思うけどね……」
「あぁん、なんだやるのか?」
「ちょ、ちょと二人ともやめてください」
今にも乱闘になりそうな文則と学人に挟まれ、実況マスクは大変な苦労を強いられていた。
『レイラ・ソフィヤ・ノジッツァ VS ろざりぃぬ』
「じゅ、10分が経過しました」
実況マスクのアナウンス越しに、文則の罵倒が聞えてくる。
その間、リング上ではメンバーが変わり、レイラ・ソフィヤ・ノジッツァ(れいらそふぃや・のじっつぁ)とろざりぃぬ(九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず))が対立していた。
「やっと出番だね」
「魔法少女の実力を見せてあげるよ」
両者、打撃と関節技の激しい攻防。今まで休んでいた分だけ体力が有り余っているようだった。
「てぇぇぇ――い!!」
レイラはろざりぃぬの頭を掴んでコーナーポストまで走らせると、激突してよろめいた所にエルボーをかました。
ろざりぃぬが音を立てて仰向けに倒れる。
「いっちゃうぞバカヤロー!」
コーナーポストに上がったレイラが絶叫すると、飛び降り、ろざりぃぬの腹にダイビングエルボーを叩き込んだ。
「あっ……」
「ん、どうした?」
口喧嘩をしていた学人がリングを見つめたまま硬直する。
すると文則が意地の悪い笑みを浮かべた。
「ははぁん、なんだてめぇ。飼い主にご執心ってか?」
「別に……」
「あっそうかよ」
文則は白けたとばかりに椅子に深く座り直して飲み物を啜った。
その隣で、実況マスクはホッと胸を撫で下ろしていた。
「い、イタイイタイ……」
見事にコンボを決めたレイラだったが、強烈な反撃を食らい、さらには椅子で殴られ、現在はふら付いた所をロープ越しに締め上げるタランチュラで身動きを封じられていた。
硬いロープを挟んで仰け反るレイラの背骨が嫌な音を上げている。
すると、ろざりぃぬの背後から典韋が近づき、攻撃を加えてどうにレイラを助けた。
典韋と交代して、リングから転げ落ちるように脱出したレイラ。
「大丈夫か?」
「うん」
「じゃあ、あれいくぞ。用意して……っ!?」
「――せっかくいい所だったんだけどな」
話の途中でろざりぃぬが背後から典韋に腰を掴む。
「悪いな。相方をそう簡単にやらせるわけにはいかないんでね」
「そうですかっ!!」
ろざりぃぬはそのまま持ち上げ、背後に倒れ込んで典韋の肩から背中にかけてをマットにぶつけた。
カウント3前にどうにか抜け出した典韋は、レモン汁のおかげで視界が歪む中、どうにか防衛と反撃を繰り返す。
もがいた典韋は沢山攻撃を食らいつつ、どうにか一撃加えてろざりぃぬを床へ叩きつけた。
「今だレイラ! テーブルじゃぁ〜!」
すると、レイラは横長な会議用テーブルを典韋に渡し、自身もリングに上がってきた。
レイラはテーブルの上に乗り、ぐったりしているろざりぃぬの腰を抱え込む。続いて、典韋はろざりぃぬの顎を肩に乗せ、腕を回して離さぬようしかり固定した。
そしてアイコンタクトでタイミングをはかり、レイラが手を離すと同時に、典韋は仰向けになるように前方に飛び込みながら倒れ込んだ。
典韋の腕がマットに思いっきり衝突し、衝撃がろざりぃぬの顎から首へと伝わる。
「っぅぅぅぅ〜〜〜!?」
ろざりぃぬは言葉にならない声を上げ、身体を丸めながら悶絶していた。
「どうやら、レモン汁が足らない様子ね」
ろざりぃぬに変わってスワン・ザ・レインボーがリングに上がってくるのを、典韋はぼやける視界の中で確認した。
「代わってやるよ」
「すまん」
典韋はふらつきながらフィーアと交代する。
「あら、戦ってはくれないのね」
「なんだい? 僕じゃ不満かい?」
「別に、わたくしを楽しませてくれるなら誰でもかまいませんわよ」
スワン・ザ・レインボーは挑発的な目を仮面の隙間から見せていた。
「さっきから卑怯な手ばかりちょよ」
武器を使う攻撃や、悪徳レフェリーなど、キリエは少々頭にきていた。
「前半は黎明華さん達がそれなりに押していたのですけど……」
あゆむは不安そうにリングを見つめる。
「見ていて苛々するちょよ!」
キリエは貧乏ゆすりをしながら、不平不満を漏らしていた。
つまり気づけば、試合に見入っていたのである。
「……っ!」
ふいに、キリエの視界が霞み、身体が重くなる。
それはたった一瞬。
身体のどこかで限界が近づき、異常を知らせているサインだった。
『フィーア・四条 VS スワン・ザ・レインボー』
軽やかな身のこなしで回避と反撃の打撃を繰り出すフィーア。
数回食らったスワン・ザ・レインボーだったが、反撃に繰り出した攻撃が見事に直撃し、フィーアをよろめかせる。
「いただきますわ」
ふらついた隙に攻撃を決めようと走り込んでくるスワン・ザ・レインボー。
しかし、それを待っていたとばかりにフィーアは、走り込んできた勢いごとスワン・ザ・レインボーを投げた。
