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リアクション
「わぁー、このお茶美味しい!」
「ねぇねぇ、このお菓子どうやって作るの?」
エルサーラの開いたお茶会は大成功なようで、とても賑わっていた。
「このお茶の葉を入れる前にまずポットを温めておくといいんですよ」
ペシェがお茶の入れ方などを楽しそうに教えているのを見ながら、エルサーラはカップに口を付けた。
「ねぇ、エルサーラさん。これはどんな街なの?」
トリネルがノートパソコンに映ったヴァイシャリーの街を指差す。
「これはねぇ、水の都と呼ばれているヴァイシャリーという街よ」
「水の都……」
東シャンバラ王国の首都、水の都ヴァイシャリー。
湖に周囲を囲まれた島に位置するその街は、街中を水路が走り、ゴンドラが行き交う風光明媚なところだ。
画面にはゴンドラがゆったりと大運河を渡っていく様子や、大きな噴水や時計塔の写真が並べられていた。
「これはなんだ?」
ルルドが指したのは飛空挺から空や遠く下にある街を撮った写真。
「それはね、空から見た時の写真」
「何だって?! 空って登れるのか?!」
いつも以上に興奮した様子のルルドにエルサーラもつい楽しくなってしまう。
つい先ほど初めてこのノートパソコンを見た時は『これに何が入ってるんだ?』なんて訝しがっていたが、電源を入れて中に入っている写真を見せたときは、『箱の中に街がある!』『人がいる!』とかなり驚いていたようだ。
こうして事故でこの地中に落ちてこなかったら、彼らはずっと外の世界のことも知らずにひっそりと生き続けていたのだろうか。もしかしたら、人知れずに滅びの道を辿ってしまっていたかもしれない。
そう考えると、今回のこの出会いは何か必然の出会いだったのではないのだろうか。
「ペシェ、お茶のおかわりを入れて頂戴」
この出会いにはきっと何かある。
そんな予感を感じながらエルサーラはカップのふちを指でなぞりながら楽しそうに笑うのだった。
ドワーフの村で生活するようになってから数日が経った。
昼は協力してバレないように少しずつ坑道を掘り進め、夜は少しでもドワーフたちと交流を図り地上への興味を持ってもらおうと話をする。
助けられた当初に比べたら、かなり友好的に接してくれるようにはなったし、子供たちは見たことのない地上の物に興味津々のようだ。中には地上の話を聞かせてくれという大人や、外と交流を持ってもいいんじゃないかというドワーフもいたのだが、それでもやはり年長者たちの意思は固く、地上という単語を聞くことさえも嫌っている様子だった。
「やはりなかなか頭の固い連中を納得させるのは難しいな……」
鉱石採掘の仕事から戻ってきた源 鉄心(みなもと・てっしん)が夕飯の準備をしているティー・ティー(てぃー・てぃー)へと声をかけた。
「外との接触を禁じるって古い因習も、村の若い連中にはなぜそんなものをずっと守っているのか分からないって考えのやつもいるみたいだしな」
「うーん、その外に出てはいけないってやつも今ではあんまり意味がないですよね? 昔は何かあったのかもしれないですけど、話を聞いたらもう5000年も前からここのドワーフさんたちは地下で暮らしてるっていうし。大戦は終わってるっていうのに、何がドワーフさんたちを地下に縛ってるんでしょうね?」
お皿を並べながらティーはうーんと首をかしげた。
「ただいま帰りましたわー!」
バンと勢い良く扉が開いてイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)がギフトであるペンギンを引き連れて上機嫌で入ってきた。その手には魚がいっぱい入ったかごが大事そうに握られていた。
「ふっふーん、大量ですのよ!」
「わー、すごいイコナちゃん!」
「どうせペンギンに取ってこさせたんだろ」
「そうですけど指示したのはわたくしなんですからねっ!」
ティーの目を盗みながらひょいっとつまみ食いをしている鉄心の横をすたすたと通って、かごごとどんっと台所に置く。衝撃で魚がびちりと跳ねた。
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