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リアクション
★ ★ ★
「ああ、姉さん、ありましたよー。停止してるみたいです」
「見つけた? よおし、さっさと売り払うのよ。すぐに運んできなさい」
エメラルドに言われて、アクアマリンが草むらに奇妙な格好で突っ伏していた機晶姫を回収していった。
元々は、近くの神社の宝物庫の奧にガラクタと一緒に放置されていた物だ。そこに忍び込んだアクアマリンたちが、祭りで売れそうな物として勝手に盗み出してきたのであった。
「ふーん、骨董品屋か。いいやん、いかがわしゅうて。祭りってのは、こういうのがあるやさかい、面白いんやで」
「えー、見るからに胡散臭いじゃねえか」
「いやいやいや、もしかしたら、掘り出し物があるかもしれんやろ」
もの凄く懐疑的な扶桑の木付近の橋の精 一条(ふそうのきふきんのはしのせい・いちじょう)に、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が楽しげに言った。
「ほら、この機晶姫なんか見てみい。ごっつ面白そうやんか」
むしろの上に正座させられている機晶姫を指さして、瀬山裕輝が言った。
「いやあ、お客さんはお目が高い。これは、古王国から伝わる至高の機晶姫、逸品中の逸品です!」
ここぞとばかりに、アクアマリンが口からでまかせをならべた。
「いやいやいや、それはねーって、絶対!」
その機晶姫を見て、扶桑の木付近の橋の精一条が思いっきり否定した。これはもう、胡散臭いというのを超越して、何か危ない香りがする。
「でもさあ、面白そうやんか。よし、買った!」
「ちょっ! 信じらんねえ。こんなのガラクタだよ、ガラクタ。動かなかったらどうするんだよ」
「それもそうやな。ほんまに動くんか、これ?」
扶桑の木付近の橋の精一条の言葉をいれて、瀬山裕輝がアクアマリンに訊ねた。
「失礼ね。動くに決まってるじゃない。さっき確認済みよ!」
エメラルドが言うが、そのせいで暴走して逃げだしたのは内緒である。
「とりあえず、再起動させますので、動いたら買ってくださいね」
そう言って、アクアマリンが何やら手に持ったリモコンのような物を操作した。
『リスタート……。モニタリング……スタート。……ケルトンフレーム……グリーン。シナプ……イン……70……80……エラー。オルタナティブ……キット……アドオン。80……90……100。システ……スタビライズド。……タチェック……ラー。リコンストラクショ……データ。リデファイ……ソナルデータ。ヘンゼル・オルバーツ(へんぜる・おるばーつ)』
少しノイズの混じった聞きとりにくい呪文のようなものをつぶやいて、機晶姫、ヘンゼル・オルバーツが立ちあがった。
『生体反応……、感知。地域殲滅型、……用機晶姫……ヘンゼル・オルバーツ、戦闘を開始……』
言うなり、先ほどテラー・ダイノサウラスにしたように、ヘンゼル・オルバーツが瀬山裕輝にむかって突っ込んできた。
「おっと、こんな所に小石が……」
繰り出された拳を、しゃがみ込んだ瀬山裕輝がひらりと避ける。
「あぼあ……。だから、危ない……って」
瀬山裕輝の後ろに立っていた扶桑の木付近の橋の精一条が思いっきり殴られて、大の字にひっくり返った。
攻撃をいきなり躱され、しかもターゲットが入れ替わっていたことにヘンゼル・オルバーツが困惑する。
「大丈夫でっか?」
瀬山裕輝が、飄々と扶桑の木付近の橋の精一条をだき起こす。そこへ、ヘンゼル・オルバーツが再び攻撃してきた。
「何しまんのや」
「ぐえ……」
くるりと振り返った瀬山裕輝の腕の中で、扶桑の木付近の橋の精一条が人の盾となった。そのまま二人羽織よろしく、小柄な扶桑の木付近の橋の精一条を振り回すようにしてヘンゼル・オルバーツの攻撃を防いでいく。まあ、扶桑の木付近の橋の精一条としてはたまったものではない。
「なかなかやるわね」
エメラルドが感心する。
「いや、姉さん、あれって人としてどうなんですか!?」
最低だと言いたげに、アクアマリンが瀬山裕輝を指さした。なんだか騒ぎになってきたようなので、頃合いを見計らって姉弟はさっさとその場からとんずらしていった。
「必殺、地祇アタックやあ!」
なんだか適当なことを言ってヘンゼル・オルバーツが身構えたところへ、扶桑の木付近の橋の精一条の手を持った瀬山裕輝が、羅刹の武術を使って強烈な一撃をヘンゼル・オルバーツに見舞った。
また吹っ飛ばされたヘンゼル・オルバーツが静かになる。
「なんや、けったいな奴やなあ。だが、おもろい」
にんまりと悪いことを考えているような酷い笑みを浮かべると、瀬山裕輝はヘンゼル・オルバーツと扶桑の木付近の橋の精一条を担いで運んでいった。
「あっ、代金……いやあ、儲けたわ」
瀬山裕輝が未払いに気づいたのは、ずっと経ってからであった
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