「体格差をものともしないパワースラムが見事に決まりました!」
実況マスクの声が会場に響く。
するとフィーアはコナーポストの上へと昇る。
「よっし、決めるぜ!」
フィーアは親指を立てて喉の前を横切らせ、首を掻っ切るアピールをして見せた。
そして、足に力をこめると、勢いよく倒れているスワン・ザ・レインボーの腹部へ頭をぶつけに行った。
「そう簡単にはやらせませんわよ!」
だが、動けないふりをしていたスワン・ザ・レインボーはくるりと身体を回転させ、フィーアの攻撃を回避した。
標的を失ったフィーアは顔面を強くマットに叩きつけた。
お返しにとコーナーポストにスワン・ザ・レインボー昇る。
「さぁ、食らいなさい! スワン・ダイブボム!!」
スワン・ザ・レインボーはコーナーポストから思いっきり飛ぶと、強烈な膝蹴りを立ち上がったばかりのフィーアの顔面へと叩きつけた。
背中から倒れるフィーア。
スワン・ザ・レインボーはフィーアの腹を思いっきり踏みつける。
「無様ですわね」
フィーアの顔は全体的に赤くなり、鼻からだらだらと血が流れていた。
スワン・ザ・レインボーは足をどかすと髪を掴んで無理やり立たした。
「もう少し楽しませてくれないと――っ!?」
関節技をかけようとしたスワン・ザ・レインボーの腕が、逆に突如目を見開いたフィーアによって掴まれてしまった。
「させるかよ!」
フィーアはスワン・ザ・レインボーの足を捌いて転ばせとて、馬乗りになりつつ掴んだ腕を捻りながら肩に当て、白目がちになって腕を足元へと引っ張った。
スワン・ザ・レインボーの手がフィーアの肩を支点に、ありえない方向へと曲がろうとしていた。
目に涙が滲むスワン・ザ・レインボーを、ろざりぃぬがフィーアに体当たりして助ける。
「交代するのだ!」
黎明華が鼻から血を流すフィーアを心配しながらリングにあがる。
「ほら、私達も代わるわよ」
ろざりぃぬは肩を抑えるスワン・ザ・レインボーを、リング外へと押し出した。
『屋良 黎明華 VS ろざりぃぬ』
「マジカル☆ジャンボスープレックス!!」
ろざりぃぬに持ち上げられた黎明華がマットに顔面から叩きつけられる。
フォールに入るろざりぃぬ。パイプ椅子の犠牲になったシンの代わりに、レフェリーに行う学人がカウントを数える。
黎明華はどうにかカウント3を言い終わる前に抜け出すが、すぐには起き上がれないでいた。
パイプ椅子で殴られた挙句、幾度の投げ技を食らった黎明華は全身の骨にひびが入りそうなくらいボロボロだった。
「まだやるんですか? なら動けなくなるまで叩きつけてあげよう」
黎明華はよろよろと起き上がろうとするが、途中で膝から倒れてしまう。
ろざりぃぬは黎明華の腰を持ち上げ、地面に叩きつける。
「マジカル☆パワーボム!!」
マットを揺らす衝撃。静まり返った会場に響きわたる轟音。
低い短い呻き声が聞え、ろざりぃぬが手を離すと、黎明華は力なくマットに倒れ込んだ。
黎明華には観客の歓声が遥か遠くで、ろざりぃぬの侮蔑を口にした唇の動きは霞んで見えていた。
口の中に鉄の味がする。
身体が言っている。『――休め――ー休め――休んでしまえ』
もう限界なのだ……。
黎明華がゆっくりと目を閉じた。
――その時、身体が下から何度も持ち上げられた。
「諦めちゃだめちょよ! 負けを認めたらあいが許さないちょよ!」
首をどうにか動かして振り返ると、キリエが赤くなった手で何度もリングを叩いていた。
今にも乗り込んできそうなキリエをあゆむが腰を掴んでとめている。
その光景を眺めていた黎明華は、心から熱く燃えるような思いが込み上げてきた。
「まだ……負けてないのだ」
ふらつきながら立ち上がった黎明華は、闘志に燃える瞳でろざりぃぬを見つめた。
攻撃を仕掛けてくるろざりぃぬに、黎明華はカウンターでダウンを取る。
「終わらせるのだ……」
黎明華がトップロープに上る。
「カットに――」
「させるかよ!」
黎明華の攻撃を阻止に入ろうとしたジナイーダ・ドラゴ達をフィーア達が必死に止める。
そして、黎明華が勢いよくトップロープから飛び上がった。
「『必殺クイーンオブひゃっはあっ!!』なっのだぁぁぁ――!!」
前方にクルクル回転した黎明華から飛び出す強烈な踵落としが、ろざりぃぬの頭部へと直撃し、衝撃が廃墟全体を揺らした。
一瞬、足を浮かせたろざりぃぬは短い叫び声を挙げ、そのままぐったりと気絶してしまった。
黎明華は倒れ込むようにして動かなくなったざりぃぬに乗りかかる。
後はカウント3を待つだけだった。
ゴングが鳴り響き、歓声が巻き起こった。
こうして
『魔法をかけて!ガラスのくつ杯〜シンデレラのロスタイム〜』は
黎明華達の勝利で幕をとじた。
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