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 礼拝堂。

「教会は大丈夫?」
「これからどうすんだ?」
「ギャドルはどこにもいなかったのぅ」
 イリアやウォーレン、ルファンが教会の見回りに現れた。

「教会は大丈夫ですよ、自警団の皆様。お疲れ様です。何か飲み物でも用意しますね」
 食堂でカンナと話していたローズが現れ、自警団を迎えた時、轟音と共にドアがぶち破られ、魔王軍が大量に入って来た。
「……何かあった?」
 騒ぎを聞きつけたカンナがひょっこり姿を現した。
「魔王軍です。あなたは食堂に避難して下さい」
 ローズは真剣な顔でカンナに避難を指示した。
「……あぁ」
 カンナはローズの気迫に押されて食堂の方に避難した。
「何の騒ぎだ」
 ざんげ室にいたシンが慌てて礼拝堂に駆けつけた。
「自警団として市民の生活を守るぞ!」
 ウォーレンは、槍を構えすっかり自警団役を楽しむ。
「こんな所行をして、あなたたちのせいでますます信仰が薄れてしまうのです」
 悲しそうに沈むローズは静かにシスター服のスカートからマスケット銃ヤガミ・ディバイスを取り出し、
「改心しやがりなさい! いくぞコラァ!!」
 と叫び、真っ先に敵陣に突っ込んで発砲したり殴り倒したり。
「……シスター」
 イリアはまさかの様子に少し驚いていた。
「何、ぼうっとしてやがるんだ。いくぜ、オラァ!!」
 シンもローズに続いて特攻。
「キュッとシメんぞ! 悔い改めやがれ!」
 殺気をはらんだ『お引き取り下さいませ』で魔王軍をぼこぼこにして追い返していく。
「おもしれぇな」
 ウォーレンはシスターと神父の戦いぶりを面白そうに眺めるもすぐに加勢。
 ウォーレンは獣槍レヴァ・クロディルでですぐさま追い払い、イリアは『アシッドミスト』で後衛からの魔法攻撃、ルファンは三節棍や防御や返し技など柔を基本とした武術で流れるように戦った。

「……何だ、だらしねぇな」
 全滅させられた部下達に呆れて出て来たのは、魔王軍の将だった。
 しかし、ルファン達にとってはそうではなかった。

「この声は」
「ギャザオ!」
「いねぇと思ったら、おまえ魔王軍にいたのか」
 ルファンは声がする方を向き、聞き覚えのある声にイリアは名前を呼び、ウォーレンはまさかの展開に少し驚いていた。

「……自警団もいたか」
 ちらりとルファン達を見るギャドルの様子がいつもと違っていた。仲間ではなく敵を見る忌々しげな目。
「……わしらの事、覚えておらぬのか」
 ギャドルの様子からもしやと思ったルファンは訊ねた。
「は、覚えていないとは何のことだ。俺様は魔王軍の将だ。目障りな教会を始末しに来た」
 『威圧』はギャドルをまさに魔王軍の将に見せ、ルファン達に答える声にも敵意が混じっていた。
「この世界に来たショックで記憶を失ったという事かのぅ。記憶といえば……」
 ここでルファンはちらりとローズ達の方を見た。よく考えれば二人の様子も何か違うような。

「やれるものならやってみやがれ!」
「改心させてやりますよ!」
 シンとローズは臨戦態勢で挑発。

「魔王軍の将ってほんっとう、ギャザオ意味分かんなーい!」
 イリアは肩をすくめ、仲の悪さを爆発させる。
「何だ小娘、俺様の言葉が理解出来ないとはよほど頭がいかれているな」
 記憶を無くしていても不仲は不仲らしい。
「いかれてるのはそっちでしょ。三つ編みの将って威厳が全く無いもん」
 イリアはギャドルのお気に入りを馬鹿にした。
「記憶無くしててもお前等変わらねぇな!」
 ウォーレンはそんな二人の様子を笑いながら眺めていた。
「……俺様の三つ編みを馬鹿にして無事に済むと思うなよ、小娘が!!」
 馬鹿にしてはいけない事を馬鹿にされたギャドルの声に殺気が満ち始める。
「馬鹿にしてなんかいないよ。イリア、事実を言っただけ」
 口が達者なイリアは口喧嘩から降りない。
「許さん!!!」
 完全にキレたギャドルは、自分を侮辱したイリアに襲いかかり始めた。
「わぁっ」
 イリアは振り下ろされたギャドルの『ドラゴンアーツ』をするりと避けた。
 ギャドルの攻撃の威力は凄まじくイリアがいた所の石壁には大きな空洞が出来ていた。
「残念、ギャザオ」
 イリアは勝ち誇ったように言った。
「この小娘が!!」
 イリアの様子がますますギャドルを怒らせてしまい、イリアを追いかけ回す。その度に教会に風穴が生まれる。
「……これはまずいのぅ」
 二人のやり取りを眺めていたルファンが動き始めた。これ以上放置は出来ないと。
「そこまでじゃ」
 ルファンは、三節棍で剛を中心とするギャドルの攻撃を受け止め、さらりと流した。
「さすが、ダーリン!!」
 イリアは手を叩いてルファンを応援。
「止めねぇと教会がぶっ壊されるな」
 ウォーレンも槍を構え、続いて参加するも狂戦士系のギャドルを止める事は難しかった。
 そして、
「……まとめて片付けてやる」
 ギャドルはそう言うなり、口から炎を吐き出し、辺り一面を火の海に変えてしまった。
「神聖な教会に何てことを」
「待ちやがれ!!」
 ローズとシンはギャドルに突撃しようにも火が邪魔で動けない。
「こんな炎、イリアがすぐに消すよ!」
 イリアは『氷術』を使い、消火活動を始めた。
「小娘!!」
 邪魔をするイリアを倒そうとギャドルが動き出した。

