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【WF】千年王の慟哭・後編

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【WF】千年王の慟哭・後編

リアクション

『アア、ウウウッ、グアアアア! 苦シィ……痛イ……頭ガ割レル――ヤメロオオオオオオッ!』

 と、歌うエンヘドゥたちに気がついた千年王は、サウザンドソードを振り上げた。

「こっちよ、千年王!」

 それを見たルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、千年王へと攻撃する。
 王はそれに反応して標的を変えると、振り上げていたサウザンドソードをルカルカへと振り下ろす。

「下がっておれ!」

 と、夏侯 淵(かこう・えん)がルカルカの前に出た。
 彼は手にした苦悶の盾を構え、歴戦の防御術を用いて千年王の一撃を受ける。
 そしてサウザンドソードと苦悶の盾がぶつかったその瞬間――盾は千年王に、一瞬だけ幻覚を見せた。

『――!!?』

 生前王が大切にしてものたちが、自我を失くした彼を諌めるように姿を現す。
 だがその幻は一瞬で消えた。

『グゥオオオオオオッ!!』

 夏侯淵を力まかせに吹き飛ばし、千年王を咽び泣くように咆哮した。
 そして腐った体に自身の爪を食い込ませ、自分を傷つける。

『痛イ、苦シイ、アヅイィィィィッッ!!』

 幻たちと歌は、千年王の中に微かにあった何かに反応したようだ。
 しかし、それはやはりほんの一瞬のことだった。
 怒りに燃える瞳を契約者たちに向け、千年王は吼える。

『我ハ、敵ヲ、敵敵敵ィオオォォォォッ!!』
「……やはり千年王を元に戻すことは無理なのか」

 暴れ続ける千年王の姿を見て、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が思わずそうつぶやく。

「いえ、まだ希望はあります」

 と、そんなダリルの元にザカコ・クメールが現れてそういった。
 そんなザカコにルカルカが聞いた。

「どういうことなの?」
「先ほど表にいる佐野さんから連絡がありました。なんでも、ティフォンがこちらに向かっているそうです」
「えっ、それってホント?」
「確認してみよう」

 ダリルはそういうとテレパシーを使ってティフォンへとコンタクトを試みた。
 そしてティフォン本人から、こちらに向かっていることを確認する。

「どうやら本当のようだ」
「ですが、悪い知らせもあります。WFの増援と思われる飛空艇もこちらに向かっています」
「なんですって!?」

 ザカコの話を聞いたルカルカは思わず声をあげる。
 そして彼女何かを思案するように腕を組んだ。

「……ザカコ。千年王やエンヘのこと。頼んでもいい?」
「それはかまいませんが、何をする気ですか?」
「私はこの霊廟から出て、ティフォンと千年王を結ぶ道を作るわ」

 ルカルカはそういうと、ダリルに視線を向けた。
 彼女のパートナーであるダリルは、主の意思を読み取り静かにうなずく。

「じゃあ、俺たちはここに残って色々やってるぜ」

 と、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がそういった。
 千年王から受けた傷はリジェネレーションで治し、芭蕉扇を振るって千年王の行動を阻害していた夏侯淵は後ろを振り返る。

「ルカルカよ、安心して行くがよい。ここはまかせるのだ」
「うん。それじゃあみんな、頼んだわよ!」

 ルカルカはそういうと、ダークヴァルキュリーの羽を広げてダリルと共に霊廟の外へ向かって飛び去っていく。
 それを見送ったカルキノスは腕を鳴らす。

「さて、俺は千年王から歌姫たちを守るとするかねぇ」
「……カルキノス、手伝うぜ」
「ヘルか、まあよろしく頼むぜ」
「自分がいることも忘れないでくださいよ」
「忘れてなんかいないぜ、ザカコ」
「――おまえら、無駄口叩いてないで俺を手伝わんか!」

 千年王の動きを止めようと必死な夏侯淵が、後ろの3人に向かって叫ぶ。
 その声を受けて、彼らは動き出した。