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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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「まだまだ作りますわよ。料理は一度に沢山作った方が美味しいですわ」
 『調理』を持つユーリカは美味しい料理を大量に作り出していく。ユーリカ自身料理は一度に沢山作る方が美味しいと信じているのだ。
「そうだな。親睦会でどれぐらいの人数が参加してどれぐらい食べるか分からないからな」
 近くで調理をしていたシンが答えていた。シンもまた大量に食べ物、飲み物を作っている。『調理』を持つシンの料理は当然美味しい物ばかり。
「まだまだ足りませんわね」
「キスミの奴には負けられねぇからな」
 次々と大量の料理を作り出していくユーリカとシン。
「まぁ、すごい量でございます。どんどん運ぶでございますよ」
 大変なのは給仕役のアルティア。何往復もしなければならない状況にびっくり。
「運ぶ時に何かこういうものを作ってというリクエストがあれば聞いて来て下さい。わたくしとお父様がお応えしますので」
「頼むよ」
 とミリィと涼介は手を休めずに料理を運ぶアルティアに伝言をする。
「オレも協力するぜ」
「……イリアも大丈夫だよ」
「それは楽しそうね」
 シン、イリア、ローザマリアも涼介達の案に賛成する。
「お任せでございます」
 そう言ってアルティアは慌ただしく料理をテーブルに並べに行った。

「あの、大丈夫でしょうか?」
 葡萄のふるふるゼリーを作っていたミリィはビクつきながら料理をしているイリアが心配になって声をかけた。少しでも気を紛らす事が出来ればと。
「大丈夫、大丈夫。わぁ、美味しそうなゼリーだね」
 イリアはミリィのおかげで多少のビクつきがあるものの少しだけ気分を逸らす事が出来た。
「はい。お父様直伝のグレープフルーツのふるふるゼリーを参考にしたものですわ。ゼラチンの量をギリギリまで減らす事で口当たりが蕩けますわ。どうですか?」
 そう言ってミリィは一つイリアに差し出した。
「……それじゃ」
 イリアはぱくりとゼリーを口の中へ。
「蕩けてるよ。もう一つ、いい?」
「いいですわよ」
 あっという間に食べ終えたイリアはミリィからもう一つゼリーを貰い、イリアが使う材料を奥で用意しているルファンを呼んだ。
「ダーリン、食べてみてよ、これ美味しいよ!」
「ほぅ、ゼリーじゃな。ではお言葉に甘えて貰おうかのぅ」
 イリアに呼ばれたルファンは急いで戻って来て渡されたゼリーを食べる。
「どうでしょうか」
「口の中で蕩けるのが何とも言えぬ」
 感想を訊ねるミリィにルファンは嬉しい感想を口にする。何せ『調理』を持つミリィの最高のゼリーなので。
「ありがとうございます」
「お礼にイリアの料理を一つどうぞ!」
 イリアは、美味しいゼリーと少しだけ幽霊から気を紛らわせてくれたお礼にと。
「これを貰いますわ」
 ミリィは可愛らしいお花の形をしたチョコを一つ選んで口に入れた。
「甘さ加減が絶妙でとても美味しいですわ」
 とミリィ。同じく『調理』を持つイリアの作ったチョコも極上の味。
「ありがとう! ダーリンも食べてみて!」
 イリアはハートの形のチョコをルファンに渡した。
「さすがイリアじゃ」
「ありがとう!」
 食べたルファンの感想に大喜びのイリア。

 そうやって浮かれているイリアの耳元に
「チョコをお〜く〜れ〜」
 おぞましい声がささやく。

「ひゃぁっ、ダーリン何かいるよ! あぁんもう、最悪!!」
 イリアは勢いよく飛び上がり、ルファンに抱き付いて周囲を見回すも誰もいない。少しだけルファンに抱きつけて役得と思っていたりするも恐怖の方が大きい。
「……このような事をするのは一人しかおらぬ」
 ルファンは周囲を見回して人数が一人足りない事を確認後、見張りとして立っているイグナに静かな合図を送った。
 イリアをからかってから音を立てずに潜む何か。

 合図を受け取ったイグナは音を立てずに近くにいたアルティアに合図。
 アルティアは静かに近遠に出番を伝えに行くも無言。どこに耳があるのか分からないので。
「もう出番ですか」
 無言でも役目は分かる。近遠は現場へ行き、『見鬼』でキスミの居場所を見破り、潜む何かに気付かれないように場所を知らせる。
「……予想通りかな」
 場所を知るなり、ローズは対双子薬の入ったドレッシング容器を手にし、勢いよく振りかけた。

「ひゃぁっ」
 悲鳴を上げて潜んでいた何か、霊体となったキスミが姿を現した。

「な、何で見えるんだよ」
 強制的に姿を晒されたキスミは大慌て。

 そこに
「またろくでもない事をしてるねぇ。そこに大人しく座る」
 飲み物を用意していた北都が駆けつけ、その場に大人しく正座するよう指示をする。
「……ろくな事ってというか何をかけたんだよ」
 指示通り正座をするも文句を口にするキスミ。
「ほら、迷惑をかけた人に謝るんだよ。そうでないと君の顔がどうなるか」
 謝る様子の無いキスミに北都は言葉よりも多少効果的な説教を用意していた。ちなみに薬の事は話さない。話せば悪さをするので。
「えっ!?」
 北都の言葉で急いで自分の肉体に駆けつけるキスミ。

 そして、
「ちょっ、何してんだよ!!」
 悲壮な声を上げる。白銀が楽しそうにキスミの顔を綺麗にメイクをしていたのだ。
「さっき、おまえがしようとしてた事だぜ。なかなか素敵じゃねぇか」
 白銀は手を止める事なく、手を動かしている。
「マジでやめろって」
 キスミは必死に白銀を止めようとするも霊体なのですり抜けるばかり。
「ほら、早く謝らないとどんどん綺麗になっていくよ」
 北都の容赦の無い言葉。
「うぉ、すげぇな」
 シンが料理をしながら綺麗になっていくキスミの顔を面白がっていた。
「……分かったよ」
 キスミは観念してイリアに謝りに行こうとした時、背後から
「……おやおや、キスミさん、あなたもこちらに来ましたか……」
 ブリジットが現れ、キスミの肝を冷やした。
「ひゃっ!? って、あぁ、爆発、ゆ、幽霊?」
 架空世界での冒険で爆発して死んだと思っていたため本気のびっくりのまま肉体に帰還した。