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リアクション
試合が終わった後、キリエの胸には一つの思いが芽生えていた。
それは『≪首なしの豪傑騎士≫レイゼルと話がしたい』というものだった。
キリエには謝りたいことがあった。たとえ許してもらえなくてもいい。
それでもこの命尽きる前にちゃんと謝罪がしたかった。
キリエが思いつめた表情をしていると、突然会場の明かりが消される。
そして明かりつけられる代わりに、スポットライトがリングの上に向けられた。
「キリエさん、こんにちは」
そこには魔法少女アイドルとしての衣装を着た遠野 歌菜(とおの・かな)と、ギターを手に持った月崎 羽純(つきざき・はすみ)の姿があった。
「今日は私と羽純くんでキリエさんのために歌を用意しました。この歌には私達と……レイゼルさんの想いが詰まっています」
キリエの肩がビクリと震える。
「よかったら聞いてください……」
歌菜と目があった羽純は小さく頷くと、緩やかメロディーをギターを引き始めた。
流れるような穏やかなメロディが会場を包みこむ。
歌菜は小さく呼吸をすると、語りかけるように、優しく、歌い始めた。
《生きる希望 生きて欲しい
ずっと傍にいてくれた あなたへの想い
どうか届いて どうか響いて
キズだらけになっても それでも生きるのは素敵だと……
僕は星夜(ほしよ)に 唄うから〜〜〜》
聞いていたキリエの目から涙が流れる。
キリエはレイゼルと見に行ったあの日の星空を脳裏に思い浮かべていた。
……歌が終わり、歌菜の綺麗な声が余韻を残しながら小さく溶けていく。
「ありがとうございました」
ゆっくりと頭を下げる歌菜に、キリエは慌てて涙を拭きながらお辞儀をした。
「それではここで私達からキリエさんにもう一つサプライズイベントをお届けします……」
「ょ!?」
キリエは歌菜が指し示した奥の部屋と続く扉を見て――言葉を呑みこんだ。
そこに立っていたのは首を取り戻した元≪首なしの豪傑騎士≫レイゼル。
キリエが想いをよせる人だった。
レイゼルは資料を調べ上げたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)におかげで、見つかった首と本体に一定の電流を流して、身体の一部としての機能を復活させることに成功したのだ。
「レイゼルざまぁぁ――!!」
キリエは鼻からも涙を流してレイゼルに抱きついた。
レイゼルは鎧の手でそっと抱きしめながら、篭った声でドレス姿のキリエを褒めた。
キリエの顔が赤く染める
「やったな!」
その様子を見ていた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は、傍にいた白雪 椿(しらゆき・つばき)にハイタッチを促す。
すると、椿は戸惑いながらも控えめなハイタッチをした。
「ねぇ、健闘くん。今度は私にも素敵なドレス作って欲しいんだけどなぁ〜」
天鐘 咲夜(あまがね・さきや)のお願いに、勇刃は二カッと笑って「もちろん!」と答えていた。
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