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シャンバラの宅配ピザ事情

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「そういえば、大久保君はなにをやっているのか知らないかい?」
 ランチタイムの忙しい時間帯をこなして、注文もまばらになり始めた時間帯に店長は誰かを探るかのように星姫と偲に聞いて来た。
「いえ。私達は知りませんけど……」
 二人は、ユーシスの入れてくれた紅茶を飲みながら、先ほど出たアイスクリーム屋の話題で盛り上がっている最中だった。
「なんか最近、配達から帰って来て更衣室で何かを作っているんだよね。聞いても教えてくれないし……」
 はぁ。と、店長はため息をつくと二人に軽いお礼を言ってその場から離れた。
(とりあえず、バックヤードに戻ってサダルスウド君と考えてみるか)
 と、思いながら店長はバックヤードの入口のドアを開けた。
 中に居たのは、裁縫をしているレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)とメイド服の肩の部分を縫おうとして糸に玉留めをしている大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が居たからだ。
 店長の姿を見たレイチェルは、慌てたように店長の腕を引っ張ると部屋の中へ引き込み、入口のドアを閉めた。
店長の口が開く前に、泰輔が何か言い訳を言おうとするが、どう言い訳をしようかと悩んでいると店長がポンと手を叩いた。
「そうか。お前はメイド服を着てこの店を盛り上げようとしているのか」
「えっ!? ちゃいます。これは……その……」
 店長は泰輔の言いにくそうな表情を見て、黙っていた。
「これは、私が着るのです」
 そう助け船をレイチェルがしたのだが、店長は逆にうーん。と唸りながら、レイチェルと泰輔を見くらべ始める。
「ロートランド君が着るには普通すぎるよ。それよりも大久保君が着た方が面白いし、宣伝にもなる。ほら、少し前に『男の娘』が流行ったじゃないか」
真顔でレイチェルに駄目だしを入れた店長の眼の奥がきらりと一瞬光る。
「いや、僕はこれを着るとはまだ言ってないんやけど……」
 泰輔のつっこみは店長の耳に届いていないようだ。
「この店にもついに取り入れる時が来たようだね……! ふふふ。実は私は裁縫が得意でね。特にメイド服は得意中の得意なんだ。去年は本部に掛けあってみたけど、実際のモデルが居ないと却下されてしまったからね。今年は自主的に『男の娘』をやってくれると言うバイト君が居て助かるよ」
 「店長、ご自分の趣味を語るのはいいですが二人ともどん引きしていますよ」
 ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)がトレイに四人分の紅茶を持ってバックヤードへと入って来る。
 店長は、バックヤードに置いてあるPCの前に座り自分の名前のフォルダから数々のメイド服のデザイン画を表示させている最中だった。
「サダルスウド君、良い所に。君はどのメイド服がいいと思うね?」
「そうですね。私はこの赤いポイントが入ったメイド服がいいと思います」
PCデスクに紅茶の入ったカップを置くと、ユーシスはディスプレイに移ったデザイン画の一つを指差す。
「あんたらの方がノリノリじゃねーか!!」
 思わず、泰輔は店長とユーシスに向けて突っ込みを入れた。

その後、店長とユーシスの意見で泰輔の制服はメイド服に変更されたトカ。されてないトカ。
とりあえず、言える事はその次の日店長の夜なべで出来上がったメイド服を渡されて、ついでに広場で店のチラシを配ってこいと店長に命令されてぐったり項垂れている泰輔の姿があった。