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リアクション
「しかし、懐かしいなこの歌は……」
と、ティフォンが目を閉じてエンヘドゥたちの歌っている歌に耳を傾ける。
「おまえはよくこの歌を口ずさんでいた。まあ、こんなに上手くはなかったがな」
『……おまえは相変わらず、一言余計な奴のようだな』
「そういうおまえは一度死んで体は柔らかくなったようだが、頭は固いままじゃないか――人の話も聞かずに、大暴れしたんだろ?」
『どうやら、おまえには迷惑をかけてしまったようだな』
「謝るのならワタシにではなく、そこにいる者たちへ謝るんだな」
ティフォンにそういわれ、千年王は視線を下ろす。
そこには小さいながらも確かな強さを感じさせる契約者たちの姿があった。
『……戦っていた記憶はある。そうか、おまえたちだったのか……』
千年王はそういって、この場にいる契約者ひとりひとりに視線を向ける。
「――潮時のようですね」
と、天神山葛葉は千年王に向かって自身に纏わりつく瘴気を放った。
『グゥッ――!?』
千年王は葛葉の放った瘴気に侵され、その身を蝕む妄執に取り憑かれる。
。
『ウッ、ウォォォォオオオオォォォッ!!』
そして千年王は、両膝をついて頭を抱え、天に向かって恐ろしい咆哮をあげた。
その声に周囲の幻想は吹き飛び、千年王は再び苦しみ出す。
「千年王!」
そんな千年王の姿を見て、ティフォンが聖堂へと戻った大地に降り立った。
葛葉たちはその隙をつき、気を失ったMを抱えてこの場所を脱出しようと動き出す。
だが、その動きに国頭武尊が気づいた。
「チッ、いかせるか!」
武尊は通路に仕掛けいた機晶爆弾を爆発させる。
その爆発で逃げ場所を失った敵側の勢力は足を止めた。
「……くっ、私は逃げるわけには――!」
と、爆発の衝撃で目を覚ましたMがそういうと戦おうと動き出す。
だが、そんなMの首筋に辿楼院刹那が一撃をいれて、再び昏倒させた。
「悪く思わんでくれよ、M」
「……命があれば次がありますからね」
葛葉はそういうと口を大きく開き、体内の毒蜂を放って契約者たちをかく乱する。
そしてその隙に、Mを引き連れた契約者たちは壁を蹴って飛び上がり、壊れた天井から外へと逃れていく。
『オオオッ、ティ、ティフォン……よ!』
と、襲い来る悪夢になんとか持ちこたえながら、千年王は絞り出すように声を出す。
「なんだ、千年王よ!」
『我の……頼み……聞いてくれるか?』
「ああっ、いいとも。言ってみろ」
『再び、我が我でなくなる前に……友である――オッ、おおっ、おまえの手で……!』
「……いいだろう、千年王。おまえの命、このティフォンが貰い受ける!」
ティフォンの言葉を聞いて、千年王は微かに口元に笑みを浮かべた。
そしてサウザンドソードへと手を伸ばし、しっかりと柄を握り締めると大地からそれを引き抜く。
『アッ、新しき時代の英雄た、ちよ……! 世話になっ……た、な。この千年王……おまえたちのこと……忘れハ、セヌ、ゾォッ!!」
千年王は最後の力を振り絞って契約者たちにそういうと、手にしたサウザンドソードを己の体へと突き刺した。
――オオオオオオオオ……!!
腐りかけた瞳からわずかに生じていた涙が零れ落ち、千年王は慟哭する。
「千年王よ、おまえは真の王であった!」
ティフォンはそういうと、千年王と同じような咆哮を上げてその首を刎ねた。
『――!!』
千年王の慟哭が止まる。
そしてこの物語は幕を閉じた……。