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リアクション
*
陽太のスナイプの後、近接戦闘を試みる仲間が続々と雪火龍の元に集った。
「前線は私が保ってみせます」
ロザリンドが言い構えると、目的を持った仲間たちが一斉に飛びかかっていった。
*
「灯、まずはリズムを覚えるぞッ!」
灯のサポートを駆使し、牙竜はロザリンドと共にドラゴンのターゲットとなり、回避に全てを注いだ。
*
雪火龍の地を震わす咆哮の後、王を死守するために小型の氷小龍が四方から急速に迫ってきていた。
「ハッ!」
雪火龍に釣られてやってきた氷小龍のうちの一匹をリンゼイは刀を突き刺した。
大型を相手にしている面々に向かう雑魚だけを相手にしようと考えていたが、こと彼女に限って言えば、そうそうに失うわけにはいかない。
「シャオさんの線香を叩き落されて虫まで増えたら、堪ったものではありません」
シャオの周りにはボディーガードがついているのだが、それでも四方八方から襲われればどうなるかはわからない。
彼女達とは更に一歩引いた状態から、リンゼイは刀を振るい、向かいそうな氷小龍をすれ違いの一撃で切り捨て続けた。
*
「何所へ往くんだ……」
雪火龍に誘われし氷小龍は親を守ろうと、それに群がる蟻の駆逐へと走る。
しかし、その前に蒼灯 鴉(そうひ・からす)が立ち塞がった。
「アスカ達の邪魔はさせないぜ」
しゃらくさいと一匹の氷小龍がその口を開けて、鴉に噛み付いた。
否、その一撃は差し出した腕に『噛み付かせた』もので、自慢の牙が鈍い音をたてて砕けた。
龍鱗化したその身体は、本物でさえも噛み砕けなかった。
逆にその硬質化した拳で頭を殴られた氷小龍が一撃で骨を砕かれ伏した。
「一匹たりとも通るわけにはいかないな」
レーザーナギナタを頭上で振るいながら鴉が群れに飛び込んだ。
*
小型モンスターが雪火龍の元へまで抜けてくる心配は皆無のようだ。
となれば、あとは親玉を叩けばいい。
「そーれじゃ……行くよッ!」
神速で駆けるアスカを、ロザリンドと牙竜に目をくれている雪火龍は追い切れず、小さな小さな人間を背中に張り付かせることとなった。
その背を彫刻刀とパレットナイフで刺し、それでクライミングのルート開拓と掴み所とするように羽の付け根まで登って行った。
「痛いだろうけど、ごめんねぇ」
鬼神力で体格的にも力も増したアスカの一撃が、龍の身体に突き刺さる。
グオオオオオオッ――!
*
「俺は脚を狙う……ッ!」
ブンッ――!
尻尾で薙ぎ払おうと雪火龍は試みるが、刀真はこれを飛び越え、着地の際は前転し素早く次の行動に移った。
バスファインダーを会得した者の動きであり、それはこの地でも十分に発揮されていた。
避けられた雪火龍は続けざまに脚で踏みつけ攻撃に切り替えるが、隙は大きく、避けるには問題なかった。
ならばあとは以下に龍の死角に入り込めるかが勝負で、刀真は低い姿勢の身のこなしで円を描くように足元を掻い潜っては死角を目指し――、
「これでッ!」
トライアンフで龍の脚を十字斬りし、すぐさま踏みつぶされないように離脱した。
「いつまで我慢できるかな……」
*
「セルマさん、俺はアスカさんの手伝いに羽に向かうよ」
正悟が言うと、セルマは頷いた。
「なら俺は未だ狙わない部分だ……」
セルマは正悟とは逆――龍の正面に対峙すると、一気に飛び上がった。
自分自身がひっくり返らんばかりに大きく仰け反り振りかぶった。
「あんまり抵抗するな……。大人しくこれで気絶でもしてくれればお持ち帰りができるんだ」
強烈な振り落としの一撃に、雪火龍の眼球が大きく飛び出そうなほどに見開かれた。
が、すぐさま睨むようにセルマに焦点を合わせた。
「く……ッ」
こちらも一撃をくらうかと確信し、ガードをとったが、続いたのは龍の呻き声だった。
*
ギュアアアアアアアアアアッ――!
「手伝いはいらなかった?」
正悟はドラゴンスレイヤーを羽の付け根に突き刺しながら、アスカを見た。
そんなことはないと彼女は首を振り、それはまた結果的にセルマに致命的な一撃を食らわせずに済んでいた。
もはや、雪火龍の羽は使い物にならなくなっていた。
人と同じように、その2本の脚で地を踏まなくてはならない――。
*
「余所見は感心しませんッ!」
ロザリンドが背面を取ると、尻尾に勇士の剣技――薙ぎ薙ぎ兜割――で三段攻撃を仕掛けたが、如何せん硬い。
だが、手応えとしては多少肉を裂けた――。
ならば睡眠が作用する可能性があるので、これはこれでよしと、一撃離脱を試み、振り暴れる尻尾の攻撃をステップを駆使して回避した。
*
「そろそろ決着と行こうぜッ!」
アクセルギアを起動させて短時間で一気にダメージを蓄積させてようと、セルマと入れ替わりに牙竜が飛び上がった。
顎、口、目潰し――。
その拳の最後に歴戦の必殺術の効果を受けて正義の鉄槌を眉間に叩き込み、その拳を捻って真空波発した。
「どんな生物だろうが、脳みそが揺さぶられればまともに行動できないだろう! 地獄がオマエの行き先だ……ッ」
グウウッ――!
