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【WF】千年王の慟哭・後編

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【WF】千年王の慟哭・後編

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「――ッ!?」

 と、エンヘドゥが胸元を押さえてその場に膝をつく。

「エンヘドゥさん、大丈夫ですか!?」

 そんなエンヘドゥを心配し、杜守柚がそう声をかける。

「だっ、大丈夫」
「ダメですよ、嘘ついちゃ」

 自分も苦しかったが、ティー・ティーは笑顔を浮かべてエンヘドゥにそういう。
 そして、そんなティーの服の裾を握って歌っていたイコナ・ユア・クックブックがいまにも泣きそうな顔でつぶやく。

「エンヘドゥお姉さま。あまり無理をしないで……」
「でも、皆さんが頑張っているのにわたくしだけが休むわけには――」
「エンヘドゥさん。我たちのことをもっと信じて頼ってほしいのだ」

 薫の言葉を聞いて、エンヘドゥは周りを囲む人たちの顔を見回した。
 そんなエンヘドゥの側に涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)が近寄り、傷つき、疲労している彼女に命の息吹を感じさせる。

「その通りだ。あなたはひとりで戦っているわけじゃない」
「そうよ、だから無茶はしないで」

 と、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)もエンヘドゥに近寄り、ヒールをかけながらそういった。

「皆さん、ありがとう」
「どういたしまて。でも本当に無茶はしないでね」

 ゆかりの言葉にエンヘドゥは小さくうなずく。
 そんな彼女を見て、涼介は小さなため息をついて苦笑いを浮かべた。

「まあ、医学を身につけている者から言わせてもらうと、あなたはもう十分無茶をしているけどね」
「うぅっ……ごめんなさい」

 涼介にチクリとやられて、肩をすぼませるエンヘドゥ。
 そんな彼女を見て、歌い手やそれを癒す者たちは穏やかな笑みを浮かべた。

「んッ!」

 と、周囲を囲んでいた炎を氷術で鎮めていた杜守 三月(ともり・みつき)が、炎の先から迫る殺気に気づいて征服英霊のサーベルを即座に構えた。
 するとその直後、鍬次郎の従者であるヤンキーとグラディエーター、武官が一斉に襲い掛かってきていた。

「エンヘドゥや柚には手を出させないぞ!」

 三月は素早くサーベルを振るって、その敵たちを斬りつける。
 見事なサーベル捌きに敵たちは次々と倒れた。

「ふふふっ」

 だが、そんな三月の死角から葛葉の姿が現れる。
 そして手にしたマグマブレードで三月を斬り倒すと、すぐさま印を結びエンヘドゥたちへに向かって火遁の術を放った。

「やらせないわ!」

 しかし、エンヘドゥを護衛していたゆかりのパートナーマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が、フォースフィールドを展開して炎を凌ぐ。
 そこへ起き上がった三月のサーベルが葛葉へと伸びてきた。

「くッ!」

 疾風迅雷の動きでなんとか後退り、その攻撃を避けた葛葉。
 だがさらに、そんな刹那に向かって何発もの銃弾が襲い掛かった。

「なにッ!?」

 それに気づいた刹那は声をあげ、床を蹴ってさらに後ろへと飛び退る。
 そしてエンヘドゥたちからかなり離れた位置へと着地した刹那は、思わず銃弾が飛んできた方向に顔を向けた。
 だが、先ほどまでそこにいたはずの国頭 武尊(くにがみ・たける)の姿はもうそこにはない。
 彼は光学迷彩で姿を隠し、狙撃場所から移動。相手に所在を掴ませないように行動しながら、エンヘドゥたちを守っていた。