シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

JYOUBUTU

リアクション公開中!

JYOUBUTU

リアクション

                                        ***


 浜辺では、すでにスイカ割りがはじまっていた。

「それッ!」

 仲間たちの誘導で、ノア・セイブレムがスイカに向かって木刀を振り下ろす。
 その一撃は見事に命中し、スイカは割れた。
 その様子を海の家から眺めていたレン・オズワルドがつぶやく。

「なかなかやるな、ノア。しかし、あれで西瓜は終わりか……もっとたくさん持ってくればよかったか」
「エル〜っ!」

 と、ヨタヨタとした緑の物体が海の家に向かって近づいてくる。
 レンはサングラスの奥の瞳を大きくして、懐に忍ばせていた武器を取り出そうとした。
 しかし、注意をしてよく見てみれば、それはスイカを大量に持った白いモモンガ――エルサーラのパートナー、ぺシェ・アルカウスだった。

「エル〜っ、どこにいっちゃったのぉ〜? スイカ買ってきたよぉ〜?」
「……ぺシェ!?」

 と、権兵衛やリースたちと共に戻ってきたエルサーラは、スイカまみれのぺシェを見て驚いた声をあげる。
 その声を聞いて、ぺシェはエルサーラの元へ近寄っていく。

「ほらエル、いっぱいスイカ買ってきたよ!」
「帰りが遅いと思ったら……ぺシェ、こんなにたくさんスイカを買ってきてどうするつもりよ」
「えへへっ、エルが海に入らずに一緒にいてくれたのが嬉しかったからつい買いすぎちゃった」
「なっ――そっ、そんなの理由にならないわよ? まったく、しょうがない子なんだから」

 エルサーラは口ではそういいながらも、どこか嬉しそうにして顔をそむける。
 するとその視線の先に、すでに割られたスイカが見えた。

「あら、もう割れちゃったの?」
「そ、そうみたいですね」

 エルサーラに連れられてここまでやってきていたリースは、どもりながらもそういう。
 そしてそんなリースに続いて権兵衛が口を開いた。

「でも、西瓜ならまだたくさんありますよ」
「そうだね。僕が買ってきたスイカを使うといいよ」

 ぺシェはニッコリと笑ってそういった。

「……まあ、そうね。どうせ私とぺシェだけじゃ食べられる量じゃないんだし、皆で遊んでから食べましょう」

 エルサーラはそういうと皆に声をかける。
 すると新たなスイカの登場に、スイカ割りで遊んでいた面々は歓声をあげた。


                                        ***


「こっち、こっちだよ〜、エル!」

 手をぺしぺしと叩きながら、ぺシェがエルサーラをスイカへと誘導する。
 目隠しをしてふらふらとした足取りのエルは、その誘導に従って手にした木刀を振り上げる。

「きゃー、エル! スイカはあっちだよ!」

 と、ぺシェは自分に向かって木刀を振り上げるエルから逃げながらそういった。

「あっちとかこっちとか……どっちなのよッ!」

 エルサーラはそう叫ぶと木刀を振り下ろす。
 その一撃は空しく砂浜を叩いた。
 それを見て、権兵衛が楽しそうに笑う。

「ハハハッ、残念でしたね」
「う〜っ、ちょっとぺシェ! ちゃんと誘導なさい!」
「ぼっ、僕のせいなの?」
「そうよ、ほら見なさい!」

 エルサーラがそういって指差した先では、レリウス・アイゼンヴォルフが隙のない一撃で見事スイカを真っ二つにしていた。

「れっ、レリウス……おまえ、よく誘導なしでスイカの位置がわかったな?」

 目を皿のように丸くしたハイラル・ヘルがそういった。
 すると、目隠しをずらしたレリウスは真面目な顔つきのまま口を開く。

「殺気を感じれば簡単なことです」
「はぁっ、殺気ィッ? えっ、ちょっ、おまっ、なにいってんだ? 相手はスイカだぞ!?」

 ハイラルは混乱して頭を抱える。
 そんなふたりの会話など聞こえないぺシェは、自分の誘導が悪いのかと思ってしょんぼりと肩を落としながらいった。

「うーん、ホントだね。次はがんばるよ」
「そうですそうです。皆さんは生きてるんですから、次なんていくらでもありますよ!」
「……権兵衛にそう言われると説得力があるのぉ」

 ぺシェに誘われて一緒にスイカ割りをしてアリエティは苦笑いをうかべる。

「さっ、次は権兵衛の番よ」

 エルサーラはそういって目隠しと木刀を渡す。
 だがそれを手にすることができない権兵衛は、木刀を宙に浮かせた。
 それを見たぺシェは目をキラキラと輝かせる。

「うわーっ、すごいな。どんなマジックなの、これ!」
「まじっく? はて? そのようなものはよく存じませんが、これも幽霊のなせる業ですよ」
「……幽霊? やだなぁ、そんな冗談をいわないでよ」

 ぺシェはあははっ、と笑う。
 どうやら彼は権兵衛が本物の幽霊であることを信じていないようだ。
 そんなぺシェは権兵衛に「ぐるぐる回って」というと、さっそく誘導をはじめる。
 だが、その誘導も失敗に終わり、権兵衛の一振りは空しく浜辺に打ち付けられた。

「失敗しましたか……結構難しいものですね」

 権兵衛はそういながら、アリエティに木刀を渡す。
 それを受け取ったアリエティは目隠しをしてしっかりと木刀を握った。

「ふふふっ、ふたりともだらしないの……このワタシが一撃でしとめてやるのじゃ!」

 アリエティはそういって10回ぐるぐると回ると、スイカに向かって歩き出す。

「アリエティさん、こっちだよー」

 スイカの近くで手をぺしぺしと叩いて、アリエティを誘導する。
 その声を聞いて、アリエティは勢いよ木刀を振り上げた。

「もらったァッ、そこじゃぁぁぁッッ!」
「えっ、あれ? 目の前に木刀……」

 ぼこっ!

「手ごたえありじゃ!」

 アリエティがそういって目隠しをとると、木刀が頭にめり込んだぺシェの姿が目に飛び込んできた。
 それ見て、アリエティは体を硬直させる。

「……いっ、痛いよぉ」

 ぺシェはそうつぶやくと、目に大粒の涙を浮かべた。