プシュウウウッ――!
唸り、鼻から全ての空気を吐き出し、雪火龍は首から力が抜けるようにそのまま前のめりに倒れた。
――決着。
――歓喜。
――歓声。
だから、聞こえない――。
だから、この音が届かない――。
*
ドクン――ッ!
ロザリンドは自分の胸に手を当てた。
ドクン――ッ!
その鼓動は、自分の物ではない。
だが確かに、頭に響くように聞こえてくる。
まさかと雪火龍に目をやった。
血管が透けて見せるようで、それらの管の一つ一つに流れるはマグマの如く赤く、自分の目が確かならば、細かく痙攣をしているようだった。
「まずいぞ……」
「何?」
それは祥子を乗せたティフォンも感じ取ったようで、異変は直ぐに訪れた。
「これは……一旦引きましょう、手に負えなくなりますッ!」
ロザリンドの叫びは、耳を劈く龍の咆哮によって掻き消され、その振動は立っていることもままならないほどだった。
そして龍は、ただただ暴れた。
己が身体のすべてを地に打ち付け、転がり、のたうちまわり、全てを飲み込みながら、ただただ――足掻いた。
*
逃げる機を逸した――。
しかし、
「目を瞑れ、下を向け……ッ!」
狙撃から切り替えて前線まで押し上げてきた陽太が、雪火龍に向かってインフィニティ印の信号弾で照明弾を放つと、眩いばかりの光が辺りを包む――ッ!
その強烈な閃光が龍の動きを一旦鈍らせ、その目を奪い、新たに機を作り出した。
「こっちだよッ! この道で逃げようッ!」
月夜が銃型HCを見ながら、仲間達を誘導した。
*
「追ってくる小型種の露払いをするわ……ニャ! 後に続いて睡眠弾をッ……ニャッ!」
「任せろッ!」
フォルテッシモが六連ミサイルポットを氷小龍の追撃してくる群れに放つと、桔夜とアシュリーが続けざまに睡眠弾を撃ち、あたりは爆風と一緒に睡眠ガスが流れ、小型である氷小龍はあっけなく眠りについた。
「あ……アシュリーまで巻き込まれて寝ちゃうのかよ。しょうがないなぁ……」
何故かすやすやと寝てしまったアシュリーを桔夜が背負いながら、更に後退をかけた。
*
そして彼らは最初に陣取っていた場所に戻ると、丁度よく開いていたその窪みへと全員が身体を投げた。
「まさかここで役立つは……」
刀真の掘った穴であった――。
「怒りに身を任せていますね。このままではジリ貧ですので……どうか……」
ロザリンドは願い、祈った。
仲間達と自分で龍の身体に睡眠薬が行き渡ることを――。
*
「タイミングを見失ったけど、ここしかないよね!」
ミリィ・アメアラ(みりぃ・あめあら)が暴れる雪火龍の脚元を勇猛果敢にもスノーモービルで駆けてきた。
「ミリィか!」
「だよ、ルーマ! ここしか捕獲のチャンスはないよね!?」
高台から戦闘を見守り、機をてらっていたのだが、ついに今の今まで出てこれず意を決して飛び込んできたのだ。
「結界玉を当てて捕獲するよ!」
「俺の結界玉も使おう、乗せてくれ!」
正悟は意を決して蛸壺から飛び出ると、ミリィのスノーモービルの後ろに跨り、Uターンをかけ2人で雪火龍の元へ走った。
「タイミングを合わせて投げるぞッ」
正悟がミリィの耳元で叫んだ。
よしきたとばかりにミリィも結界玉を取り出し、モービルを加速させ、龍の股下を抜こうとして――、
『アッ』
怒りに身を任せて意図できない龍が突然尻餅をつくと、目の前の積雪が盛り上がり、スノーモービルはそのままバク転、バックドロップ――。
そして2つの結界玉が、蛸壺に向かって弧を描いて戻ってきた。
今さらながらに、睡眠効果が身体を巡って回ったのだ。
「キャッチ――ッ!」
と誰かが叫んだが、それよりもいち早く反応したロザリンドが、
「はああああッ!」
結界を炸裂させないほどの力加減で疾風突きを繰り出し、それらを全て雪火龍の元へ打ち返した。
そしてそれらは雪火龍の股下で丁度炸裂し、2重のスクエアが地面に描かれると、瞬く間にその身体を縛り付け、捕獲したのだった。
大型龍確保――300点。
小型モンスター討伐、60点。
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