リアクション
イリーナからその問いかけをされた瞬間、羅儀はまるで雷にでも打たれたかのような衝撃に震えた。口を開いて言葉を発しようとするも、空気だけが虚しくこぼれていくだけだった。自分が今まさに言おうとしていることの恐ろしさのあまり、理性は言葉を発しようとしているのに、本能は頑なに言うことを拒否してしまっているのだ。
「外部からの供与――まさか……そのシステムを供与したのは……」
それでも強引に言葉を発して問いかけた羅儀から目をそらさずにイリーナは答えた。
「そうよ。これで繋がったでしょう? そのシステムを供与したのは当時、イコンの開発に躍起になっていた九校連の上層部――各学校の要人たちよ。そして、その結果は知っての通り。学生を実験台にした挙句、何の関係もない人々を大勢巻き込んだ大惨事を引き起こしたとあっては、九校連にとっては致命的な不祥事よ。そうでなくとも、契約者たる学生が一般人に対して凶行をはたらいているんだもの。それこそ、パラミタに存在する地球資本の学校に対して懐疑的あるいは否定的な見解を示す連中はここぞとばかりに各学校を潰しにかかるでしょうね。だからこそ、事件の真相を隠す為に『わかりやすい悪役』が必要だった――もっともらしい筋書きが書けて、普通なら誰も疑わないような悪役が。結局、九校連は一連の事件を鏖殺寺院がやったことにしてしまおうと決めたわ。そして、この事件は『凶悪なテロリストによる民間人への無差別攻撃』というわかりやすい事件として処理され、公式発表されたの。自分たちへの咎めを逸らすため、九校連はまさに『偽りの大敵』を用意したのよ」
一息に告げると、イリーナは息継ぎもせず更に言い放った。
「休日を利用して件のイベントに行った私の夫と息子は、あの事件で殺されたわ。そして、私は九校連への復讐を誓った――」
はっきりと言い切ったイリーナ。彼女の言葉を受け止めた羅儀たちは、静かに息を呑んだのだった。