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空が見たい!

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空が見たい!

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「とおぉぉっ!」

 相も変わらず掛け声を放ちながら元気良く洗濯をしている久遠。
 カムイとレキも加わり、マッスル石鹸であわあわにしながら元気に、だが丁寧な仕事でどんどん洗い物をすすめていった。

「むむ、やるなぁ。ボクだって渾身の脱水!」
「おおおっ! 冷たいっ!」
「ははは……」

 絞った洗濯物をぶんぶんと振り回してはしゃぐ二人を見ながら、カムイは苦笑しながら作業を進めていた。

「あー! なんか楽しそう! セレアナ、あたしも!」
「いいから、ちゃんと洗濯しましょう? セレンはできる子、でしょ?」
「ん! あたしはできる子!」

 セレンの扱いにも慣れてきたなぁと感じながら二人で協力して洗濯物を干していく。
 ピンとロープを張れば、ばさりとシーツが波打った。
 地底湖の側にある洗濯場の一部は機晶ライトで照らされている。明るさはそんなにないものの、ライトに照らされた箇所はまるで日向にいるような温かさだ。

「洗濯物はこうやって乾かしているのね」

 ふぅんとセレンがシーツにあたる熱を感じながら異文化を肌で感じ取っているのを見ながら、中途半端に伸ばされたシーツをセレアナが丁寧に伸ばす作業を強いられていた。


「でも近頃は何だか物騒よね」

 ことこととモグラのスープを煮込みながら、厨房ではドワーフのおばさまたちと御宮が話をしている。

「ホントホント! ただでさえ前から近くの坑道までモンスターが出てきたりして立ってのに、今度はまたドラゴンでしょ?」

 不穏な単語に鍋をかき混ぜる手が一瞬止まる。

「ほら、最初に行っちゃダメだって言われたでしょ? 第33坑道にはモンスターがいっぱいいるっていうし、鍾乳洞の辺りにはモールドラゴンがいるっていうのよ」
「坑道の方は道が塞がれてるから安心なんだけど、ドラゴンのほうがねぇ」
「鍾乳洞まではだいぶ遠いけど、ほら、あなたたちの列車が巻き込まれた地割れあったでしょう? あれ、モールドラゴンが暴れたせいらしいわよ」
「あら、そうなの?! いやぁねぇ、村にまで来なきゃいいけど」
「なんとかまた薬で眠らせたらしいけど、段々起きる間隔が短くなってきてるって言うから心配だわ」
「ホントよね、薬で寝てる間にまたルルドが33坑道から外に出ようとして鉢合わせちゃったりなんかしたらもう大変――」
「ちょっと!」

「あら――ごめんなさい」

「今、何て? 外に出られるのか?」

 ぼんやりと聞き流そうとして主婦の井戸端会議めいたものの中に聞こえた、あるまじき『外』という単語。
 つい慌てて聞き返してしまったものの、うっかり口を滑らせたといわんばかりに気まずい顔をしてなんでもないと返される。

「33坑道はモンスターも多いし昔は外と繋がっていたかもしれない、なんて言われてたんだけどただの冗談なのよ。33坑道に行ったら誰も戻ってこないから外にいったんだ、なんて昔は言ってたらしいけどね」

 期待させるような言い方しちゃってごめんね、と笑うが、御宮はどこかひっかかりを感じていた。
 その後も食事の準備をしている間、何事もなかったかのように振舞ってはいたのだが、一度気になってしまったら止まることなく転がっていく。

 夕飯の後、それぞれが住まわせてもらっている居住区の一角、そこに何人かが集まっていた。
 それぞれの部屋へと繋がる広間。広さはさほどないが、まるで寮のロビーのような場所に集まったのは他でもない。夕飯の際にルルドが話を持ちかけてきたからだ。

「第33坑道は外と繋がってる。あんたら地上に帰りたいんだろ? だったら悪い話じゃないはずだ」

 機晶ランプの薄明かりにルルドの目がぎらりと光る。

「――俺は一度、外に出たことがあるんだ」