リアクション
イルミンスール魔法学校、実験室。
「……」
ブリジットの自爆を目の当たりにしたロズフェル兄弟は放心したようにドールハウスを見ていた。当然ドールハウスは修復不可能なまでに破壊されていた。
「二人共、放心状態だよ」
「銃で一つ脅そうと思っていたが」
ルカルカとダリルはため息混じりにロズフェル兄弟を見ていた。
「ほら、元気を出して。悪い事ばっかりじゃなかったんだから。今度は発動範囲も超限定して作れば良いよ。今回は冒険だったからホラー仕立てのアクションとか」
ルカルカは明るく励ました。
「またそんな事を言って調子に乗らせてどうする」
ダリルは未だ放心状態の兄弟を見ながら言った。
「ダリルも興味あるでしょ。きっと面白いよ。他人に迷惑をかけちゃだめだけど」
ルカルカは笑顔だった。
「……」
二人は放心状態のままルカルカに親指を前に突き出していた。懲りてない悪戯心が一欠片ほど残っていたらしい。
ロズフェル兄弟に巻き込まれた他の人達も無事に帰還を果たし、それぞれの日常に戻っていた。
「さて、ボクは」
元の世界に戻るなりアゾートはロズフェル兄弟について学校に知らせるため動いていた。
「アゾートさん、無事だったんだ」
「どこかに行くのか?」
ヴァイスとセリカがやって来た。
「あの子達の事をね」
アゾートは苦い顔で答えた。
「そりゃ、大変だ」
ヴァイスは肩をすくめながら言った。
「……もう少し厳しくすれば良かったか」
セリカは自分の修行に少し厳しさが足りなかったかと思っていた。あれ以上厳しくすれば、瀕死の回数が倍に増えてしまうのだが。
「でもみんな無事で良かったけどね。時間は大丈夫?」
アゾートはそう言い、ヴァイスが忙しいと言っていた事を思い出していた。
「あぁ、もう行くよ」
ヴァイスはそう言ってセリカを連れて行ってしまった。
「……後始末をしないと」
二人を見送ってからアゾートは歩き始めた。
「何とか帰る事が出来たか」
「良かったでございますね」
樹とジーナは帰還出来た事にほっと安心していた。
「こた、おもしろかったれす」
コタローは少し楽しかったようだ。
樹達はコタローが読みたかった本を借りてから帰宅した。
「早く画集を借りて画材店に行かなきゃ」
「また巻き込まれない内に帰った方がいいね」
アスカとホープは急いで用事を済ませ、帰宅を急いだ。
「……何とか戻れたみたいやな」
裕輝は、見知った周囲の様子を確認して現実世界に戻る事が出来た事を確認した。
「まぁ、それなりに楽しめたか」
裕輝はそれなり楽しめたようだった。
記憶を失っていた人達も無事取り戻していた。
「……何かおかしな感じだったね。カンナは変わらなかったけど」
ローズは安心したように息を吐いていた。
「ロゼの荒っぽさは凄かったな。シスターっていたら普通は後方支援だぜ」
シンは普段の何倍も荒々しかったローズを思い出していた。
「シンも好戦的で凄かったよ。それでカンナ、詩はどうなったの?」
ローズはシンに言ってからカンナの話題を上げた。
「……勇敢なるシスターと神父の信仰と平和の戦いとか」
カンナはシスターローズと神父シンの戦いのイメージを言葉にした。
「ギャドル、大丈夫かのぅ」
「覚えてるか?」
ルファンとウォーレンはギャドルの記憶の無事を確認した。
「覚えているぞ」
ギャドルはしっかりとうなずいた。
「ギャザオ、覚えてるんだ。三つ編みの将だったこと」
「……また言うか」
イリアとギャドルはいつもの口喧嘩を始めた。その様子は仮想世界でも現実世界でも同じだった。
「本当、おまえ等変わらねぇな」
ウォーレンは面白そうに口喧嘩を眺めていた。
この後、アゾートの知らせによってロズフェル兄弟は再び説教を受ける事となった。放心状態のまま説教を受け、夜にはヒスミは魔王として痛い目に遭った事や大爆発をキスミは自分を襲う熊やゴーレムやら地獄の修行や大爆発の悪夢を見ていた。おかげで一週間ではなく一ヵ月はしおれた花のように大人しくしていたという。その一ヵ月が過ぎると二人は、徐々に時間をかけて元気を取り戻し、愉快に走り回るまでになった。多少、心の方にダメージは残ってはいるが、これまで以上にますます打たれ強くなったようだった。
今回のシナリオを担当させて頂きました夜月天音です。
参加者の皆様、本当にお疲れ様です。
それから、楽しいアクションをありがとうございました。
あまりにも懲りないロズフェル兄弟は心身共にダメージを受けつつもなぜだか多少打たれ強くなりました。悪戯は駄目だと頭では分かりながらも心は分かっていないようで現金な兄弟です。ひたすらに性格矯正には根気がいるのか、説教に慣れているのか、とにかく悪い兄弟ではないのでそれだけはよろしくお願いします。
相変わらず戦闘の描写が悲しくなるほど拙くて申し訳ありません。
それでもほんの少しでも楽しんで頂ければ幸いです。