 その時、クロウディアの店で買い物を終えて歩き回っていたフレンディス達が火事を発見してやって来た。
「煙が見えましたが、何かお手伝い出来る事はありませんか」
 何か手伝いが出来ればとやって来たフレンディス。
「フレイ、左手に気を付けろ」
 危険な左手を気にかけるベルク。
「ご主人様、危険です!」
 フレンディスを心配するポチの助。

「何だ!?」
 新たな乱入者に振り向くギャドル。

「あっ!」
「フレイ、左手だ!!」
 思わず驚くフレンディスにベルクは必死の指示。
「は、はい」
 フレンディスは千里走りの術でギャドルの攻撃が来る前にベルクの指示を達成した。
「……な、一体」
 フレンディスの左手に触れられたギャドルはゆっくりと崩れるようにその場に倒れてしまった。

「ギャザオが倒れた!? 何したの?」
 イリアはいきなり口喧嘩相手が倒れた事に驚き、フレンディスに事情を訊ねた。
「あの、この腕輪です」
 フレンディスは能力を使って外れてしまった腕輪を見せながら事情を説明した。心なしか腕輪は少し色褪せていた。
「すげぇな」
 ウォーレンは、腕輪と倒れているギャドルを見比べながら感心していた。
「助かったようじゃ」
 何はともあれギャドルを傷付けることなく大人しくさせる事が出来て一安心のルファン。

「ご主人様、早く行くのです。勇犬としての僕の活躍を見せるのです」
 フレンディスに格好いいところを見せたいポチの助は待てずに歩き始めた。
「あ、ポチの助、待って下さい」
 フレンディスは慌てて勇犬ポチの助を追った。腕輪を大切にそっと片付けて。
「悪いが、もう行く」
 ベルクはみんなに一言言ってから追いかけた。
 フレンディス達と入れ違いにオデットが教会にやって来た。

「あの、自警団を知りませんか」
 自警団を探し回ったオデットは何とかルファン達自がいる教会に辿り着けた。
「わしらがその自警団じゃが、何か用かのぅ」
 ルファンが代表して答えた。
「城と街の平和を取り戻すために力を貸して貰いたくて」
 オデットは身分を隠し、魔王討伐の助力を得られないかと訊ねた。
「あなた、もしかして勇者様」
 ローズは待ちに待った勇者の登場に顔を輝かせた。
「……そのようなものかな」
 オデットは少し迷いながらもうなずいた。
「それなら私達が同行します。教会も破壊され、人々の信仰心も薄まるばかり。ここはもう魔王軍を討伐するしか道がありません。どうか、私達も同行させて下さい」
 ローズは殺気に満ちた声で同行を申し出た。教会をめちゃくちゃにされたのだから仕方は無いのだが。
「私達もってオレもか」
 シンはいつの間にか自分も同行する事になっている事に声を上げた。
「そうですよ、神父」
「……あぁ」
 殺気立ったローズの様子にシンはうなずくだけだった。

 ここで食堂に避難していた流浪の吟遊詩人のカンナが登場し、
「あたしも同行していいかな、王女さん」
 オデットの正体を暴いた。

「王女?」
 一斉に視線が踊り子のオデットに集中する。
「あたし、旅をしている時に耳にした。魔王軍に追い出された姫とそっくりの踊り子がいる噂」
 カンナは流浪の間で聞いた噂を話した。
「……えぇ、その通り。私はオデット姫、この街に平和を取り戻すために舞い戻って来たの」
 隠していても仕方無いのでオデットは自分の身分と目的を明らかにした。
 そして、オデットに同行するのはこの三人に決まった。

 ルファン達自警団は、
「街の事はわしらに任せて大丈夫じゃ」
「イリア達に任せて!」
「ギャドルの事もあるしな」
 街に残って魔王軍と戦う事にした。何せ未だ意識を失っているギャドルの事もあるので。

「ありがとう」
 オデットは自警団に礼を言い、教会を出た。
 オデットについて行くローズ達の様子は様々だった。
「早速、行きましょう」
「おう」
 果敢なローズとシンは戦う気十分。
「魔王軍と勇者軍、舞い戻った王女の詩か、いいかもしれない」
 カンナは良い恩返しを思いついていた。この戦いを詩にしてその一部分にローズとシンを登場させればお礼になるだろうと。

 オデットとローズ達は、途中でエース達と合流し、城へと向かった。
 ルファン達は、ギャドルを教会のベッドに寝かせてから自警団として活動を始めた。なぜなら、ブリジット自爆の計画が知らされたからだ。