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2 空京 オフィス・給湯室

「どうしちゃったのかしら、上は」
「支社長がパニくってるみたいよ。お茶持っていったら追い出されたって、秘書室の子が」
「えー、まじ?」
「そう言えばここんとこ、なんか不穏な空気だったよね」
「なんかねー」
「……警察の人も来てましたよね」
「警察の人か……あの人、あの後どうなったのかな」
「あの後?」
「んー、これ秘密なんだけど、なんか、裏口から連れ出されるの、見ちゃったのよね」
「ええっ、それヤバいんじゃ……」
「ヤバいなんてもんじゃないわよ。ほら、ちょっと前から見かける、人相の悪い連中がいるじゃない」
「あー、いるね……」
「あいつらに、無理矢理って感じでさぁ」
「うそー、あんた口封じされちゃうんじゃないの」
「やめてよぉ」
「あの人たち、何だろうね。ここ、あーゆー人のうろつくようなオフィスじゃなかったのに」
「言いたかないけど、サカーイさんが来てから……だよね」
「てゆうか、あたし見ちゃった」
「なになに」
「サカーイさんがあいつらに命令してるの。めちゃ偉そうな感じで」
「えええ、だって彼、普段すごい腰低いじゃん」
「だからびっくりしちゃってさー」
「エリコ知ってるのかな、サカーイさん狙いで行くって息巻いてたじゃん」
「だからさー、忠告しようかと思ったんだけど……変な誤解されてもやだしさあ」
「あーわかるわかる、あの子そうゆうとこ、あるよねー」
「……その刑事さん、一人だった?」
「ううん、サカーイさんと一緒に来た、ひょろい感じのお兄さんも一緒」
「あの人、ちょっとよかったんだけどなあ」
「えー、ああゆうの趣味?」
「白衣似合いそうなタイプじゃん。あたし、昔から博士キャラ好きなのよー。だけどさあ、聞いてよ」
「なになに」
「女の子口説いてた」
「まじ!?」
「誰を!」
「たぶん、社外の子。ちっちゃくて、スーツなんだけど七五三みたいでぜんぜん似合ってなくてさ、でも胸ばっか大きくてさあ」
「何それ、巨乳ロリってやつ?」
「しかも、廊下の隅でコソコソと」
「うわ、それは引くわー」
「……あれ?」
「なに?」
「……今ここに、見かけない美人がいなかった?」
「は? 何言ってんの」
「あれぇ……?」


3 空京 オフィス・前

 噂の『美人』は何事もなかったようにオフィスの受付の前を横切り、オフィスを後にした。
「聞いてたかい?」
 もちろんそれは美人……ではなく、黒崎天音だ。コツコツとヒールの小気味のよい音を立てて通りを横切り、そのまま路地に入り込んで言った。
「……疲れる会話だったな」
 どこからともなく現われたブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が、並んで歩きながら答える。天音が肩をすくめた。
「効率は最高だったけど……ちょっとした異次元だったよ」
 柄にもなく口調に疲労を滲ませる天音を、ブルーズは面白そうに見遣って言った。
「にしては、上手く誘導してたけどな」
 天音はいつものようにポーカーフェイスで感情の読み取れない表情をしていたが、僅かに怒りの滲んだ声で短く言った。
「二度と、しない」